いくら劇中とはいえ、新作ウルトラマン映画でセブン=ダンとアンヌ隊員が結婚していたという設定には、些か心の動揺が隠せません。
オリジナルストーリーでは禁断の恋を捨て、好きな女の気持ちも振り切ってハードボイルドに行動したモロボシダンに、男の生き様を教えられた少年期の私ですから……。
どうせなら別れた後にダンの子供を宿しいてる事に気がつくアンヌというのが、自然じゃなかろうか……。
等と年甲斐もなく心が揺れる私には――
■Guys And Dolls Like Vibes / Eddie Costa (Coral)
エディ・コスタは硬質なスイング感とアナーキーな破壊力が特徴的なピアニストですが、また同時に洒脱なスイング感が大きな魅力のヴァイブラフォン奏者でもあります。
その実力は例えばタル・ファーロゥ(g) と組んだ一連のレコーディングが特に有名でしょうが、楽しさと新鮮では、このアルバムが代表作かと思います。
録音は1958年1月15~17日、メンバーはエディ・コスタ(vib)、ビル・エバンス(p)、ウェンデル・マーシャル(b)、ポール・モチアン(ds) という精鋭揃い! 特にビル・エバンスはマイルス・デイビスのバンドレギュラーに抜擢される直前の時期ですから、興味深々です。
ちなみに演目は全てフランク・レッサーが書いたアルバムタイトルと同じミュージカルからの楽曲で構成されています――
A-1 Guys And Dolls (1958年1月15日録音)
如何にもビル・エバンスが入っている雰囲気が滲み出たリズムアレンジとテーマの合奏から、ビル・エバンスが会心のアリドプに突入した瞬間、このアルバムを聞く喜びに震えてしまいます。実際、このピアノトリオの部分は完全にビル・エバンス・トリオといって過言ではありません。ポール・モチアンの協調性も満点ですからねぇ♪
するとエディ・コスタが持ち前の洒脱なフィーリングを全開させ、絶妙の歌心を聞かせてくれます。
このあたりはバンドの編成から、どうしてもMJQとの比較は避けられないのですが、明らかに異なった楽しい演奏は決定的で、それはやはりビル・エバンスの存在感が強烈だと思います。
A-2 Adelaide (1958年1月17日録音)
なかなか美しいテーマメロディをビル・エバンスがリードし、次いでリズム隊を呼び込みながらエディ・コスタが入ってくるあたりから、グッとシビレます♪
スローな展開ながら強いビート感を打ち出すバンドの一体感、ポール・モチアンのブラシと重いビートのウェンデル・マーシャルのプレイが地味ながら素晴らしく、ビル・エバンスも十八番の「節」と歌心を遺憾なく発揮しています。
あぁ、今聴いてもビル・エバンスは完全に個性を確立して最高なんですから、当時はこれが想等に斬新に聴こえたのでしょうねぇ~♪
肝心のエディ・コスタも後半でじっくりとアドリブを展開し、ジンワリとした暖かい世界を構築していますが、ここは全くビル・エバンスの存在感がピカイチだと思います。
A-3 If I Were A Bell (1958年1月17日録音)
マイルス・デイビスの大名演が残されているがゆえに知られている曲と言っていいでしょう。もちろんビル・エバンスが入ったマイルス・デイビスのライブバージョンも残されているわけですが、ここでの快適でテンションの高い演奏も隠れ名演じゃないでしょうか?
軽いアレンジが入ったテーマ演奏からアップテンポでスイングしまくるバンドの勢い、そしてエディ・コスタが本領発揮のアドリブパートからして楽しく、ジャズを聴く喜びに満ちています。ポール・モチアンのブラシも気持ち良すぎます♪
またビル・エバンスもマイルス・デイビスとやっている時よりはノビノビとしたスイング感が素晴らしく、もちろん独特のノリも楽しめるのですから、たまりません。
B-1 Luck Be A Lady (1958年1月16日録音)
ラテンビートを入れた熱い演奏ですが、ビル・エバンスの個性は存分に発揮されていますし、エディ・コスタのアナーキーな魅力も滲み出ています。ラテンリズムと高速4ビートが交錯するアレンジは、さもありなん!
それにしてもこういう仕掛けになるとポール・モチアンのドラミングは冴えますねぇ。エディ・コスタのヴァイブラフォンはハードドライヴィング! ビル・エバンスも妥協せず、硬派に迫っていますから、楽しいというよりは恐い感じさえもしています。
B-2 I've Never Been In Love Before (1958年1月16日録音)
一転してグッと和みが広がる名演♪ まずビル・エバンスの無伴奏ピアノソロによるテーマメロディの変奏が印象的ですし、リズム隊が入ってからの静謐な展開も最高です。
もちろんエディ・コスタのヴァイブラフォンからは歌心が止まらない雰囲気♪ それがまたビル・エバンスっぽい味わいまであるのですから、もう心底シビレます。
そして中盤からスインギーな展開に移行してくれますから、こっちの身体も揺れっぱなしですよ♪ これがジャズだと思います。
もちろんビル・エバンスも自分のリーダートリオのような快演ですよ。
B-3 I'll Know (1958年1月15日録音)
これがまた素敵な原曲メロディを活かしきった名演♪ あぁ、こんなに和んで胸キュンの演奏もないもんです。
エディ・コスタもビル・エバンスも名演ですが、地味ながらウェンデル・マーシャルの4ビートウォーキングが印象的ですし、ポール・モチアンのブラシも存在感が強いのでした。
ということで、ジャケットもお洒落ですが、中身も非常に秀逸なアルバムです。私も含めて、正直に言えばビル・エバンスが参加している事に価値を見出される作品かもしれませんが、エディ・コスタのヴァイブラフォンも捨てがたい魅力に満ちていて、明らかにミルト・ジャソンとは一線を隔した存在でしょう。
残念ながらエディ・コスタは交通事故で1962年に他界してしまったのですが、この手の演奏をもっと残して欲しかったと繰言が止みません。
またビル・エバンス対ヴァイブラフォンといえば、デイヴ・パイクの名盤「パイクス・ピーク(Epic)」との共通点も興味深いところでしょう。
とにかくかなりシブイ名盤という感じですから、見つけたら即ゲットを強くオススメ致します。