■ひなぎくのジェーン c/w 希望の明日 / America (Warner Bros.)
もはや災害を超えて有事ともいえる現在の日本……。
そこで人に安心を与えることの難しさを痛感しているのは、サイケおやじばかりではないでしょう。
連日、テレビに登場しては煮え切らない談話を出す官房長官は、なんとか無難な言葉を選ぶことに腐心するだけという、その全く国民に安心感を与えない喋り方がせつなくなるほどです。
基本的に、この人は所謂「ムイテナイ」んでしょうねぇ、こういう役職が。
それは常にオドオドしている現総理大臣も同じだと思うんですが、不幸中の幸いというか、この人は以前から国民に見放されていた分だけ、諦めの境地というところかもしれませんね。
さて、そこで本日の1枚は、せつない歌詞と胸キュンメロデイが見事にジャストミートした和みのパラード盤♪♪~♪ 1975年からのロングセラーヒットになった、まさにウエストコーストポップスを象徴する名曲だと思います。
説明不要かもしれませんが、歌っているアメリカは当時が全盛期だった3人組で、例の「名前のない馬」での大ブレイク以降、英国風味の西海岸ロックとでも申しましょうか、明らかにCSN&Yの影響下にあるアコースティックなギターワークとコーラスにビートルズ系のメロディを巧みに融合させた、実に好ましい音楽性を推し進めていました。
そして「ひなぎくのジェーン / Daisy Jane」は、通算5作目のアルバム「ハート」のA面ド頭に収められたほどの秀逸な仕上がりでしたから、シングルカットされても予想どおりに大ヒットしたというわけです。
ちなみにプロデュースがビートルズを担当していたジョージ・マーティンというのも要注意! しかもサンフランシスコでレコーディングセッションが行われたのですから、このあたりも前述したアメリカの音楽性の秘密が解き明かされるキーポイントかもしれませんねぇ。
なんともせつない響きのピアノに導かれ、気分はロンリーで歌い出されるメロディが爽やかなコーラスで彩られる流れの中、少しずつ力強いビートが醸し出されていく展開は、厚みのあるストリングスやバイオリンの間奏を得て、本当に忘れ難い安らぎを表出させるのですから、たまりません。
彼女は本当に僕を愛しているのだろうか?
たぶん愛している
そうさ
ここの空は明るいから
何もかもうまくいくさ
サビで歌われる、この詞の刹那的な希望は、何時までも忘れられないものがありますよ。
その意味でB面に収録された「希望の明日 / Tomorrow」も、実はちょいと哀しい人生の機微を歌っているのですが、前向きに明るい曲の展開が心地良く、不思議な安心感を与えてくれるのですから、これはポップス史の中では隠れ名曲のひとつになるんじゃないでしょうか?
ご存じのとおり、この2曲が収録された前述のアルバム「ハート」からは、ほとんどジョージ・ハリスン? という「金色の髪の少女 / Sister Golden Hair」が特大ヒットになっていますが、流石はジョージ・マーティンというか、アルバム全体に色濃く滲んだビートルズっぽい味わいが、しぶとくアメリカ西海岸ロックに融合したのは、このシングル盤両面の2曲が象徴的だと思います。
そしてなによりも、聴いていて与えられる絶妙の安心感♪♪~♪
こういう基本的に素晴らしい部分が、今の世界には欠けているような気がしてなりません。
地獄のような被災地のラジオからこの曲が流れたら、少しは和みが提供出来るでしょうか……。なんか、リクエストの葉書でも書きたい気分であります。