■風が落とした涙 / 小川ローザ (日本コロムビア)
日本のテレビ放映史上、最もインパクトが強かったCMのひとつが、昭和44(1969)年に小川ローザが出演した丸善石油の「Oh! モウレツ」でしょう。
これはガソリンのテレビコマーシャルだったんですが、白いヘルメットにミニスカ姿で車を運転する彼女を狙うカメラは、当然ながら露出しまくった美脚の太股であり、また車から降りる仕草でナチュラルに男の目を惹きつける脚線美の躍動でした。
そして尚更に強烈だったのが、彼女の傍を通り過ぎる車の風圧によるスカートの舞い上がりと激しいパンチラ! いや、これはもうパンチラどころか、はっきりとしたパンツ見せといって過言ではないでしょう。
当然ながら、世の男性諸氏は歓喜し、また中学生だったサイケおやじを含む日本の青少年は、ギラギラした欲望を刺激されたのです。またパンチラの直後、口元を手で隠すように「Oh! モォ~レツ」というキメの台詞とアクションも流行し、さらに「ハレンチ学園」経由での「スカートまくり」騒動も、これを端緒にしているはずです。
ちなみに当時は家庭用ビデオなんていう文明の利器がありませんでしたから、テレビの前でひたすらに丸善石油の提供を待ち望んだ日々が、確かにありました。
そして一躍有名になった彼女が小川ローザという名前のモデルさんであり、主な仕事はトヨタレーシングチームのマスコットガールであったというキャリアが広まると、それは当たり前のようにレコードデビューの話へと繋がり、こうして同年8月に発売されたのが、本日ご紹介のシングル曲というわけです。
それは前述のCMを強く意識したジャケット写真が嬉しいパンチラデザインなんですが、もちろん件のテレビ放映版も含めて、所謂「生パン」という事はありえません。
しかし当時は、これでも充分に刺激が強く、また彼女も歌番組やバラエティでは堂々の超ミニスカや水着姿を大サービス♪♪~♪ 中でもサイケおやじが今も記憶に鮮烈なのが、コント55号がやっていた「裏番組をぶっ飛ばせ(日本テレビ)」のウリになっていた野球拳で派手に負けまくり、最後にはバスタオル1枚の姿になったことでした。
もちろん、これは演出であって、毎回の出演者の「格」によっては、勝ってばかりで脱がない女性ゲストもいたわけですが、いくらそうであったとしても、現代のテレビでは絶対に無理な企画でしょうねぇ。しかも小川ローザは全くの自然体で、それを演じてしまったところに、陰湿さを感じさせずにストレートなエロスを振りまくという真骨頂があったように思います。
ですから、ポスターの盗難も頻発し、社会現象となる人気は沸騰! ついには彼女を主役にしたテレビドラマも作られたと記憶しています。
しかし、その頂点を極めた昭和45(1970)年2月だったと思いますが、前述したレーシングチームのエースドライバーだった河合稔と電撃結婚!
これには相当にガックリきたファンが夥しく、そういえば「電撃結婚」とか「婚前旅行」なぁ~んていう言葉が一般的になったのも、この時が最初かもしれません。
そして夫婦揃ってコマーシャルに出演する等々、まさに幸せの絶頂だった同年8月、なんと河合稔が事故死!!!
失意の小川ローザは芸能活動を休止し、その後も復帰はしたものの、ついに昭和48(1973)年頃に引退されたと言われていますが、やはり何時までたっても記憶から消えないのは「Oh! モウレツ」であり、突然に閉ざされた新婚の悲劇だと思います。
さて、肝心のシングル曲「風が落とした涙」は作詞:中村小太郎、作曲:田辺信一によるシンミリとした歌謡フォークの胸キュン名曲で、正直に言えば小川ローザの歌唱は拙いところもありますが、前述の悲劇に接して後は、なおさらにせつない印象が強くなっています。
なにしろ歌詞の一節には、
想い出は帰らない
夢のようなふたりの
想い出は帰らない
涙と一緒に消えたから
という、あまりにも運命のいたずら的な……。
う~ん、聴く度に、胸がしめつけられられますねぇ。
素っ気無い彼女の棒のような歌い方が、実にアンニュイなムードを醸し出し、チェンバロを上手く使ったクラシック調のポップスアレンジによって全篇が本当に上手く仕上がっているのは、憎いばかりです。
所謂セクシーアイドルは今日まで大勢登場していますが、鮮烈なデビューから悲劇的な退場まで、これほど短期間に忘れ難い印象を残した人は、ちょいといないんじゃないでしょうか。
それは全て運命であり、また神のみぞ知る世界の中で現実に起こった出来事として、ファンならば心して小川ローザを記憶に留めるべきかもしれません。
またリアルタイムの彼女を知らない皆様には、まずはぜひとも、このシングル曲を聴いていただきたいと切望するばかりです。
たしかに丸善石油提供の番組は楽しみにしていましたねぇ。将来、ガソリンスタンドに行くときは丸善と決めていましたよ(笑)。
そんなキャラの裏側では、実は悲劇の主人公という…。
小川性のタレントはなぜかレーシングドライバーと浅からぬ縁があるようですね。
コメント、ありがとうございます。
「お茶の間の気まずさ」こそが、昭和の思い出のひとつでしょうねぇ。それだけ一家団欒が存在したという意味では、現代とかけ離れた時代でした。
小川ローザに限らず、セクシータレント&歌手のテレビ出演は、ドキドキしていました。懐かしいなぁ~、そういう気分が♪♪~♪
コメント、ありがとうございます。
アイドル時代の小川ローザには今でもファンが増えていると言われていますが、仰るとおり、伝わってくる魅力が不滅という事かと思います。
昔の映像が復刻されないかなぁ~~。