親戚の葬儀の終り、復帰しました。
それにしても最近の葬儀は簡略化され、式次第も流れるように執り行われ、これは葬儀屋システムの充実なんでしょうが、故人を偲ぶ時間さえ決められているような、私のようなオールドウェイブな人間は、イマイチ、ドライになりきれませんでした。
まあ、あんまり湿っぽいのも、困りもんなんですが……。
ということで、本日の1枚は快演・熱演のこれを――
■Jackie's Pal / Jacki McLean Introducing Bill Hardman (Prestige)
気の合う友人、ウマが合う奴ってのは、確かにいますよねっ♪
1950年代のジャッキー・マクリーンにとっては、ビル・ハードマンこそ、そういう相手だったんでしょう。
このアルバムはジャッキー・マクリーンのリーダー盤ですが、タイトルどおりに気の合う仲間のビル・ハードマンを相棒にしたハードバップの快作です。
原盤解説によると、この2人はチャールズ・ミンガス(b) のバンドで一緒になって意気投合、そして揃ってジャズ・メッセンジャーズに移籍したらしいんですが、どうもジャッキー・マクリーンがチャールズ・ミンガスと喧嘩したという伝説が残されています。
だいたいジャッキー・マクリーンは若造のくせに、マイルス・デイビス(tp) やチャーリー・ミンガス(b)、そしてアート・ブレイキー(ds) という恐いボスと喧嘩してはバンドを飛び出していたらしく、なんかそんな時に必至になだめたりしていのが、ビル・ハードマンという場面が浮かんでまいります。もっともこれは私の完全なる想像ですが、このアルバムのジャケットを眺めていると、さもありなんという雰囲気です。
で、このアルバムは、そんな2人がジャズ・メッセンジャーズに移籍する直前に吹き込んだもので、録音は1956年8月31日、メンバーはビル・ハードマン(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、マル・ウォルドロン(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) となっています――
A-1 Sweet Doll
仄かな哀愁が漂うジャッキー・マクリーンのオリジナルで、演奏はハードバップ一直線の素晴らしい出来栄えです。
まずアドリブ先発のジャッキー・マクリーンが何時もながらの熱い心情吐露! 太い音色で泣きまくりです。続くビル・ハードマンは小型ケニー・ドーハムという感じの音色とフレーズが特徴ですが、憎めません。
しかし何よりも凄いのはリズム隊の大活躍で、黙々と同じリフを変奏していくマル・ウォルドロン、ポール・チェンバースの我が道を行きまくるベース、スティック&ブラシで快適なクッションを送り続けるフィリー・ジョー♪ 本当に最高です。極限すればフィリー・ジョーだけ聴いていても満足させられる、素晴らしさです!
A-2 Just For Marty
ビル・ハードマンのオリジナルで、これも一抹の泣きがある名曲です。そしてジャッキー・マクリーンが、そのツボを完全に押さえた最高のアドリブ・ソロを聞かせてくれるのですから、もう、たまりません♪ しかも何時も以上にチャーリー・パーカー(as) 直系のフレーズを多用しているところにも、ご注目!
ビル・ハードマンも自作曲とあって、これもじっくり練り上げたと思われるフレーズを連発しています。
そしてここでもリズム隊が好演で、クライマックスではフィリー・ジョーとホーン陣の掛け合いが楽しめます。
A-3 Dee's Dile
如何にもマル・ウォルドロン作曲らしい暗い楽想のハードバップですが、これがジャッキー・マクリーン&ビル・ハードマン組にはピッタリ!
前2曲とは少し異なる重いビートを作り出しているリズム隊にノセられて、ジャッキー・マクリーンが暗く呻けば、ビル・ハードマンは苦しい言い訳に終始するのですが、それが不思議な魅力に転化していく、味な演奏になっています。
B-1 Sublues
ビル・ハードマンが書いた真っ黒なブルースです。これをポール・チェンバースを軸とした素晴らしいリズム隊が演奏をリードして、フロントの2人を盛り立ててつつ完成に導いていくという、美しき仲間意識が顕著な仕上がりです。
そしてこういうミディアム・テンポのブルースは十八番のジャッキー・マクリーンが、期待に応えて泣くのです。う~ん、それにしてもリズム隊が凄すぎますねぇ。マル・ウォルドロンのピアノが訥弁なだけ、逆に凄みがっ!
ちなみにフィリー・ジョーとマル・ウォルドロンは、これが最初で最後の共演でしょうか? 非常に相性が良いですねぇ♪ もっと聴きたい組み合わせです。
B-2 Steeplechase
チャーリー・パーカー(as) が書いたモダンジャズの定番曲が楽しく演奏されています。もちろん、こういうアップテンポではフィリー・ジョーのドラムスが冴えまくり♪ 先発のジャッキー・マクリーンが気持ち良くノセられた快演を聞かせれば、ビル・ハードマンも地味ながら熱演です。
そしてここでもリズム隊が最高です。ポール・チェンバースのブンブン・ベースが存分に楽しめますし、隙間だらけのマル・ウォルドロンのピアノが、そこにジャストミートする形で独自のウネリを作り出しています。
またポール・チェンバースは得意のアルコ弾きでアドリブを聞かせますが、これがかなり思い切った音使い! その背後ではフィリー・ジョーが終始、的確なビートを送り続けています。
こうなるとフロントの2人、ジャッキー・マクリーンとビル・ハードマンも負けてはいられないと、ラストテーマ直前に熱い掛け合いを聞かせてくれるのでした。
B-3 It Could Happen To You
アルバムのオーラスはビル・ハードマンが一人舞台のスタンダード曲です。
マル・ウォルドロンの気分はロンリーなイントロも素晴らしく、ビル・ハードマンはシミジミとテーマを変奏していくのですが、このあたりで充分満足させられる仕上がりになっています。
この人は超一流のトランペッターではありませんでしたが、こういう「味」の世界を演じさせては、なかなか良い仕事をしてくれます。
また、ここでもリズム隊の好演が言わずもがなで、ポール・チェンバース&フィリー・ジョーの相性は最高です。
ということで、これは名盤ガイド本には紹介されない、当にハードバップの隠れ名盤ではないでしょうか? とにかくリズム隊が絶好調で、特にフィリー・ジョー・ジョーンズのファンならば大満足のはず♪ 聞き逃せないアルバムだと思います。
それはポール・チェンバースの力演にも言えることですが、そういう素晴らしいリズム隊のサポートを得たジャッキー・マクリーンとビル・ハードマンの熱演は、さもありなんの素晴らしさ♪
実はこの2人も相性が本当に良く、共演した作品の異常な高揚感は神秘的とも言えます。
本当にタイトルに偽りなしの好盤だと思います。一応、ジャケ写からネタ元で試聴出来ますよ♪
年齢的に親類縁者でも亡くなる人が多くなりますね。
(と勝手に年齢を推測してます
ご無理のないように。ご自愛ください。
ありがとうございます。
先週の金曜日から葬儀や日帰り出張が続いた1週間でした。
本当に、自分の年齢を痛感しましたですね。