今日は秋晴れ♪ しかし仕事はトラブルばかりで、下げる頭が幾つあっても足りないと言うテイタラクです。
全く自分の人生を振り返ると、頭を下げることで成り立っている部分が非常に多いですね。これで良いのか、良いに決まっています。
と開き直って、本日の1枚は――
■To You With Love / Joe Zawinul (Strand)
先日、天国へ召されたジョー・ザビヌルは、欧州から本場アメリカにやって来て、キャノンボール・アダレイ(as) のバンドで活躍した後、マイルス・デイビスのロック系セッションに参加、さらにそこからウェザー・リポートを立ち上げて大成功を勝ち取った、ジャズ史的には勝ち組の人なんでしょうが、ジャズ喫茶に集うようなファンの間では、イマイチ評価されていないような気がしています。
それはウェザー・リポートでの、あまりに時代に迎合したような存在感であり、ピアノよりは電子キーボードの多用、また世渡りの上手さ……云々が、事ある毎に非難されがちなんですねぇ。
しかし1960年代中頃までの、特にキャノンボール・アダレイのバンド時代に聞かせてくれたファンキーなピアノプレイは、個人的に大好きですし、白人らしからぬ粘っこいタッチ、それとは反比例したような洒落たメロディセンスは、ジャズファン万人を魅了するものだと思っています。
さて、このアルバムは渡米直後に吹き込まれた正統派ハードバップピアノの楽しい1枚で、トリオを基本にしながらも曲によってはコンガが入るという嬉しい演奏集です。
録音は1959年の秋、メンバーはジョー・ザビヌル(p)以下、ジョージ・タッカー(b)、フランキー・ダンロップ(ds)、レイ・バレット(per) というグルーヴィな面々――
A-1 I Should Care (Quartet)
如何様にも料理出来るスタンダードながら、ここでは意表をついたリズムアレンジが強烈で、なんとなく「チュニジアの夜」を連想させる強烈なベースのリフからグイノリの演奏がスタートします。
ジョー・ザビヌルのビアノはカクテルスタイルのテーマ提示から、ギトギトに粘っこいアドリブに入るというニクイ演出♪ 強いピアノタッチとジョージ・タッカーの押付けるようなベースのウォーキングが最高にマッチした快演で、アドリブの纏め方も実に上手いと驚嘆です♪
A-2 Easy Living (Quartet)
これはじっくりスローに構えた演奏ながら、全体のグルーヴィな雰囲気が最高という、聴くほどに味わい深い仕上がりです。
ジョー・ザビヌルのピアノは素直に原曲を変奏していくだけですが、少しずつファンキーな色合が強まっていくあたりに、グッときます♪ 中盤から入ってくるコンガも絶妙の楽しさ!
A-3 Please Send Me Someone To Love (Quartet)
ブルース歌謡の大名曲ですから、ジョー・ザビヌルにはジャストミートの演目♪ もちろん期待通りの快演を聞かせてくれます。まずテーマメロディの勿体ぶった表現が、たまりません。ブロックコードの使い方が、もう琴線にふれまくりなんですねぇ~~~♪
また間合いを活かして蠢くジョージ・タッカーのベースソロは真っ黒ですし、中盤の倍テンポを彩るコンガの響きも素敵ですから、演奏はグイグイと盛り上がっていくのでした。
A-4 It Might As Will Be Spring (Trio)
「春の如く」いう邦題にぴったりの愛らしい名演になっています。このあたりは、やはり白人らしいというか、ヨーロッパ人らしい感性が滲み出ていますし、そこにファンキーな色づけをしようと無理している微笑ましさが♪
A-5 Love For Sale (Quartet)
いきなりコンガのチャカポコリズムが楽しく、ラテンのリズムと4ビートが烈しく交錯するハードバップの醍醐味が堪能出来る演奏です。
真っ黒なドラムスとベースの所為でしょうか、アドリブはホレス・パーラン調になるのも憎めないところですが、そうした粘っこいフィーリングを狙っていながら、美味しいとろは共演者に任せているあたりが、上手いと思います。
B-1 Squeeze Me (Quartet)
コンガを中心に軽快なノリとヘヴィな4ビートを混在させた、前曲と同じ様なグルーヴが提供されています。
全体には意表をついたアップテンポの演奏で、ジョー・ザビヌルは正統派ピアニストの伝統を守ろうと汲々としている感じでしょうか……。フランキー・ダンロップの流れが止まらないドラミングが良い感じです。
B-2 Greensleeves (Joe Zawinul Solo)
有名なイギリス民謡がピアノソロで演じられるという、まあ定石なんですが、こういうミエミエの素直さがジョー・ザビヌルの人徳というか、それなりに良いんじゃないでしょうか……。
B-3 My One And Only Love (Quartet)
そして続けて始るのが、この人気スタンダード曲ですから、たまりません。前曲との繋がりが、実に良い雰囲気なんですねぇ~♪ ジョー・ザビヌルのスローな感情表現にも嫌味は無いと思いますが、それは十人十色かも……。
ジョージ・タッカーの絶妙のアクセントが効いたベースやフランキー・ダンロップのドラミングのシブさ! こういうところが、ビアノトリオの名盤必須条件なんでしょうねぇ。
B-4 Masquerade Is Over (Quartet)
一転してアップテンポのハードバップ! これも演目からすれば意表をついた展開なんですが、そんなことはお構いなしに突っ走るバンド全体の勢いが良い感じです。
しかし演奏はフランキー・ダンロップのドラムソロがメインなので……。
B-5 Sweet And Loevly (Trio)
オーラスは粘っこいフィーリングを全面に打ち出したスタンダード曲の解釈で、ジョー・ザビヌルが本領発揮! 白人らしからぬファンキーな味付けは、本場への憧れをストレートに表現したものかと思います。
その意味でジョージ・タッカー&フランキー・ダンロップという重量級の共演者の起用は大正解!
ということで、実に愛すべきジャズピアノのアルバムです。
ちなみにオリジナル盤はウルトラ級の幻盤なんですが、幸いなことに Fresh Sound から再発盤が出ていますし、CD復刻もされているはずですから、これは嬉しい現実です。
一度は聴いて楽しむべきアルバムかと♪