■The Jumpin' Blues / Dexter Gordon (Prestige)
ということで、昨夜は音楽鑑賞に没頭集中し、久々にジャズを2時間ほど聴いた中から本日のご紹介は、デクスター・ゴードンが1970年頃に出したLPです。
説明不要とは思いますが、デクスター・ゴードンはモダンジャズの王道を貫いた偉大なテナーサックス奏者ではありますが、悪いクスリ諸々の問題から、モダンジャズがリアルタイムで盛り上がっていた1950年代中~後期には活動が停滞逼塞……。
しかしそれでいて社会復帰後の1960年からは、名門「プルーノート」とのレコーディング契約が結べた事もあり、今も不滅の名盤・人気盤を幾枚も残したのですが、既に時代はハードバップよりも過激なフリーやモードという、無機質なものがジャズの本流となり、また同時にロックやソウルが大衆音楽の中心となっていましたから、そこに馴染まないジャズプレイヤーは本場アメリカを離れ、欧州に活動の場を移さざるをえないという苦境の中、偉大なデクスター・ゴードンも、その例外ではありませんでした。
ところが、ここからが流石の存在感というか、むしろそうした1960年代中頃以降においてのデクスター・ゴードンは、ますますジャズ界で重きを成したと言えば大袈裟かもしれませんが、少なくとも1970年代前半からのネオパップ&ハードバップ・リバイバル隆盛にあっては、欧州の正統派ジャズレーベルとして創設されたばかりの「スティープルチェイス」に吹き込んだ諸作が、そうしたムーヴメントの支柱となり、我が国においても、ハードバップ愛好者の心の拠り所となっていた真実はひとつ!
ただし、サイケおやじには必ずしもそればかりでは無い!
という気持ちが確かにあって、つまり前述した「ブルーノート」と「スティープルチェイス」から発売されたLPばかりじゃ~なく、その間に吹き込まれていた「ブレスティッジ」からの諸作にだって、なかなかの快作盤があると思っていますし、実際、本日ご紹介のアルバムも、その1枚です。
録音は1970年8月27日、ニューヨークのRCAスタジオにおけるセッションで、メンバーはデクスター・ゴードン(ts) 以下、ウイントン・ケリー(p)、サム・ジョーンズ(b)、ロイ・ブルックス(ds) という所謂ワンホーン編成ですから、こちらが思うとおりのハードバップが楽しめますよ♪♪~♪
A-1 Evergreenish
御大デクスターが書いた如何にものハードバップ曲ですが、おそらくは歌物スタンダードのコード進行を借用した改作と思われますので、ミディアムテンポの楽しい演奏は、お約束以上♪♪~♪
悠々自適なテーマ吹奏から王道のアドリブを展開するでスクター・ゴードンは言わずもがな、続くウイントン・ケリーのピアノにも、そりゃ~確かにマイルス・デイビスのバンドに在籍していた頃の強烈なスイング感は薄まってはいますが、やっぱりジャズ者を魅了するウキウキグルーヴは本当にたまりませんねぇ~♪
ただし、それに続くベースソロのパートが些か緊張感が欠如気味のリズム隊のアンサンブルなのは、ちょっぴり残念……。
う~ん、でも、やっぱり、イイんですねぇ~~、こ~ゆ~ジャズってっ!
終盤に演じられる、デクスター対ブルックスの短いソロチェンジも良い感じ♪♪~♪
あっ、これの曲は、もしかしたらタッド・ダメロンのあれですかぁ~~!?
A-2 For Sentimental Reasons
お馴染、ナット・キング・コールの大ヒット歌物メロディを絶品の解釈で吹奏するデクスター・ゴードンは、まさに王者の風格でしょう。
せつなくも甘美な原曲の旋律を心で歌ったとしか思えないフェイク&アドリブの妙こそが、デクスター・ゴードンの真骨頂! まさに「歌詞を忘れたら吹けない」との名言どおりの名演と思います。
それとスローテンポでありながら、ダレないリズム隊のグルーヴと味わい深いイントロ&伴奏、そして素敵なアドリブを披露するウイントン・ケリーもニクイ存在感です。
A-3 Star Eyes
これまた数多の名唱名演が残されている歌物スタンダード曲ですから、デクスター・ゴードンも手慣れた中にも自らの味を大切にした名匠の証という演奏です。
それはもちろん、イントロから定石のラテンリズムとサビの4ビートで展開されるテーマ、さらに続くアドリブパートはミディアムテンポのジャズグルーヴという流れが安心印の太鼓判であり、それゆえにストロングスタイルの厳しさは足りないかもれませんが、リラックスしたモダンジャズって、こ~ゆ~もんだと再確認させられるんじゃ~ないでしょうか。
B-1 Rhythm-A-Ning (mistitled as Straight, No Chaser)
これが本アルバムの目玉と申しましょうか、およそデクスター・ゴードンのイメージとは相性が良いとは思えないセロニアス・モンクの有名(?)オリジナル曲を真っ向勝負のアップテンポで吹きまくった、まさに痛快な演奏です。
それは原曲に潜む不気味なテンションコードを極力排除し、それでいてモダンジャズの醍醐味は失せないように徹したデクスター・ゴードン以下、セッションメンバーのジャズ魂の発露かもしれず、個人的には、この演奏を聴いて何も感じないようであれば、モダンジャズを楽しむ「何か」が、リスナーの内から消失したのかもしれないと、僭越&生意気にも思うほどです。
モダンジャズ、万歳!
これが本アルバムの目玉と申しましょうか、およそデクスター・ゴードンのイメージとは相性が良いとは思えないセロニアス・モンクの有名(?)オリジナル曲を真っ向勝負のアップテンポで吹きまくった、まさに痛快な演奏です。
それは原曲に潜む不気味なテンションコードを極力排除し、それでいてモダンジャズの醍醐味は失せないように徹したデクスター・ゴードン以下、セッションメンバーのジャズ魂の発露かもしれず、個人的には、この演奏を聴いて何も感じないようであれば、モダンジャズを楽しむ「何か」が、リスナーの内から消失したのかもしれないと、僭越&生意気にも思うほどです。
モダンジャズ、万歳!
B-2 If You Could See Me Now
これまた良く知られたジャズ系スタンダード曲で、ボーカルバージョンも数多残されているという人気のメロディですから、シンプルにテーマを吹奏するデクスター・ゴードンの潔さにシビレますよ。
そしてウイントン・ケリーの歌心中心主義のアドリブから、再び登場するデクスター・ゴードンの見事なフェイクと締め括りの妙こそは、テナーサックスにおけるスローバラードのお手本であろうと思います。
ちなみに、これを書いたのは前述したタッド・ダメロンで、この作編曲家のオリジナルには何れも歌心をナチュラルに表現出来るツボがあるように感じるのですが、いかがなものでしょう。
サイケおやじは、好きです。
B-3 The Jumpin' Blues
オーラスは天才チャーリー・パーカーが駆出し時代に在籍していた事でも有名なジャズ&ブルースのジェイ・マクシャン楽団が1940年台に放ったヒット曲をハードバップ流儀で再演したと書きたいところなんですが、デクスター・ゴードン本人は最初からここまで、それほどスタイルの変わったプレイヤーではないので、極めて自然体の演奏が、そのまんまハードパップの王道であったという、そんな「こじつけ」は無用の長物でありましょう。
とにかくアップテンポで威風堂々、グイグイと引っ張っていくテナーサックスの鳴りは、やはり本物です。
そして本来はバックアップするべきリズム隊が、逆にノセられてしまったという本末転倒も、最高に心地良いですねぇ~~♪
ということで、これは決してジャズ史云々で語れるようなLPではありませんが、日常的愛聴盤としては、嬉しい1枚じゃ~ないでしょうか。
そして、それゆえにジャズ喫茶や、そこに集うイノセントなジャズファンにとっては、これが世に出た1970年末頃から些か軽んじられていた風潮も、当時のモダンジャズではジョン・コルトレーンが神格化され、それに殉じた精神の演奏が聴けないレコードは冷たく扱われていたという現実に結実していたのです。
もちろん、そ~した風潮の中でジャズ喫茶に通っていたサイケおやじは、こ~ゆ~レコード、デクスター・ゴードンの他にもハンク・モブレーとか、アンチ・コルトレーン派みたいなテナー奏者が好きなのは邪道かいな……?
なぁ~んて苦悩(?)した事も確かにあったんですが、今となっては笑い話というか、間違えた常識に捕らわれていた自分の不明が恥ずかしくなるばかりです。
ただし、サイケおやじは決してジョン・コルトレーンを忌み嫌っているわけではありません。
むしろ大好きと言っても間違いではないほどなんですが、時と場所を選べる自由があるのであれば、好きな時に好きなレコードを楽しむという姿勢を大切にしたいと、それを実践しているにすぎません。
本日は殊更に独断と偏見、失礼致しました。