昨夜の大荒れの天候から、本日はカラッとした五月晴れ♪
朝から気分が高揚しましたので――
■Shelly Manne and His Friends (Contemporary)
ひよこのお菓子を思い出してしまうホノボノ系のジャケットではありますが、タイトルどおりにシェリー・マンをリーダーとした、それも素晴らしいピアノトリオの傑作盤です。
録音は1956年2月11日、メンバーはアンドレ・プレビン(p)、リロイ・ヴィネガー(b)、シェリー・マン(ds) という、あの大ヒット盤「マイ・フェア・レディ」と同じですから、内容の良さは言わずもが♪ しかも前述「マイ・フェア・レディ」よりも前のセッションなんですが、完成度は既にして特級です――
A-1 Tangerine
原曲の軽快な味わいを存分に活かしたアップテンポの快演で、アンドレ・プレビンのビアノが豪快なテクニックと素晴らしい歌心を披露しています。もちろんトリオとしての纏まりも最高で、スピード感満点のブラシに撤するシェリー・マン、ビンビンに4ビートウォーキングを響かせるリロイ・ヴィネガーの存在があってこその醍醐味でしょうね♪
クライマックスのピアノ対ドラムスのソロチェンジも痛快ですが、それにしてもアンドレ・プレビンのピアノはバカテク!
A-2 I Cover The Waterfront
ビリー・ホリディが大ヒットさせた名曲を、このトリオは幻想的な味わいで聞かせてくれます。これはアンドレ・プレビンの両手フル使いのピアノがあればこそとはいえ、きちんとアレンジしてある部分も気持ちが良いほどです。特にシェリー・マンの小技が素敵♪
対してどっしりと構えたリロイ・ヴィネガーの存在感も強く、このあたりはロイ・ドュナンの録音の冴えわたり! 所有盤はモノラルミックスなんですが、ステレオバージョンも聴いてみたいものです。
A-3 Squatty Roo
エリントン楽団の至宝だったジョニー・ホッジス(as) が書いた有名ジャズ曲なんですが、これはファンキーな味わいも強い、凄いモダンジャズへと変換されています。
まず低音域主体のアンドレ・プレビンがアグレッシブでアナーキー! 強烈なピアノタッチはオスカー・ピーターソンやフィニアス・ニューボーンも顔色無しの歯切れ良さですし、様式美じゃなくて、ガチンコでジャズをやるという意気込みにシビレてしまいます。リアルタイムでは、かなりの前衛だったんじゃないでしょうか?
しかし、それでいて楽しさも充分にあるんですから、ブッたまげますね。明らかにデューク・エリントンに敬意を表したピアノプレイかもしれません。とにかく痛快!
B-1 Collard Greens And Black Eyed Peas
黒人スラングの曲名ながら、これは「Blues In The Closet」として知られているビバップの聖典ですから、ここでのアンドレ・プレビンは些か神妙です。
ところがリロイ・ヴィネガーが如何にも黒人というノリでベースを響かせるもんですから、たまりません。少しずつファンキーな泥沼を作り出していくトリオの一体感が実に素敵ですねぇ~~。
アンドレ・プレビンのピアノは決して真っ黒ではありませんが、ここでのエグイ表現はエディ・コスタとか我国の大西順子、あるいはドン・プューレンあたりの打楽器ピアノスタイルに繋がるものかもしれません。後年の物分りの良いアンドレ・プレビンも素晴らしいと思いますが、この頃のガチンコ体質は本気度が高くて、私は大好きです。
B-2 Stars Fall On Alabama / アラバマに星落ちて
キャノンボール・アダレイ(as) の名演もあるスタンダート曲で、胸キュン系のメロディが大いに魅力の原曲を、なんとアンドレ・プレビンは妙なツッパリで変奏しています。これは意地悪というか……。
もちろんロマンチックな幻想を狙ったんでしょうから、アドリブではそれなりに美メロのフレーズも出ていますし、綺麗なピアノタッチも侮れませんが……。些か生硬なスイング感が裏目に出たような気がします。
ただしこれだけのピアノトリオ演奏が他にあるか? と問われれば答えは、否です。
B-3 The Girl Friend
オーラスはこのトリオならではの持ち味を活かしきった軽快な演奏です。シェリー・マンのブラシはサクサクと気持ち良く、アンドレ・プレビンのピアノは縦横無尽! それをガッチリと支えて弾みまくるリロイ・ビネガーも実力発揮ですねっ♪
時期的には既にハンプトン・ホーズあたりがドラム入りのピアノトリオでハードバップを演じていたわけですから、ここでのアンドレ・プレビンにはその影響がモロに感じられる部分も濃厚ですが、ちゃんと自分なりの「節」と「ノリ」を確立しているようです。もちろんアート・テイタム~オスカー・ピーターソンという超絶技巧派の流れは言わずもがなですね♪
全く、こんなに弾いてどこへ行く!? という絶句の演奏なのでした。
ということで、個人的には「マイ・フェア・レディ」よりも、かなり好きなアルバムです。シェリー・マンのドラミングもジャズ度が高く、それは即興的な味わいが強いと感じるからなんですが、反面、アレンジされた部分もイヤミがありません。
このあたりは似たようなことをやっているオスカー・ピーターソンのドラム入りトリオの完成度には及びませんが、オスカー・ピーターソンが正式メンバーとしてドラマーを入れたのは、このセッションよりも後の事ですから……。
そういう経緯も含めて、ここでの過激な挑戦やリラックスした正統派の行き方は、「マイ・フェア・レディ」で見事に結実し、大ヒットに繋がるのですが、これはその前哨戦というには、あまりに完成度が高いと思います。