■You Really Got Me / Kinks (Pye / 日本コロムビア )
一応、バンドをやっていると、必然的に作曲の真似事にも手を出してしまうわけですが、もちろんリアルな作詞も出来ず、優れたメロディを直ぐに書けるなぁ~んてこともありません。
そこで結局は好きな楽曲のコピーに勤しみ、そこからオリジナルらしきものを引き出そうとするのですが、結果は無残……。
しかし、そんな姑息な事を繰り返している中で分かってきたのが、ロックやジャズはカッコE~~リフが出来れば、それでOKという真実(?)でした。
例えばモダンジャズでは、ファンキー派のピアニストとして絶大なる人気者だったホレス・シルバーの放つ数々のオリジナルヒットにそれが顕著だと思いますし、ロックの世界ではビートルズの「Day Tripper」、あるいはストーンズの「Satisfatcion」や「Jumpin' Jack Flash」引き合いに出すまでもなく、まさにリフこそ命!
この世界には、他にもそうしたヒット曲やイカシた歌と演奏がどっさりある事は、今更述べるまでもないと思います。
ちなみに、ここでサイケおやじが拘る「リフ」とは、楽曲を構成する流れの中でキメとなる繰り返しのフレーズやメロディとお断りした上で、本日ご紹介するキンクスのヒットシングル曲もまた、その代表として忘れられないものでしょう。
ご存じのとおり、この「You Really Got Me」はイントロから強烈に炸裂し、全篇をギンギンにリードするハードなギターリフゆえに元祖ハードロックとさえ認定されるわけですが、実はこうしたリフ中心の楽曲のルーツは黒人ブルースにありながら、キンクスにはそうした黒っぽさが意外なほど薄いと思います。
だからでしょうか、実はキンクスは最初っから売れたバンドでは決して無く、1964年夏の大ブレイクとなったこの「You Really Got Me」は本国イギリスにおいて、公式デビューから3番目のレコードであり、しかもデビュー曲として選ばれた黒人R&Rのカパーというよりもビートルズのウケ狙いを引き継いだ「のっぽのサリー」のトホホな仕上がりと聴き比べると、そのあまりのベクトルの違いに衝撃を受けるほどです。
もちろん、こう書いてしまうサイケおやじは後追いで聴いた事もありましょうが、それにしても「You Really Got Me」の強引さは、ロックが立派な白人音楽という証明じゃないでしょうか?
ましてや後の歴史を辿っても、キンクスはサイケデリック&ブルースロック全盛期にリアルな活動を展開していながら、全く独自の温故知新路線を歩んだのですから、既にして「You Really Got Me」の特異性を云々する事もありますまい!
で、結局、何が言いたいのかはご推察のとおり、「You Really Got Me」は驚異の「まぐれ当たり」じゃなかったのか!?
という事です。
しかしキンクスが偉いのは、そうして捻り出したオリジナルのエッセンスをしばらくの間、実に上手く温存し、活用し続けた事で、例えば同年秋に出したヒット曲「All Day And All Of The Night」はドアーズの「Hello I Love You」の元ネタとして否定出来ませんし、とにかく1966年頃までに残されたキンクスの歌と演奏には白人ロック、つまりはビートバンドとしての存在証明が存分に楽しめるはずです。
また、それがあればこそ、前述したドアーズやガレージ系のロックバンドが今日でもキンクス的なオリジナルのリフをパクッたりする自然(?)な行為が容認され、それこそがロックと認知されているのだと思います。
ちなみに我国でのキンクスは、以前にも書いたとおり、その全盛期にレコードがあまり出ていなかった事情があったようですし、またサイケおやじはGS経由で邂逅した経緯もある事から、それなりの人気が確立されたのは1980年代からだったと思っています。
それがもちろん、1960年代後半からの所謂ロックオペラ期の遅れて来た再評価ではなく、如何にもキンクスというハードなリフをウリにしていた初期の楽曲に対するものだった事は明白でした。
ということで、本日もまた、自分でも呆れるほどの生意気を書いてしまい、額に汗が滲むばかりですが、こうした素敵なリフ曲ばっかりを集めたカセットを以前に作ったという前科も、恥ずかしながら告白しておきます。
そして当然ながら、そうしたカッコE~~リフは作れるはずもないのでした。