■悲しき願い'60s to '90s / 尾藤イサオ (東芝 = CD)
日本のロックで一番売れたのは、尾藤イサオの「悲しき願い」じゃないか!?
サイケおやじは、本気でそう思うことがあります。
皆様がご存じのとおり、原題は「Don't Let Me Be Misunderstood」として、歌そのもののオリジネイターは黒人女性歌手のニーナ・シモンらしいのですが、世界的にはアニマルズを代表するヒット曲のひとつとはいえ、やっぱり極みつきは尾藤イサオの日本語バージョン!
だぁ~れのせいでも、ありゃしないぃぃぃ~♪
みんなっ、おいらがっ、わるいのかぁぁ~♪
リアルタイムでのヒットは知らなくとも、このキメの節回しは、誰もが一度は耳にしたと思います。
それを熱唱した尾藤イサオは今でこそ個性派俳優として確固たる存在感を示していますが、幼少の頃から曲芸師の修行を積み、現代ではジャグラーと呼ばれる芸を身につけたそうです。しかし米軍キャンプ回り等をやっているうちに本場のR&Rやロカビリーに興味を抱き、ついに歌の世界へ転身したのですが、それを契機にきっぱりと曲芸を封印したのは、そういう世界の掟とはいえ、流石のスジの通し方だと思います。
尾藤イサオの歌を聴いていると、私はいつも強い意志とかソウルを感じるのは、そんな経緯があってのことなんでしょうねぇ。
そして紆余曲折の末にブルーコメッツの専属歌手となり、エルビス・プレスリーやリトル・リチャード等々のヒット曲カパーを歌っていたそうですが、そこで本人の希望によって吹き込んだ「悲しき願い」の日本語バージョンが昭和40(1965)年にウルトラメガの大ヒット!
当時のテレビ歌番組にも連日ように出演し、歌いまくっていましたですねぇ~。
もちろんサイケおやじも瞬時にシビレさせられ、レコードを買う前から、意味も分からず歌詞とメロディを覚えていたほどですし、実際、子供達も何かあって叱られた時なんかには、「みんなっ、おいらがっ、わるいのかぁぁ~」と歌うのが流行しました。
ですから、ビートルズの来日公演の前座に出演した尾藤イサオは、大ハッスルで「悲しき願い」を熱唱する快挙を達成するのですが、なんとビートルズによって我国では本格的なGSブームが到来し、ブルーコメッツ本隊が大ブレイクしたことから、ソロ歌手の尾藤イサオは苦しい立場に……。
それゆえに映画演劇の世界へと活動の場を広げたのはご存じのとおりなんですが、決して歌手としての本分も忘れたわけではなく、人気アニメ「あしたのジョー」の主題歌もまた、永遠の名唱だと思いますし、昭和53(1978)年には「悲しき願い」の再録バージョンを出してくれたのは嬉しいプレゼントでした。
さて、そこで本日ご紹介のCDは、その「悲しき願い」が1997年に三度目のリメイクとなった時に発売されたミニアルバムで、以前のふたつのバージョンも同時収録された感涙作♪♪~♪
01 悲しき願い '97 (ニューバージョン)
02 悲しき願い '97 (リミックスバージョン)
03 悲しき願い '78 (尾藤イサオ&ドーンバージョン)
04 悲しき願い '65 (オリジナルバージョン)
05 悲しき願い '97 (カラオケバージョン)
まず1997年の新バージョンは、ふたつとも完全なる今風の音作りです。しかし、そのデジタル系のサウンドをバックにしても、尾藤イサオのエネルギッシュで哀切が熱血へと昇華する歌いっぷりは不滅!
トラック「01」は強いタテノリのビートにスパニッシュ調の味付けが微妙に素敵ですし、ハーモニカのような音も入った哀愁強化路線も憎めません。そして何よりも尾藤イサオの節さ回しが脂っこくて、失礼ながら年齢を感じさせないのは立派の一言!
それは尚更にスパニッシュ調が強調されたトラック「02」でも変わらず、まあ、リミックスなんで当然とはいえ、個人的にはこっちが気に入っています。
ちなみにバックのコーラスは愛娘の尾藤桃子、そして渚ようこがやっているのも良い感じ♪♪~♪ スパニッシュディスコ万歳♪♪~♪
もちろんこれは、1977年に欧州のプロジェクトバンドだったサンタ・エスメラルダのカパーヒットを強く意識しているのは否定出来ません。とにかく当時のディスコではバカウケしたのも懐かしい思い出ですが、それに刺激されて出したと思われるのが、トラック「03」の再録バージョンでしょう。
しかし流石というか、これまた当時の流行だったラテンビートにブラス&ストリングスを豪勢に使ったサウンド作りは、今となっては中途半端に古めかしいかもしれませんが、尾藤イサオならではの節回しは健在!
ただし残念ながら、この時はそれほどヒットしていなくて、私にしてもシングル盤は持っていなかったので、この復刻は実に嬉しかったですよ。
そしてやっぱり真打となるのがトラック「04」のオリジナルバージョン!
パックの演奏はブルーコメッツだと思われますが、如何にも昭和40(1965)年という、プレGS期ならではのチープなオルガンやエレキギターの響き、大きく前面へ出たボーカルのミックスがたまりません。しかもアレンジが素晴らしく練り込まれていて、スパニッシュのスパイスが聴いたエレキギターの伴奏フレーズやカッコ良すぎるドラムス、ジャズロックなサックス等々が、見事に尾藤イサオを盛り上げています。
ということで、オーラスのトラック「05」はカラオケですから、それでは皆様、ご一緒に歌いましょう~~♪
いゃ~~、日本のロックって、本当に良いですねぇ~~♪
これもまた、おやじバンドでやってやる覚悟を決めたというわけです。