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サイケおやじの生活と音楽

ひし美ゆり子の一網打尽

2011-04-30 15:17:44 | Movie

サイケおやじ版予告篇:不良番長一網打尽 (東映)

昭和47(1972)年のサイケおやじにとって、「不良番長一網打尽」の公開は一番の重大事件でした。

なにしろ「菱見百合子」が「ひし美ゆり子」となった最初の銀幕作品であり、また以降の彼女が披露していく新しい魅力を決定的にした1本ですからねぇ~~♪

ここまでの経緯については拙稿「鏡の中の野心」にも書いていますが、とにかく東宝を離れてから別名義での成人映画出演は、リアルタイムでは知る人ぞ知るであったにしても、男性週刊誌のグラビアで美しいヌードを披露した衝撃は強烈でした。

もちろん当時は高校生だったサイケおやじにとって、それは嬉しくもありましたが、前述した成人映画「鏡の中の野心」への出演は全く知る由もなく、ただ触れてはならない大人の事情を強く想像させられ……。

ですから、その彼女が前述した「不良番長・一網打尽(野田幸男監督)」に出演されるというニュースは、喜び以外の何物でもありませんでした。

ちなみに「不良番長」は当時の東映ではシリーズ化していたドル箱プログラムピクチャーのひとつで、主演は梅宮辰夫、そして脇を固める山城新吾、鈴木やすし、安岡力也等々のカポネ団の面々が、毎度バイクを乗り回して悪い事のやり放題! そして最後には大組織のヤクザを相手に大暴れという展開に加えて、一般映画ではギリギリのお色気場面と究極の破天荒ギャグがウリという、史上屈指の痛快バカ映画!?!

当然、「一網打尽」も同じラインで製作されており、ではその中で菱見百合子はどのような演技を見せてくれるのだろうか?

と、私は大いに期待していたのですが、結果は予想以上に鮮烈でした。

まず芸名が「ひし美ゆり子」になっており、掲載したポスターの画像からも一目瞭然、そこに登場した彼女は黄色いシャツの裾を胸のところで結わえ、その下は素肌にノーブラだと思います。

さらにメイクも幾分キツイ雰囲気で、微笑みも艶然としたものを含んでいるように感じました。

こういう部分は東宝での最終作「ゴジラ対ガイガン」で演じた空手使いの美女役でも、例えば大人のメイクやキツイ台詞回し、そしてタバコを吸ったりする演技演出にも滲んでいたのですが、物語の中で侵略者の正体がゴキブリ系生物だったと知って一瞬気を失い、その後、怯えた表情を見せる場面は、間違いなく友里アンヌの雰囲気を想起させていました。

それがこの作品ではどうなっていたかというと……。

初登場の場面の台詞が叫び声に続いて「チキショウ!」です!?!?

続いてヤクザに捕まって平手打ち!?!

衣装も露出度の高い赤色のホットパンツだったんですねぇ~♪

そして次に登場した場面では赤いコート姿!

しかもテーブルの上に飛び乗り、そのコートを脱ぎ捨ててオールヌードの全身で仁王立ちですよっ!

もちろん肝心な部分にはボカシというか、ワザとらしいクロベタが入れてありましたが、この時ほど、サイケおやじはカポネ団の一員になりたいっ! と思ったことはありません。

他にもノーブラに赤いベスト&ミニスカでびしょ濡れになって踊ったり、シースルーの戦闘服とかサイケデリックなポンチョ姿等々、恥ずかしながら未だ多感な十代だったサイケおやじには、前述したヌード・グラビアを見ていたとはいえ、まさに目の潰れるような、そして下半身を直撃してくる場面の連続でした。

実は劇中でのひし美ゆり子の役は、ヤクザにコキ使われていたヨーコというソープ嬢(リアルタイムではトルコ嬢)という設定で、なんと1日に10人も接客させられる重労働に耐えかねて逃げ出したという境遇なんですが、しかしヨーコは自らの職業であるソープ嬢を恥じていませんし、自分の魅力が男を虜にする素晴らしい肉体と美貌である事を認識し、むしろ誇りを持っているのです。

ただし、少~しばかり社会の一般教養に疎いところから、ペテンを使ったカポネ団のシノギの中では足手まといになったりするところから、なんとか自力で頑張ろうとするのですが……。

この流れの中では当然、彼女には下卑た演出が与えられ、大切な秘部にメンソレ、マッチ売りの少女、立ちション、あそこがガバガバ等々、とてもここでは詳らかに書けないほどメッチャメチャがテンコ盛り!

それゆえに彼女をアンヌの化身とイノセントに思い込んでいるファンにとっては、あまりにもショッキングな役だと思います。

しかし、それを全く陰湿さを感じさせず演じられたのは、ひし美ゆり子の女優としての資質じゃないでしょうか。

劇中のヨーコは孤独でありながら、男を虜にせずにはおかない魅力的な肢体と美貌、また浮世離れしたほど純情な心を持った女性に描かれています。

ですから自分の肉体でお金を稼ぐ事に捨て鉢な気分は感じていても、根底にあるナチュラルな自信は決して揺るぎません。なにしろ梅宮辰夫に「もっと自分を大切にしろよ」とまで言わせてしまうんですからっ!

もちろん、ひし美ゆり子ならではの余韻の残る台詞回しが、そうした場面では最高の魅力を発散するんですねぇ~~♪

つまりエグ味のある役柄であるほどに、唯一無二の特質が発揮されると思うんですよ。

ご存じのとおり、この作品には「友里アンヌ」のモジリネタとされる「真理アンヌ」も出演しているのですが、劇中の彼女は嘘泣きも上手い、まさに狡い美女の典型に描かれていることを鑑みれば、ひし美ゆり子の役柄と演技の存在感は尚更に強い印象を残すはずです。

ということで、以降のひし美ゆり子は所謂「脱ぎっぷりの良い女優」のひとりとされる評価も多いわけですが、だからと言って彼女の魅力がそれだけだったはずもありません。

あらためて述べるまでもなく、当時の映画産業は完全に斜陽でしたから、失礼ながら彼女だって霞を食べて生きていられたはずもなく、自著やプログで告白されているとおり、東宝との契約を終えた後は経済的に不安定な現実から、女優以外のあれこれもされていたようです。

しかしヌードを披露したり、成人映画への登場が現代のAVに出演することよりも遥かに背徳性が強かった時代、ひし美ゆり子は明らかに自分の演じていた事に自信とプライドを持っていたはずで、それは前述したとおり、劇中のヨーコと重なる姿勢じゃないでしょうか?

また、そうでなければ荒野に可憐な花を咲かせるが如き演技も残せなかったでしょうし、今もってアンヌと崇められている神聖を維持出来ているはずも無いと確信するところです。

このあたりは、あくまでもサイケおやじの思い込みとお断りしつつ、今回は予告篇として一端切り上げますが、近いうちに本サイト「サイケおやじ館」では、もう少し書きたいところを掘り下げたく思う次第です。

その意味で「不良番長一網打尽」こそ、菱見百合子&ひし美ゆり子のファンには絶対に避けて通れない「踏み絵」なのかもしれません。

そして新刊「万華鏡の女」も必読でしょうね(敬称略)。

コメント
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