朝飯時から仕事関係の電話や来客が頻発して、落ち着けません。もちろん日中は仕事漬けというか、スケジュールをこなすのに精一杯でした。
あぁ、夜はつまらん宴会に顔を出さなければ……。
ということで、ちょっと空いた時間が出来た幸運に聴いたのが――
■Reaching Out / Dave Bailey (Jazz Time)
デイヴ・ベイリーは、どちからといえば脇役タイプながら、残されたリーダーアルバムは全てがハードバップの人気盤♪ 特にジャズ喫茶では、鳴り出した瞬間から忽ち店内が良い雰囲気に満たされるんですねぇ~。
特に本日の1枚は、マニア泣かせのメンバーによるハードな好盤で、録音は1961年3月15日、デイヴ・ベイリー(ds) 以下、フランク・ヘインズ(ts)、ビリー・ガードナー(p)、グラント・グリーン(g)、ベン・タッカー(b) というシブイ人選が逆に魅力です――
A-1 Reaching Out
アップテンポでモードが全開という、まさしくジャズ喫茶ウケする名曲・名演です。
テナーサックスのフランク・ヘインズは、珍しくもハンク・モブレー派という音色とフレーズの持ち主ながら、時期的にはジョン・コルトレーンのスタイルも吸収していた新進の名手! しかし、はしゃぐことの無い真摯なアドリブは賛否両論かもしれません。
そしてお目当てのグラント・グリーンは十八番のシングルトーンで、これも落ち着いた演奏を聞かせていますから、ちょっと意外……。
さらにビリー・ガードナーは、レッド・ガーランドやジーン・ハリス系のコロコロ転がるアドリブと山場のブロックコード弾きが魅力の局地的な人気ピアニスト♪ ここでも健闘していますが、リズム隊の一員としての働きも印象的です。
もちろんデイヴ・ベイリーのシンプルなドラミングが、演奏全体をガッチリと支えていますし、ベン・タッカーの野太いベースワークも流石だと思います。
A-2 Our Miss Brooks
味わい深いテーマメロディがゆったりとしたテンポで演奏されますから、その場の空気は全くグルーヴィ♪ フランク・ヘインズのソフトな黒っぽさが、まさにハードバップのテナーサックスで、魅力満点です。
とくれば、グラント・グリーンは俺にまかせろっ! グイノリのベースとメリハリの効いたドラムスを従えて、粘っこい「泣き」のフレーズを聞かせてくれますし、ビリー・ガードナーのピアノは最初っからブロックコードでリラックスした好演です。
全体的に鮮やかな仕掛けのキメがニクイところでもあります。
A-3 A Flick Of A Trick
これまたグルーヴィな演奏で、曲はベン・タッカーのオリジナルですから、テーマ部分から自身のベースが冴えわたり♪ ビリー・ガードナーのピアノも良い味出しまくりです。あぁ、このリズム隊だけのトリオ盤を作って欲しかったですねぇ~~。もしかしたら、在るのかもしれませんが。
するとグラント・グリーンが、実にリラックスしたアドリブを披露していて、このあたりは、ちょっとブルーノートとは異なる雰囲気が微妙です。
またフランク・ヘインズのテナーサックスもハンク・モブレーを追従したスタイルで好ましく、ここはリズム隊のファンキーなマーチ調のバッキングも楽しいところですから、グイグイと熱くなっていく演奏は、本当にたまりません♪
B-1 One For Elena
ビリー・ガードナーが書いたオリジナル曲で、テナーサックスがリードするテーマメロディとノリが、なかなかに素敵です。
そしてアドリブの先発がグラント・グリーン! うっ、これは!
そうです、全体の雰囲気が、ハンク・モブレーの大名盤「ワークアウト(Blue Note)」にクリソツなんですねぇ~♪ 実はグラント・グリーンは、このセッションの直前にはスタンリー・タレンタインの傑作「アップ・アット・ミントンズ(Blue Note)」に、そして直後には前述の「ワークアウト」に参加しているのです。つまりテナーサックスのカルテット+エレキギターという組合せの3連発をやっていたのですから、ここでの快演も保証付きなのでした。
もちろんフランク・ヘインズは歌心優先の淀みの無いスタイルにモードも巧みに取り入れた熱演ですし、ビリー・ガードナーが自作の強みとはいえ、これまた大名演を披露しています。
アップテンポでスピード感満点のサポートに撤するデイヴ・ベイリーも立派の一言で、このアルバムでも屈指の熱演になっています。
B-2 Baby, You'er Should Know It
ベン・タッカーが書いたファンキーな名曲で、もちろんこのメンツですから、ハードでグルーヴィな演奏が展開されます。う~ん、こういう味は一度覚えると抜け出せませんねぇ~♪ どーって事の無いハードバップではあるんですが、熱に浮かされたようなフランク・ヘインズのブローとかグイノリのリズム隊とか♪
また絶妙のブレイクからアドリブに入っていくグラント・グリーンにも、グッと惹きつけられます♪ わりと通常のブルースギターに近いノリとフレーズが多用されますから、私のような者にもコピー出来そうな錯覚を覚えますが、途中から執拗な倍テンポとか、本当にアブナイ雰囲気になっていくところが最高です!
そしてビリー・ガードナーの「レッド・ガーランドもどき」が痛快です。こういうのもジャズの面白さ、魅力だと痛感させられるのでした。
B-3 Falling In Love With Love / 恋に恋して
オーラスは楽しいスタンダード曲の快演で締め括られます。
というか、これまでの演奏が、どちらかというと硬派な雰囲気でしたから、ここでの和みが尚更にジワジワ滲みてまいります。
まずグラント・グリーンが軽い雰囲気で弾いてくれるテーマが、実に良いですねぇ~~♪ もちろん続けて入るアドリブパートも絶品ですし、ベン・タッカーの4ビートウォーキングと小技を効かせたデイヴ・ベイリーのドラミングも最高です。
そしてフランク・ヘインズが完全に擬似ハンク・モブレーしています♪ もちろん本家ほどの歌心も、タメとモタレの芸術も無いんですが、全く憎めませんねぇ~~。ラストテーマでの余裕も良い感じです。
ということで、実はオリジナル盤がウルトラ級の幻盤ですから、1970年代に我国で再発された時には、ちょっとした事件扱いでした。私有盤も当然、日本盤ですが、残念ながらマスターテープがイカレていたのか、部分的に「針落とし=盤落し」疑惑があると感じます。
そして個人的にはB面を執拗に愛聴しているのですが、正直言うと、これはジャズ喫茶で聴いたほうが百倍は良いアルバムでしょう。
それはジャズという音楽の鑑賞には、ある程度のラウドネスが必要という事もありますし、暗くて閉鎖的な空間が良く似合う演奏かもしれないと……。特にA面は、そうだと思います。
しかしB面のリラックスした佇まいは最高で、ゆえにお茶の間や自室では、こっちに針が落ちるのでした。
ここにきて、ようやくブログにコメントを寄せる機会ありましたので、是非一言!
私はつい2,3週間ほど前、Baileyのアルバムを買いました。タイトルは2 Feet in the Gutterです。最初はそれほど期待していなかったんですが、でもそれがなんとお気に入りのアルバムになりました。今度はReaching Out でも聴いてみます!
よいお正月を迎えてください。
お久しぶりです♪
「2 Feet」は、矢鱈に調子の良いA面が大好きです。
拙プログにも2006年7月6日にアップしてあります。
似たようなメンツの「Reaching Out」も、ぜひっ!
来年も、よろしくお願い致します。