OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ぬるま湯気分

2007-01-16 18:49:12 | Weblog

さてさて、また仕事がハードになってきました。

本音はぬるま湯の温泉にでも浸かりたいところですが、それも出来ないならば、せめて聴く物にぬるま湯感覚を求めて、本日はこれです――

A Caddy For Duddy / Hank Mobley (Blue Note)

1960年代中頃のハンク・モブレーといえば、例の超人気盤「ディッピン (Blue Note)」の存在ゆえに、全てが快楽的な演奏と先入観念でいっぱいになりますが、結論から言えば、煮え切らない作品がほとんどです。

しかしそこがハンク・モブレーの魅力であり、モブレーマニアにはたまらないところではないかと、私は思います。いや、そう思いたいのは、私がモブレー信者であるからなんですが……。

このアルバムは特にそういう雰囲気が横溢した、最もハンク・モブレー色の濃い1枚でしょう。演目も1曲を除いて、全てがリーダーの自作曲というのも、お約束の嬉しさです。

録音は1965年1218日、メンバーはリー・モーガン(tp)、カーティス・フラー(tb)、ハンク・モブレー(ts)、マッコイ・タイナー(p)、ボブ・クランショウ(b)、ビリー・ヒギンズ(ds) という超強力な人選になっています、が――

A-1 A Caddy For Daddy
 いきなり始まるジャズロック♪ テーマメロディにもヒネリがあって、早々と快適な気分になれます。リー・モーガンがリードしてカーティス・フラーとハンク・モブレーが合の手を入れるというのが、快感なんですねぇ~。リズム隊もゴキゲンです♪
 そしてアドリブパートでも、まずリー・モーガンが何時もの常套手段ながら、やはり素敵なフレーズを連発♪ これをマンネリと言ってはいけません。こういう、一緒に口ずさめるような親しみ易さこそが、ジャズの一方の魅力だと思います。
 そこはハンク・モブレーも心得たもので、全く単純なフレーズ展開に終始しますが、独特のタメとモタレは唯一無二の得意技! 誰も真似出来ないでしょうし、やったらイモです、間違いなく! ぬるま湯であっても芯から暖まるような芸風が、私にはジャストミート♪
 そこへいくと、続くカーティス・フラーは本当にヌルイ雰囲気ですし、マッコイ・タイナーはジョン・コルトレーンのバンドを辞めたばかりとあって、馴染んでいませんが、またそれが、妙に魅力的なのでした。
 う~ん、テーマメロディの素晴らしさが全てかもしれません……。

A-2 The Morning After
 一転してワルツビートで重厚に突っ込んでくる名曲! もちろんアフリカ味になっていますので、マッコイ・タイナーが大ハッスルです。
 まずハンク・モブレーがマイペースで自分だけのフレーズを積み重ねるバックでは、的確なコード選択、また烈しく燃え上がるリー・モーガンの背後では、一層力強い伴奏で全体を盛り上げているのです。
 そして自分のアドリブパートになれば、これはもう、ジョン・コルトレーンのバンド時代と同じグルーヴを爆発させ、果て無いモード宇宙へリスナーは誘い込まれるのですよ! あぁ、全くこれが聴きたかったというのが本音です!
 ビリー・ヒギンズも千変万化のドラミングで対応していますし、ボブ・クランショウも物分りの良い存在感を示しています。

B-1 Venus Di Mildew
 この曲だけがウェイン・ショーターの書いたもので、ご推察のとおり、妙なユーモアに彩られた変態メロディが楽しさを呼び込みます。
 しかもそれがハンク・モブレーと相性バッチリ♪ 飄々としたノリと絶妙のモブレー節が最高のブレンドになっています。またリー・モーガンも肩の力が抜けた好演と言いたいところですが、やや肩すかし気味かもしれません。
 しかしマッコイ・タイナーは、ここでも良いですねぇ~♪ ジョン・コルトレーンのところでは出来なかった軽妙なノリと、持ち前のモード地獄を行きつ戻りつ、結局は楽しさ優先で憎めません。
 あぁ、それにしてもここでカーティス・フラーのアドリブソロが無いのが、悔やまれますねぇ……。それほどに楽しい雰囲気なんですよっ!

B-2 Ace Deuce Trey
 ハンク・モブレーにしては、かなり急進的な曲&演奏になっています。
 リズム隊のアプローチもドライですし、アドリブ先発のハンク・モブレーは、お手本を示したつもりでしょうか、なかなかハードで無駄の無いフレーズ展開を聴かせてくれます。
 もちろん続くリー・モーガンも若々しい感性を聴かせる好演、カーティス・フラーも甘さを排除したハスキー節で勝負しています。
 しかし、こういう演奏ならば俺に任せろ! というのがマッコイ・タイナーでしょう。完全にツボを押さえたアドリブには、我知らず熱くなってしまいます。あぁ、もっと長い演奏だったらなぁ……。
 と思わずにはいられないのですが、ラストテーマの変奏が、これまたイカしています。ビリー・ヒギンズも終始、好調ですよ♪

B-3 3rd Time Around
 オーラスは全てがモブレー節で作られたハードバップ曲です。まず、3管の合奏が良いですねぇ~♪
 アドリブパートでは、もちろん先発のハンク・モブレーが期待どおりの快演ですが、所々にぬるま湯感覚が出るのが「らしい」ところです。
 またリー・モーガンも自分の「節」を大切にしたハッスルぶりですが、意外に丁寧に吹いている印象もあります。それはカーティス・フラーも同様で、張り切りながらハメを外さないあたりが物足りないと言えば、贅沢でしょうか?
 マッコイ・タイナーは当然のごとく熱血、ビリー・ヒギンズも白熱のステック捌きで、やはりスカッとしますね♪

ということで、けっこう熱い演奏を狙っていながら、実は、ぬるま湯というが本音のアルバムです。しかし、そこがまた、良いんです、繰り返しますが。なんて言うか、分かっちゃいるけど止められないという♪

ちなみにジャケットは美女とカッコイイ車の取り合わせという、いかにも1960年代の香りが素敵ですねぇ♪

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