名古屋方面に出張していた者のお土産が「赤福」でなかったのが、残念……。もう、食べられないんだろうなぁ……。
ということで、本日は――
■Drummin' The Blues / Max Roach & Stan Levey (Liberty)
勘違いや思い込みはこの世の常とはいえ、それが長年続いているとシャレになりません。
私にとっては、このアルバルこそが、そういう1枚でした。
それはタイトルとリーダーミュージシャンから、てっきりドラムバトル物と思い込んでいたのですが……。
結論は2人のドラマーをそれぞれリーダーに立てた西海岸流ハードバップ演奏集で、それが交互に4曲ずつ、計8曲が入ったアルバムだったというわけです。
しかも、その実態はハワード・ラムゼイのライトハウス・オールスタアズなんですから! ちなみに録音は1957年頃と言われています。
ご存知、マックス・ローチはモダンジャズ創成をリズムとビートの両面から作り出した天才ドラマーですし、スタン・リーヴィーは白人ながら、その影響をダイレクトに受けたハードドライヴィングなドラマーです。
そして2人の共通点として、ビバップ期には共にチャーリー・パーカー(as) のバンドレギュラーを務め、さらに1953年頃にはハワード・ラムゼイのオールスタアズでドラマーの座を前後して占めていた因縁がありますから、どのような立場でも演奏そのものに悪い予感はしないのですが……。
さて、気になるメンバーは、マックス・ローチ(ds) のリーダーセッションでは、コンテ・カンドリ(tp)、フランク・ロソリーノ(tb)、ビル・パーキンス(ts)、ディック・シュリーヴ(p)、ハワード・ラムゼイ(b) というセクステット♪
一方、スタン・リーヴィー(ds) のバンドもセクステットで、上記メンバーからビル・パーキンスが抜け、代わりにボブ・クーパー(ts) が入った豪華版です――
A-1 Facts About Max (Max Roach 6)
アルバム冒頭はマックス・ローチのセッションで、ワイルドなドラムスとスマートなホーン隊のコントラストが狙いなんでしょうか。アドリブ奏者のバックに自然体で絡んでくるリフとか軽快なアンサンブルが、いかにも西海岸です。
そしてマックス・ローチが豪快なトラミングで、と書きたいところなんですが、イマイチ、煮え切らないのは??? と言うか、マックス・ローチだけが浮いていると思うのは、私だけでしょうか……。
A-2 Milano Blues (Stan Levey 6)
ミディアム・テンポでグルーヴィに演奏されるブルースなんですが、そこは白人のバンドらしいライト感覚に好き嫌いが分かれるでしょう。
しかしスタン・リーヴィーのドラミングはスバッとキマッたところがあり、バンドのメンバーもノビノビとアドリブを披露しています。特にフランク・ロソリーノは特徴的な駆け足フレーズ、ボブ・クーパーは繊細な表現力を堪能させてくれるのでした。
ラスマエのドラムソロはハードボイルドな至芸! アンサンブルもカッコイイです♪
A-3 Swingin' The Blues (Max Roach 6)
冒頭でややミソをつけてしまったマックス・ローチが、ここでは火の出るような熱演で、まずテーマ部分から白熱のシンバルと力感溢れるドラムのブレイクで燃えあがります。
さらにホーン陣のアドリブの間にも強烈なドラムソロを入れてきますから、油断なりません! あぁ、何度聴いても熱くなります。
A-4 Breadline Blues (Stan Levey 6)
かなりモダンな味わいのテーマメロディが、まず素敵です。作曲はピアニストのディック・シュリーヴで、ちょっと無名な人なんですが、セッション全篇で手堅いプレイを聞かせているので、隠れ名手かもしれません。
肝心の演奏は、これも素晴らしい白人ハードバップの典型で、バンド全体をギンギンにスイングさせるスタン・リーヴィのドラミングは見事ですし、クライマックスでのホーン陣との対決もスリル満点です。
B-1 Bye Bye Blues (Stan Levey 6)
B面はスタン・リーヴィーのセッションが最初に配されている気遣いが微笑ましいところ♪
演奏は軽快な西海岸風で、あまりハードバップとは言えませんが、流麗に歌うボブ・クーパーを筆頭に、全員が疾走感あふれる熱演を披露しています。もちろんスタン・リーヴィーのスピードがついたドラミングは、個人的には最高に好きな感じです♪
B-2 Blues In The Night (Max Roach 6)
元ネタは映画音楽というブルース風味の歌謡曲なんですが、このメンツで演奏されるとお洒落な感覚が滲み出て、なかなか味わい深いものがあります。
まずコンテ・カンドリがミュートで素晴らしいアドリブを展開すれば、ビル・パーキンスがスカスカな音色と粘っこいタメを活かした流麗なソロを聞かせてくれます。
またフランク・ロソリーノのブルースフィーリングも嫌味がありません。
肝心のマックス・ローチは流石にグルーヴィなピートを敲き出しいて、地味ながらメリハリの効いたドラミングが見事だと思います。
B-3 Royal Garden Blues (Stan Levey)
この曲はディキー系の演奏が多い所為もありますが、ここでの明るいアンサンブルは白人ジャズのひとつの典型かもしれません。もちろんスタン・リーヴィーのドラミングも冴えまくり♪
ボブ・クーパーからコンテ・カンドリに受け渡される調子が良すぎるアドリブの楽しさ♪ 見事なアンサンブルを経て飛び出すのがフランク・ロソリーノのトロンボーンという快感は絶品です。
またクライマックスではスタン・リーヴィとホーンの一騎打ちが真剣勝負! ガチコンの魅力になっています。
B-4 The“Count's”Blues (Max Roach)
オーラスはマックス・ローチが本領発揮! やはりスタン・リーヴィに比べるとピートがヘヴィでシンバルワークも多彩だと痛感します。
演奏全体にも黒っぽいグルーヴが横溢し、コンテ・カンドリは敢然とハードバップのアドリブに撤していますし、フランク・ロソリーノはノーテンキなところにネバリも加わった快演だと思います。
そしてクライマックスはマックス・ローチのポリリズムなドラムソロ! やっぱりこれは、一代の至芸です♪
ということで、正直言うと、2人のドラムバトルが無くて残念……。マックス・ローチにも、何時ものようなスキッとしたところが足りないと感じます。
しかしスタン・リーヴィーは、やっぱり自分の好みだし、参加メンバーの充実したアドリブやアンサンブルの妙は存分に楽しめます。というか、ハワード・ラムゼイのオールスタアズ番外篇として楽しむのが王道なんでしょうねぇ。
ちなみに冒頭で述べたように、私は長年ドラムバトル盤と思い込んでいたので、初めて聴いた時には肩すかしをくらった気分でした。何事も過大な期待も禁物という人生訓のようなアルバムとして、私には妙に愛着のある1枚です。