■Down At The Field / Ry Cooder (Leftfield Medio = CD)
近年のミュージシャン側主導によるアーカイヴ音源商法は、何かと尤もな批判はありますが、しかしファンにとっては蔵出し大歓迎♪♪~♪
なにしろこれまでブートという違法行為でしか接する事の出来なかった「お宝」に堂々とお金を払っていただく以上、その品質の保証は当然ですし、自らの存在意義さえ問われかねないとあっては、中途半端は許されないでしょう。
しかし、その間に第三者的な発売元が関与すると、それはそれで幾分の誤解が発生してしまう問題が……。
例えば本日ご紹介のCDは、ライ・クーダーが1974年に出演したラジオショウ音源を復刻したもので、内容は昔っからブートの優良ネタになっていたものです。
そして今回の復刻盤ではジャケットにエレキを持ったライ・クーダーの写真が用いられていながら、中身はアコースティックな弾き語り!
結果として、そこに欺瞞を感じてしまう皆様も大勢いらっしゃる事は想像に易いわけです。
ところが、だからこそ、この音源に愛着を覚える事も確かと思うのは、サイケおやじだけでしょうか?
☆1974年5月20日:コロラド州デンバーで録音
01 Too Tight This Rag Of Mine
02 You've Been Doing Something Wrong
03 Blind Man Messed Up By Tear Gas
04 Instrumental
05 How Can A Poor Man Stand Such Time And Live
06 Slow Consumption
07 Forget That Folding Bridge
08 Fool For A Cigarette / Feelin' Good
09 Crazy 'Bout An Automobile
10 Feelin' Like A Submarine
11 Don't Take Everybody To Be A Friend
既に述べたとおり、ラジオ放送用のレコーディングなんですが、あまり大きな会場ではないのでしょうか、なかなか雰囲気が所謂アットホーム♪♪~♪
それだけライ・クーダーの弾き語り大会は心和む集会なんでしょうが、もちろん当時からライ・クーダーというミュージャンは決してメジャーではなく、レコードだって、ベストセラーなんてことはなかったでしょう。
ただし評論家の先生方や同業者にはウケが最高に良く、そんなところから一度は聴いてみよう! と決意実行の後に熱烈なファンになってしまうリスナーの多くが、生ライプで尚更に憑依されるという、まさに素晴らしき円環が今に続いていると思われます。
その意味で、この音源にはライ・クーダーの根源的な魅力に迫れる貴重な機会がぎっしり!
しかも未だ正式契約レコード会社ではレコーディングが成されていない曲もあったりして、例えば「Don't Take Everybody To Be A Friend」は、近年のライ・クーダーが積極的にコラボしているバハマ諸島のミュージシャンの演目であり、それを1974年から既にやっていたというのは、なかなか興味深いところでしょう。
また「Slow Consumption」も、おそらくはこれが初出?
あと、「Crazy 'Bout An Automobile」はサイケおやじがお目当てだったシンコペイトしまくりのR&Bなんですが、ここでは肩すかし気味の別アレンジがかえって快感!?
そんなこんなの積み重ねが、卓越したアコースティックのギターワークとマンドリンを駆使したセルフの伴奏で歌われていくのが、この音源の真相です。
しかも呆れかえるほど上手いギターは、率直に言えば、ど~やって弾いているのか分析も理解も不能の世界で、おそらくはチューニングの変則性や独自の運指、あるいはピッキングの天才的コントロールがあっての事だけはなんとか分かるんですが、ほとんど神の領域でしょうねぇ~~♪
そして今回、目からウロコだったのは、ライ・クーダーの歌の上手さ!
というか、言葉は完全に分からなくとも、非常な説得力が感じられるんですよっ!
この点はライ・クーダーを鑑賞する場合、今後は留意しなければならないと思うばかりです。
☆1974年5月16日:ニューヨークのボトムラインからの放送音源
12 The Tattler
13 One Meat Ball
14 Preacher
15 Vigilante Man
さて、こちらは大都会のニューヨークとあって、リスナーもある意味で慣れ切った耳で楽しんでいるようなファンが多いようで、なんとなくコアなマニア性の熱気が感じられます。
しかし、もちろんライ・クーダーは自然体なんでしょうねぇ~♪
妙に気負うなんて雰囲気よりは、ライプの現場ならではの熱の入れようで、なかなか楽しい歌と演奏が披露されています。
特に「Preacher」のギターは凄いですよっ!
とても独演とは思えない、スライドと強靭なピッキングの複合技には悶絶させられますねぇ~~♪
ちなみに「The Tattler」は初出と思っていたら、実はアレンジ違いで「パラダイス&ランチ」に収録されていると思いますが、う~ん……。
ということで、全体的に音質良好の素晴らしいライプ盤だと思います。
ただ、それでも部分的に左右への音揺れがあるのも確かですし、ギターの音色そのものにクリアさが失われているパートがあることも事実です。
そして演奏が弾き語りということで、これからライ・クーダーを聴いてみようと決意されている皆様には、決してオススメ出来るものではありません。
しかし、中身の充実度は圧巻で、ライ・クーダーが好きであればあるほど楽しめるはずですし、当然の如く様々な不平不満も噴出するはずですが、それもまた、ファンにとっては宿業的な喜びじゃ~ないか♪♪~♪
と思っています。
また、ちょっとアコギも練習してみようかなぁ~~、と決意を新たしたくなるかもしれませんよ。
少なくともサイケおやじは、そんなモードに入りそうです。