■Ring Of Hands / Argent (Epic)
1971年に発売されたアージェントのセカンドアルバムですが、率直に言って扱いは良くなかったと思います。これといったシングルヒットも無く、当然ながらこの作品も売れていません。
しかし中味の充実度はソンビーズの衣鉢を受け継いだというか、実にクールなジャズっぽさと所謂プログレと称されはじめたサイケデリックロックの進化形が混然一体に融合した素晴らしさ♪♪~♪
メンバーは前作同様にロッド・アージェント(vo,key)、ラス・バラード(vo,g,key)、ジム・ロッドフォード(b,vo)、ロバート・ヘンリット(ds,per) の4人編成ですが、実はゾンビーズ時代からロッド・アージェントの盟友だったクリス・ホワイトが曲作りとプロデュースに大きく参画し、それがデビュー盤以上の成果となって記録されました。
また、一方、ラス・バラードのハードロック王道の資質も見事に開花し、つまりは両極端な歌と演奏がギリギリのところで接点を見出したという緊張感が、たまりません。
A-1 Celebration (Argent/White)
A-2 Sweet Mary (Argent/White)
A-3 Cast Your Spell Uranus (Ballard)
A-4 Lothlrien (Argent/White)
B-1 Chained (Ballard)
B-2 Rejoice (Argent/White)
B-3 Pleasure (Argent/White)
B-4 Sleep Won't Help Me (Argent/White)
B-5 Where Are We Going Wrong (Ballard)
収録された上記演目には参考までにソングライターのクレジットを入れておきましたが、既に述べたようにアージェント&ホワイト組が手掛けた楽曲はロックジャズ風味が強く、ラス・バラード単独の作品はロックど真ん中の雰囲気が濃厚です。
しかし双方とも、決して難解なことはやっておらず、当時の流行をしぶとく意識した作風も姑息ではないと思います。
それは先行シングルとして英米で発売された「Celebration」に特に顕著なんですが、ピアノと緻密なコーラスワークに彩られた快活な曲メロが、幾分バタバタしながらも力強いリズム隊にサポートされて演じられる時、そこには何の真似でもないアージェントだけのポップな世界が現出するのです。もちろん重ねられたギターやオルガンの響きも用意周到!
また続く「Sweet Mary」はアージェント流儀のスワンプロックとして、決してドロドロしない軽いフィーリングがジャズっぽく、う~ん、どっかで聞いたことがあるような……!? という落とし穴が憎めません。
そして一転、暗く躍動的な「Cast Your Spell Uranus」になると、ハードな展開の中に見出される元祖ゾンビーズの味わいが非常に興味深くなるのです。このあたりはコーラスワークも含めて、後にデビューしてくるクイーンを想起させられてしまうのですが、間奏の熱いオルガンアドリブにはバロックとモダンジャズの要素がゴッタ煮となった特有の熱気があり、短いのが勿体無い限り!
しかしご安心下さい。A面のラストを飾る「Lothlrien」は最高にテンションの高い名曲名演で、バロックを基調にした曲メロをロックジャズに変換していくグループの纏まりと躍動は驚異的♪♪~♪ 極言すれば、これもまた後の第三期ディープパープルを軽くしたような感じではありますが、ロッド・アージェントのエレピやオルガンがバリバリのモダンジャズですから、後半ではラス・バラードもテンションコードを用いたバッキングを演じる等、とにかくこれはロックジャズ! 当然ながらドラムスは千変万化のビートを叩き出し、ベースが堅実に蠢くという基本も大切にされた8分近い演奏です。
こうして熱い興奮に満たされた後、レコードをB面にひっくり返せば、そこにはさらに素晴らしい世界が広がっています。
まずは如何にもラス・バラードという「Chained」の重いハードロックとコーラスワークの融合にゾクゾクさせられますが、これまた前作に収められていたバンドの代表曲「Liar」と同じく、スリー・ドッグ・ナイトにカパーされているのは当然が必然でしょう。作者本人の刹那のシャウトとロッド・アージェントのエレピが対峙する展開は、本当にたまりませんよ。
で、それを露払いにした以降の3曲の流れが、このアルバムのハイライト♪♪~♪
荘厳なバロック趣味を丸出しにしたオルガンのイントロから清らかなメロディが歌われる「Rejoice」、その穏やかな雰囲気を尚更に神聖なものへと昇華させた「Pleasure」は、聴いているうちに思わず身体に力が漲ってくる感じが秀逸の極み! もちろん緻密なコーラスワークとジャズっほいアドリブパートも最高です。
あぁ、これは現代の「歓喜の歌」といって過言ではないと思いますねぇ~♪
そしてナイーブで感傷的な曲メロを重厚に熱く演じた「Sleep Won't Help Me」の完成度の高さは圧巻! 本当に我知らず涙が滲んできますが、間奏のエレピの呪術的な味わいも秀逸としか言えません。
う~ん、何度聴いても感動の美しき流れ♪♪~♪
それが締め括られるオーラスの「Where Are We Going Wrong」が、なんとも一般的なパワーポップなのも気が利いています。直線的な曲構成と輝かしいコーラスワーク、さらにロックジャズなピアノのアドリブ、炸裂するドラムスのビート、蠢くベースのグルーヴが、とにかく熱いです!
ということで、全く自分の感性にジャストミートした私的名盤!
しかし告白すれば、もちろんリアルタイムでは聴けず、実質的にアージェントがブレイクしたシングルヒット「Hold Your Head Up」を含むサードアルバム「オール・トゥゲザー・ナウ」が我国でも発売された後、昭和48(1973)年暮れになって、ようやくゲットしたものです。つまり聴く順番が逆になってしまったのが大いに残念なところでした。
それは件のヒット曲が出た頃のアージェントは既にソンビーズの面影が薄れ、当時の最先端だったプログレ、もっと言えばエマーソン・レイク&パーマーを意識したようなキーボードロックの王道に沿ってしまっていたからで、それはそれなりに素晴らしいことではありましたが、やはりゾンビーズ直系の味わいを希求すれば肩すかしだったのです。
ところが、このセカンドアルバムは違います!
もう完全なるニューゾンビーズとして、英国流ロックジャズの魅力が全開していますし、収録楽曲の味わい深さも絶品ですよ♪♪~♪
そしてこれを聴くことによって、シングルヒットも出せるようになった以降の全盛期が許容されるのです。なにしろアージェントの本質はアルバムにあるのですから!
決意表明すれば、この「リング・オブ・ハンズ」はアージェントの最高傑作で、特にB面を愛聴しているのでした。