■ジョーのダイヤモンド / 朱里エイコ (リプリーズ / ワーナー・パイオニア)
世界的にも認められている歌謡曲のスターシンガーは枚挙にいとまがありませんが、中でも朱里エイコはアメリカにおける活動も実に堂々としていた事は、昭和歌謡曲がワールドワイドで認められていた証に成り得るのでしょうか?
なぁ~んて、聊か確信犯的な懐疑という、二律背反を初っ端からやらかしてしまったのは、本日掲載のシングル盤A面曲「ジョーのダイヤモンド」が、アメリカの元祖アイドルシンガーにして、偉大なるソングライターでもあったポール・アンカの書下ろしと喧伝されていたからです。
それは昭和52(1977)年、以前からポール・アンカのヒット曲をカバーしていた朱里エイコが、本人来日時に面会して、頼み込んだ成果と云われているんですが、ポール・アンカも彼女の実力を認めていた事は確かだったでしょう。
実は同年11月には、今も名盤として人気が高い「Endless - Eiko Meets Paul Anka」と題されたLPを彼女は発売するのですが、そのレコーディング企画が、この時点で既に動き出していたという歴史的事実に鑑みても、侮れないものが確かにあるんじゃ~ないでしょうか。
で、この「ジョーのダイヤモンド」はポール・アンカの作詞作曲による原題は「When You Come Back Joe」という、ミディアムテンポの哀切歌謡ロックで、なかにし礼の意訳的日本語詞と恣意的な「泣きのギター」を入れまくった竜崎孝路の編曲を得た朱里エイコが、持ち前のパワフルでクールな節回しを全開させた熱唱が、なかなかに心地良いんですねぇ~~♪
歌詞の内容は、犯罪者となった男を待ち続ける女の悲しい決意表明(?)みたいな、所謂エレジー歌謡ですから、自意識過剰は鬱陶しくなる楽曲と思えば、ちょっぴり「突っぱねた」ムードも滲む朱里エイコの歌いっぷりは、流石に各方面の音楽賞を獲得しただけの見事さでありましょう。
もちろん、前述のLP「Endless - Eiko Meets Paul Anka」にはA面ド頭の目玉トラックとして収録されているのもムベなるかなっ!
そして朱里エイコは翌年、渡米してレコーディングした傑作アルバム「Nice To Be Singing」を発表するんですが、そこには永遠のディスコ歌謡アンセム「サムライ・ニッポン / Samurai Nippon」が収録されているというわけです。
ということで、そんなこんなの汎用性・雑食性を持ち合わせているのが我が国独自の音楽である「歌謡曲」の素晴らしさだと、サイケおやじは常々思っているんですが、最近の所謂「J-POP」には、そのあたりが不足気味じゃ~ないですかねぇ…… (-_-)
往年の新しい歌謡曲だった「ニューミュージック」が現在、「シティ・ポップ」なぁ~んていう古びた名称で再発見・再評価されているのであれば、昭和50年代の朱里エイコが出していた諸作も、ぜひ、お楽しみいただきたいと願っているのでした。