今日は墓参りとか、様々な野暮用に忙殺されました。
知らないうちに時間が過ぎた感じ……。こんなふうに過ぎていくのなら、人生も味気ないですね――
■The Cats / Tommy Flanagan (New Jazz)
ブレスティッジお得意のジャムセッション盤ですが、これはトミー・フラナガンが一応のバンマスというアルバムです。なにせ収録5曲の内4曲もオリジナルを提供し、残るひとつのスタンダード曲は自分中心のトリオで演奏されているのです。
録音は1957年4月18日、メンバーはアイドリース・シュリーマン(tp)、ジョン・コルトレーン(ts)、トミー・フラナガン(p)、ケニー・バレル(g)、ダグ・ワトキンス(b)、ルイス・ヘイズ(ds) という魅惑の面々――
A-1 Minor Mishap
タイトルどおり、ちょっとマイナー調で景気が良いハードバップ曲♪ けっこう私好みというか、まずテーマの合奏からしてグッと惹き込まれます。グイノリのリズム隊が実に良い感じですねぇ~♪
そしてアドリブに入ると、まずはジョン・コルトレーンがこの時期特有のウネウネしたフレーズの連続ながら、どこか浮遊していくような不思議な展開……。
しかし続くケニー・バレルが最高の名演を聞かせてくれます。アドリブに入るところのビリビリッとした痙攣フレーズなんか、もうシビレて悶絶ですよ♪ もちろん歌心もたっぷりです。
またアイドリース・シュリーマンが実力派の面目躍如! 旨味のあるフーズとシブイ音色の妙が冴えわたりですから、トミー・フラナガンも気が抜けません。ジェルントルにしてツッコミも鋭いトミフラ節と生硬なビバップのグルーヴが両立しているのでした。
A-2 How Long Has This Been Going On ?
このセッションでは唯一のスタンダード曲が、リズム隊だけで演奏されています。もちろん、我々が期待して裏切られないトミフラ節による解釈は、緩やかにして黒いグルーヴが滲み出た安らぎの名演だと思います。
A-3 Eclypso
これは楽しいラテンリズムを使ったトミー・フラナガンの代表的なオリジナル曲♪ そしてアドリブパートは4ビートになるんですが、晩年まで愛奏していただけあって、ここでのソロも冴えまくりです。こういう歌心の妙、さらに快適なノリの良さこそがトミフラ節なんでしょうねぇ~♪
アイドリース・シュリーマンのトランペットもスリル満点に良く歌っていますし、ジョン・コルトレーンも十八番のフレーズを連ねる大健闘! たぶんこの曲の元ネタは有名スタンダードなんでしょうけど、ええと、なんだっけ……。きっと歌心を刺激されるコード進行なんだと思います。
もちろんケニー・バレルも素晴らしく、またリズム隊の安定した4ビートのグルーヴはハードバップの必須条件を満たしています。
B-1 Solacium
些か地味な曲なんですが、なんともいえない柔らかな余韻と力強いリズム隊の織り成す味わいが深いと思います。
アドリブ先発で手本を示すトミー・フラナガンは、いろいろと有名曲のメロディを入れたり、綺麗なピアノタッチを活かしたフレーズを聞かせてくれますから、本当に和んでしまいますねぇ♪
するとアイドリース・シュリーマンがちょっと陰鬱な音色と不思議なフーズの連発で新鮮とはいえ、???の瞬間も……。トミー・フラナガンの伴奏と合っていない感じです。またジョン・コルトレーンも気合が入っていないというか、迷い道……。
う~ん、何故だっ!?
しかしそこから自分のペースに持っていく苦闘ぶりが、如何にもジョン・コルトレーンらしいと言えば、それまでなんですが……。つられてケニー・バレルまでもが調子を崩しているのです。
B-2 Tommy's Time
しかしこれは素晴らしい名演! 控えめなブルースがジンワリと醸成されていく展開は、まさにハードバップ全盛期の証として、何度聞いても飽きません。
まずはミディアムテンポで合奏されるテーマの雰囲気が最高ですし、アドリブ先発のトミー・フラナガンがジンワリと黒っぼく、リズム隊全員の意思統一されたグルーヴが、もう絶句するほどに素晴らしいです。
野太い4ビートウォーキングのダグ・ワトキンスとビシッとしたアクセントのルイス・ヘイズが仕掛けるキメも流石ですし、ケニー・バレルのオーバーなハッスルぶりも微笑ましいところ♪
もちろんアイドリース・シュリーマンは王道路線ですが、ジョン・コルトレーンが一筋縄ではいきません。ほとんど眠たいような出だしから、煮え切らないフレーズを続け、いつしか十八番の未完成音符過多症候群に陥っていきます。
そしてそれを救うのが、ダグ・ワトキンスのヘヴィなベースソロ! この強いフィーリングが、演奏全体を支えているのがはっきりと分かります。そこへ重なっていくラストテーマにもゾクゾクさせられますから、実際、凄いと思います。
ということで、一時は珍しいトミー・フラナガンのリーダー盤であり、ジョン・コルトレーンの参加もあって、隠れた人気盤でした。
また猫ジャケットとしての人気もありましたですね。