■哀歌 / 八代亜紀 (テイチク)
気に入った歌を聴かんがためにレコードをゲットするのは、正しく音楽鑑賞の基本中の大基本ですから、それを書いたソングライターのクレジットを確認するのも同じく、音楽愛好者の基本姿勢でありましょう。
そして、あぁ~~、やっぱり、この先生かっ!
と独り納得する場合もあれば、思わず、ギョエッと驚愕させられる意外な人物の名前に遭遇する事も多々あるのが、趣味の世界の楽しさと思います。
例えば本日掲載のシングル盤A面曲「哀歌」は、八代亜紀が昭和53(1978)年5月に出した、これが曲タイトルとおりに哀切の正統派演歌であり、サウンド的には聊か古い、ちょいと所謂大正ロマンっぽい味わいに作られているんですが、それを真正面から節回す亜紀姐さんの歌唱力の素晴らしさ、凄みは絶品!
ほとんど救いのない、哀しい宿業や運命に縛られた人の世の刹那の心情を、ここまで伝えられるのは亜紀姐さんだけでしょう。
そこにはイントロから哀しみを増幅させるが如きアコギのアルペジオと泣き節のバイオリンが配置され、ストリングスが道案内するメロディに踏み込んで歌い始める亜紀姐さんのフィーリングは、単に演歌とは決めつけられないソウルフルな感触が滲み出ているんですねぇ~~♪
そしてシンプルな伴奏でシミジミとワンコーラスを歌った後、いよいよリズム隊やストリングスが加わったバックの演奏を従えて、聴き方によってはエグ味さえも感じてしまうボーカルの存在感は、しかし決して脂っこい世界ではなく、クールで熱い情感の発露と申しましょうか、この「哀歌」を最初に聴いた時のサイケおやじは、鳥肌びっしりっ!
速攻でレコード屋に足が向きましたですよ、実際!
そして冒頭で述べたとおり、制作クレジットを確認してみればクリビツテンギョ~~~!?!
なんとっ!
作詞&作曲が谷村新司、そうです、歌謡フォークのアリスをやっていた、あの谷村新司!!
だったんですから、サイケおやじなんかは、絶句する他はありませんでしたねぇ~~~!
実は後で知ったんですが、谷村新司は、こ~ゆ~大正ロマン系演歌を幾つも自作自演していた時期があったそうで、そんな事はアリスのファンならば常識だったんでしょうが、しっかりとアリスを聴いていたはずも無かったサイケおやじにしてみれば、青天の霹靂ってやつでしょうか……。
ですから、唯々、亜紀姐さんの歌唱力の素晴らしさに胸が熱くなるばかりでして、それは本日、久々に掲載のシングル盤に針を落としての鑑賞で、我知らず居住まいを正してしまったという、そこに集約されるのです。
うむ、ジャケ写ポートレートの亜紀姐さんの憂い顔も、素敵♪♪~♪
ということで、なんだか今日は蒸し暑く、マスクの着用にも息苦しさを覚えてしまったんですが、先の見えない困難な状況であるが故に、妙に哀しい歌が聴きたくなるのは、自然の成り行きと云うには、やっぱり悲しいです……。
でも、そこは亜紀姐さんの「歌の力」に免じて、明日を信じる気持ちになってしまうのでした。