本日も寒いですねぇ……。
しかも仕事では、あっちですべった、こっちでころんだという、まあ後始末に奔走させられたというわけで、精神的に疲れが溜まっています。
それでも午後からは少し時間が空いたので、買ったまんまほうりっ放しだったブツを楽しんでみました――
■Birth Of A Legend / Oscar Peterson Historic Carnegie Hall Concerts (Verve / Giantsteps)
マニア泣かせのレーベルのひとつが、ノーマン・グランツ主催のヴァーヴでしょう。なにしろ似たようなメンツで膨大なレコーディングが残され、しかも発売形態がSP、EP、LPと変化するにつれて同一音源を使用しながら、タイトルやジャケット違い、編集違いのアルバムを出し続けたのですから! さらに初期には配給会社さえも様々に変転しているようです。
中でもノーマン・グランツがお気に入りのオスカー・ピーターソンは、リーダーセッションだけでなく、サイドメンとしても夥しい参加作品がありますから、集めようとして迷い道になるのは、必定でした。
これはタイトルどおり、カーネギーホールにおけるライブ音源、それもアメリカに本格進出した直後からの演奏を集めたCDで、特に初期の音源は錯綜を究めていますから、ファンにとっては待ってましたのブツでしょう♪
その内容は――
01 Fine and Dandy
02 I Only Have Eyes for You
03 Carnegie Blues
まず最初の3曲は、ノーマン・グランツによってカナダで発見されたオスカー・ピータソンが、アメリカで本格的にお披露目された時のライブ音源です。
録音は1949年9月18日、メンバーはオスカー・ピーターソン(p)、レイ・ブラウン(b) のデュオですが、実はこの時、最初の企画ではバディ・リッチを入れたトリオになる予定が、バディ・リッチが直前のステージで大ハッスルしすぎてダウンした結果とされています。
肝心の演奏は快適なテンポで明快なテクニックを披露する「Fine and Dandy」、レイ・ブラウンとのコンビネーションが既に見事な「I Only Have Eyes for You」、そしてバリバリ迫ってくる「Carnegie Blues」と、いずれも凡百のピアニストを凌駕する流石の出来ですが、後年の緻密なアレンジの妙は無く、あくまで自己中心的な演奏になっています。それにしても観客の熱狂がなかなか凄いですねぇ~、随所で拍手が湧き上がるというセンセーションが、確実に記録されています。
ちなみに音質はイマイチですが、これは原盤からしてこうなっていたのか、ちょっと不明です。
04 Gai
05 Padovane
この2曲は1年後の1950年9月16日のライブ音源で、メンバーも前回と同じくオスカー・ピーターソン(p) とレイ・ブラウン(b) のデュオであり、おそらくJATPのステージからと思われます。
2人の息の合い方は流石にツーカーになっており、特にレイ・ブラウンはオスカー・ピーターソンの演奏する手元が見える位置にいるんでしょうか、上手く和声を合わせるような伴奏が見事だと思います。
そしてオスカー・ピーターソンは、ますますバリバリと弾きまくっていますが、それもレイ・ブラウンを信頼しきっている証かもしれません。「Gai」ではお遊びフレーズを入れつつも緊張感を失わず、似た様なテンポと曲調の「Padovane」もダレていません。
しかし音質は残念ながら、ここもイマイチです。
06 Sweet Georgia Brown
07 Cheek to Cheek
08 C Jam Blues
09 Tenderly
10 Seven Come Eleven
以上の5曲は本格的にギターをいれたトリオによるもので、録音は1952年9月13日、メンバーはオスカー・ピーターソン(p)、バーニー・ケッセル(g)、レイ・ブラウン(b) となっています。
もちろん演奏はデュオ時代に比べてグッと緻密になっており、かなりのリハーサルと実戦によって鍛え上げられた完成度が感じられます。
アップテンポの「Sweet Georgia Brown」や「Seven Come Eleven」では烈しく燃えあがり、和みの「Cheek to Cheek」では、ファンキーさと歌心の絶妙なブレンドが楽しめます。3人とも、本当に上手いですねぇ~♪
そのあたりは「C Jam Blues」で放出される快適グルーヴの嵐で頂点に達しており、ドラムスの不在によるビートの不足なんて、全く感じません! ザクザク迫ってくるバーニー・ケッセルのリズムギター、そしてグワーンと炸裂するオスカー・ピーターソンのブロックコード弾きは、やっぱり凄いです。
また当時からの十八番「Tenderly」では、最初から穏やかで豊かなスイング感が素晴らしく、歌心を膨らませつつ徐々にグルーヴィな雰囲気を盛り上げていくトリオの快演には、身も心も至高の幸せに導かれるのでした。
ちなみにバーニー・ケッセルは1年弱の在籍と言われていますから、これは貴重な音源として楽しみたいと思います。気になる音質は、前2回のセッションよりグッと向上しています♪
11. Lollobrigida
12. Pompton Turnpike
13. Swingin' on a Star
14. Love for Sale
15. Swingin' Till the Girls Come Home
最後のパートの録音は1953年9月19日、メンバーはオスカー・ピーターソン(p)、レイ・ブラウン(b) に加えて、ハーブ・エリス(g) が新たに参加したトリオ編成です。
そしてアレンジは一層緻密になり、しかもアレンジされているとは、ちょっと思えないほどに自然なグルーヴが追求・完成されています。
オスカー・ピーターソンのビアノスタイルも、アップテンポの曲では性急さよりも余裕の猛烈スイングとなり、スローテンポではグルーヴィなノリが強くなっているという、全体に黒っぽさが表立ってきたようです。
まず「Lollobrigida」では早いテンポの中、独りでリズムとビートを自在に操り、緩いテンポの「Pompton Turnpike」では大らかなノリを聴かせてくれます。また「Love for Sale」での、烈しくも安らぎ優先の姿勢も素敵ですねぇ~♪
さらにグイグイ突進する「Swingin' Till the Girls Come Home」では、ハーブ・エリスが得意技というギターのボディ叩きによるチャカポコリズムも楽しく、「Swingin' on a Star」の和み感覚からはビバップもハードバッブも超越した、モダンジャズの楽しみそのものが流れてくるのでした。
もちろんレイ・ブラウン、新参のハープ・エリスも好演です♪
ということで、いずれも安定感のあるセッション&曲ばかりですが、個人的にはバーニー・ケッセル入りの演奏が好みです。なんというか、グルーヴが太いような感覚があるんですねぇ~。
まあ、あくまでも熱心なファン向けのブツかもしれませんが、ジャズの王道はたっぷり楽しめる復刻盤だと思います。