■砂の十字架 / 中村晃子 (キング)
あの未曾有の大震災から、早くも半年が過ぎているのに、被災地は未だ復旧もロクに進みません。
また、なによりも津波で流され、生死不明となっている人達が大勢いる現実も……。
実はサイケおやじのスケジュールには今月、東北に住む旧友のお嬢様の結婚式に出席の予定が入っていたのですが、その悲劇によって婚約者が津波にやられたらしく、生死不明のまま、先の見通しも立たない状況の中、式も延期になっています。
う~ん……、なにか、とても言葉にならない悲惨が辛いですねぇ……。
そこで浮かんでしまったのが本日ご紹介の「砂の十字架」で、歌っている中村晃子にとっては大ブレイクを果たした「虹色の湖」に続く、昭和43(1968)年春のヒット曲ということは、所謂エレキ歌謡のGS路線がど真ん中!
しかも昭和歌謡曲に特有の哀愁がジンワリと滲み出したビートポップスとしても、強い印象の名曲名唱になっているのですが、それにしても気分はロンリーなジャケ写とやるせない歌詞が、これ以上ありません。
北の渚は 涯なく青く
波はよせても 帰らないあなた
どうして行ったの 私を置いて
小さな貝に なってしまったの
北の渚は 淋しく広く
いくら呼んでも こたえないあなた
全篇の載せるわけにはいきませんが、上に記した、その一部分だけでも、あまりにジャストミートしすぎる歌詞は、当時のヒットメーカーだった横井弘の諸事凝縮の上手い手法が存分に活かされ、さらに小川寛興が書いたマイナー調の歌謡メロディが胸に迫るばかりです。
しかも森岡賢一郎の編曲が、まさに昭和歌謡曲の醍醐味という、幾分しつっこいストリングスとヘヴィなビートのコントラストを巧みに用いた秀逸さで、これも大きな魅力になっています。
また重低音系のペースとドラムスの録音も素晴らしく、エレキギターの音色が、これまた「昭和」ですからねぇ。
これでヒットしなければ大衆音楽の神様は激怒するでしょうし、今日でも失せない味わいの深さは、絶品という他はありません。
なによりも、今年の大震災と大津波の惨劇に、これほどせつなくリンクした歌も無いと思うほどです。
もちろん、リアルタイムでは、そんな事を予見していたはずもありませんが、それゆえに尚更、これを歌う中村晃子のボーカルに胸がしめつけられるのです……。
あぁ、本当にせつないです。
しかし、これを書いているサイケおやじには、不謹慎という誹りを免れない現実が、確かにあるでしょう。
それでも何かしらのお役にたてるよう、日々、微力は尽くしているつもりなのです。
皆様にも、この歌を聴いていただき、何かしらを感じていただければ、それはそれで幸いと書かせていただきとうございます。
失礼致しました。