OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

クールビューティ

2007-05-30 16:17:08 | Weblog

ミス・ユニバースに選出された美女が日本人♪

暗い世相の中で、久々に明るいニュースでしたが、彼女はダンスとか手話通訳のボランティアを自然体にやっていたそうですねぇ。

綺麗でスタイルが良いだけでは、ダメということなんでしょうか。人間は内面も大切なのは分かっているんですが、美女に弱いのは私だけではないでしょう。

ということで、本日は美貌もピアノも素晴らしい、この人の演奏を――

The Legendary Jutta Hipp Quitet 1954 (Fresh Sound)


ドイツ出身の美人ピアニスト=ユタ・ヒップは、高名なジャズ評論家のレナード・フェザーに発見され渡米、名門ブルーノート製作による所謂「1500番台」に3枚の人気アルバムを残していますが、これはその直前の1954年にドイツで録音された音源を纏めたCDです。

これらは今まで、様々なレーベルに分散して発売されていたもので、一部は前述のブルーノートがライセンスを取って10吋盤に纏めたほどの名演ばかり♪ そのスタイルはレニー・トリスターノ派のクールジャズそのまんま! つまりサックス奏者はリー・コニッツ(as) やウォーン・マーシュ(ts) あたりを忠実にコピーしていますし、リズム隊はひたすらにタイムキープに勤しむという、これが好きなファンには、たまらないものです。

しかしユタ・ヒップのピアノは、決してレニー・トリスターノのような冷徹なスタイルだけではなく、ビバップとクールの融合から、よりドライヴするハードバップ系のグルーヴが感じられ、なるほど、これは本場アメリカの業界が目をつけるわけだ……、と納得出来る才女! 加えてクールビューティな美女ですから♪

さて、このCDには4セッションが収められていますが、メンバーは Emil Mangelsdorff(as)、Joki Freund(ts)、Jutta Hipp(p)、Hans Kresse(b)、Karl Sanner(ds) が基本メンバーです――

★1954年4月13日録音
01 Simone Ⅰ
02 Anything Goes
03 Yogi
04 Frankfurt Special
05 Mon Petit
06 Blue Skies
07 Lover Man
08 Diagram

 初っ端「Simone Ⅰ」からクールスタイル全開のアップテンポ曲は、なんと Emil Mangelsdorff のオリジナル曲! 当然、作者のアルトサックスはリー・コニッツ生き写しです。しかしユタ・ヒップのピアノからは、クールな感覚と共に、なかなか黒人色が強いグルーヴが発散されているんですねぇ~♪ 強いアタックと歯切れの良いフレーズ展開は、同時期に我国でバド・パウエルに心酔していた秋吉敏子と双璧の素晴らしさだと思います。
 またバンド全体としてのスタンダード解釈も鮮やかで、「Anything Goes」の爽快感、「Blue Skies」での秘めた哀愁は、クセになりそう♪ ドラムスの Karl Sanner も、かなりの実力者ぶりを示しています。
 しかし、その中でユタ・ヒップはクラシック系のフレーズやカクテル風の甘いスタイル、さらにはエキセントリックな正統派ビバップの展開を、臨機応変に使い分けているんですから、凄いです。
 そして「Diagram」は彼女のピアノが存分に楽しめる、最高のトリオ演奏!
 ちなみにこのセッションからは「Mon Petit」と「Blue Skies」がブルーノートの10吋盤「New Faces - New Sounds From Germany (5056)」に採用されていますが、やはりこの2曲は特に素晴らしいと感じています。

★1954年4月24日録音
09 Cleopatra
10 Variations
11 Don't Worry About Me
12 Ghost Of A Chace
13 Laura
14 What's New

 このセッションの全曲は、前述したブルーノートの10吋盤に収録され、アメリカで発売されましたが、愕いたことに本国ドイツでは長い間、聴くことが出来なかったそうです。う~ん、ジャズは何時の世も冷遇されるんですかねぇ……。
 演奏はいずれも3~4分の短いものばかりですが、バンドとしての纏まりは最高ですし、クールからハードバップへの過渡期といえるリズム隊の快適なグルーヴが、とにかく気持ち良いです。
 もちろんユタ・ヒップのピアノは冴えまくり! 意表を突いてアップテンポでブッ飛ばす「Don't Worry About Me」、白昼夢のような「What's New」という2曲のピアノトリオ演奏は、本当に何度聴いても飽きません♪ いずれも両手をフルに使ったテクニックがさり気なく、嫌味になっていませんからねぇ~。
 それに比べるとフロントのサックス陣は、ややデッドコピーの感がなきにしもあらず……。まあ、このあたりは良くも悪くもクール派が好きなファン向けのお楽しみでしょうか。個人的には嫌いではありません。

★1954年7月28日録音
15 Frankfurt Special
16 Don't Worry About Me
17 Simone Ⅱ
18 Morning Fun

 以前と同じ曲も再演されたセッションなので、安定した演奏が楽しめます。
 ただしユタ・ヒップの調子はイマイチでしょうか……。やや雑な雰囲気ですが、それもジャズの楽しみだと思います。
 しかし「Morning Fun」は、かなりイケイケのハードバップになっていて、Karl Sanner のドラムスがビシバシです。ちなみにこの曲の作者が、後にユタ・ヒップと共演するズート・シムズという因縁も興味深いところですね。

★1954年6月6日、Deutsche Jazz Fes. でのライブ録音
19 Mon Petit
20 Frankfurt Special

 さて最後のセッションは、ボーナストラックというか、ライブ音源です。
 その所為でしょうか、演奏にも自然体の熱気があって、特にアルトサックスの Emil Mangelsdorff が気合の吹奏♪ 「Frankfurt Special」では、バド・シャンクっぽい西海岸派のスタイルを披露しています。
 またリズム隊は、ほとんどハードバップに近くなっていますが、ユタ・ヒップのピアノスタイルはウネウネクネクネのクールスタイルとカクテルピアノの中間の様な、やはり独特の個性を発揮して見事だと思います。

ということで、あくまでもユタ・ヒップという、稀有のモダンジャズピアニストの演奏を楽しむためのCDです。

実際、ここに聴かれるような演奏をしていたら、アメリカの業界が誘いをかけるのも無理からん話です。しかも美人ですからねぇ~♪

と、またまた冒頭の話に逆戻りですが、当時のバンド内は彼女を巡っての確執があったとか、渡米しても下心満点の業界人がウヨウヨしていたとか、とにかく純粋の音楽を追求することの難しさがあったようです。

その所為か、彼女は渡米してほどなく引退するのですが、残された音源の素晴らしさは保証つき♪ 一度虜になったら最後、ちょっと抜け出せない魅力があるピアニストです。

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