OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

和みの強面

2005-12-10 12:15:02 | Weblog

今夜は宴会のかけもちがあります。正直、気が重いなぁ……。せっかくの休みなんですから、ゆっくりジャズでも聴きたい、そんなアルバムがこれです――

That's Where IT's At / Stanley Turrentine (Blue Note)

ジャケ写も恐いが中身も凄いのが、このアルバムです。

スタンリー・タレンタインはR&B色の強いテナー・サックス奏者ですが、1959年頃からマックス・ローチのバンドに雇われて進歩的な演奏もこなしていたという実力派でもあります。

しかし、その本領はやはり黒くてファンキーな演奏にあり、そこに目をつけたブルーノート・レーベルが契約を結び、1960年代に多くのレコーディングを敢行するのです。これはジミー・スミス(org) とかピアノトリオのスリーサウンズ等と同じく、黒くて楽しくスタイルを追求したスターシステムの採用によるところで、いずれもかなりのヒット盤を出しています。

で、このアルバムは、類は友を呼ぶとでも申しましょうか、当時、西海岸で人気急上昇中だったレス・マッキャン(p) との共演で、そのスタイルはもちろんゴスペル&ファンキー♪

録音は1962年1月2日になっており、メンバーはスタンリー・タレンタイン(ts)、レス・マッキャン(p) の2人をリーダーとして、ハービー・ルイス(b) とオーティス・フィンチ(ds) が脇を固めています。ちなみにハービー・ルイスはレス・マッキャンの、オーティス・フィンチはタレンタインのバンドでは当時のレギュラー・メンバーでしたので、気心の知れたセッションになっています。

まずA面1曲目の「Smile Stacey」はレス・マッキャンのオリジナルで、アップテンポのブルース! ということは、初っ端から大ファンキー大会になっていますが、タレンタインの豪快な吹きっぷりは痛快ですし、レス・マッキャンの黒いバッキングとアドリブ・ソロはお約束のフレーズがテンコ盛り♪ 全く楽しい限りですが、このあたりが行き過ぎて顰蹙スレスレでもあります。

しかし2曲目のスローブルース「Soft Pedal Blues」はタレンタインの「ふ、すすすすす~」という溜息フレーズと力強い歌心のバランスが素晴らしい演奏です。レス・マッキャンは相変わらずのゴスペル・スタイルで迫りますが、かなり繊細なフレーズも聞かせてくれるので、渋みがあります。

そしてA面ラストは、これまた黒い、レス・マッキャンのオリジナル「Pia」で、もちろん作者が先発のソロで大暴れ! とにかく快演です。もちろん続くタレンタインも真っ黒に盛り上げていきます。

B面は、大ブルース大会だったA面とは、やや趣きが異なり、まずワルツテンポの「We'll See Yaw'll After While, Ya Heah」が仄かな哀愁とゴスペル感覚を漂わせて演奏されます。まず先発のタレンタインが素晴らしく、バックをつけるレス・マッキャンも上手さ満点♪ いつまでも聴いていたくなります。

さらに続く「Dorene Don't Cry, I」は静謐なスローバラードで、抜群の構成力で風格を示すタレンタインが最高です。もちろん作者のレス・マッキャンも完全にツボを掴んだアドリブ・ソロを展開するのですが、やや叙情に溺れすぎ? まあ、それも聴かせどころではありますが……。

こうして訪れる大団円がラストの「Light Blue」で、もちろん、お約束という哀愁のファンキー曲♪ ですからアドリブ・パートは泣きのフレーズが山盛りですので、たまりません。派手では無いのですが、良い味出しまくりという演奏で、しっとりとした情感が黒く塗り潰れさていくあたりが素敵です。

というこのアルバムは、ジャズ喫茶では無視状態です。もちろん名盤読本とかにも載っていないと思われますが、それはあまりにも快楽的というか、何も考えずに楽しすぎるA面、地味で孤独なB面という構成故かも知れません。

実際、これは自宅で聴くべき作品かもしれません。個人的愛聴盤として、そっとしておくのも悪くない、そんなアルバムです。しかしジャケット同様、中身は恐いものも含んでいるのですよ。そのあたりを、どうか、ご堪能下さい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 悲しき大当り…… | トップ | 宴の後は »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Weblog」カテゴリの最新記事