ここは雪国だというにの、この暑さはなんでだろう?
そう思わざるをえない1日でした。明日からは一応の休日ではありますが、今からこんなに暑いんじゃ、夏が思いやられるですね。
ということで、本日は――
■That's The Way It Is / Milt Jackson Quintet featuring Ray Brown (Impulse!)
ミルト・ジャクソンとレイ・ブラウンは、ともに人気バンドのMJQとオスカー・ピーターソン・トリオのレギュラーとして非常に有名ですが、この2人が不定期ながらも実際のライブバンドを組んでいたのは嬉しいことでした。確か来日もしていたはずですね。
さて、このアルパムは、その端緒となった1枚で、録音は1969年8月1~2日、ロスのシェリーズ・マン・ホールでのライブセッションで、メンバーはミルト・ジャクソン(vib)、レイ・ブラウン(b) に加えて、テディ・エドワーズ(ts)、モンティ・アレキサンダー(p)、ディック・バーク(ds) という、しぶとい名手達――
A-1 Frankie And Johnny
レイ・ブラウンのベースがテーマメロディをリード、ピアノとドラムスが地味なサポートをしていますが、テディ・エドワーズのテナーサックスが絶妙に入ってくると、バンドのグルーヴがグッと盛り上がり、この瞬間が、まず最高です!
あぁ、このグイノリ♪ これがジャズです♪
そしてテディ・エドワーズのアドリブが終わってからようやく登場するのが、リーダーのミルト・ジャクソンなんですから、この深遠な企みは流石としか言えません。もちろんアドリブはブルース&ソウルがたっぷりな濃厚味です。
続くモンティ・アレキサンダーもオスカー・ピーターソン風の大きなノリが楽しく、聴いていて自然に体が揺れてくるのでした。
A-2 Here's That Rainy Day
ミトル・ジャクソンをメインとした絶品のバラード演奏♪ ゆったりとした雰囲気は和みに直結するものですが、けっして媚びたり、ダレたりしない、ほどよい緊張感が素晴らしいと思います。
レイ・ブラウンのベースワークは繊細にして豪胆! ミトル・ジャクソンの歌心を完全に引き出して彩り、バンドを確実にリードしているようです。しかも、全く力みが感じられないのですからっ♪
A-3 Wheelin' And Dealin'
テディ・エドワーズが書いたブルースがアップテンポで演じられ、メインバー各人の景気の良いアドリブが連発されます。
特にモンティ・アレキサンダーは最高にノリノリ♪ 独白すれば、私はこのアルバムを聴いてこの人に夢中になり、いろんなレコードを漁った過去があります。実際、楽しい伴奏にスピードのついたアドリブには、参っちゃいますよ♪ 誰かの掛声も良い感じ♪ オスカー・ピーターソンというよりもジーン・ハリス直系のスタイルなんですね、これは♪
テンションの高いドラムスも素敵です。
B-1 Blues In The Bassment
おぉぉぉ~、これは山本剛(p) の世界ですねぇ~♪
告白すると、これより先に山本剛のバージョンを聞いていた私ですから、この演奏にもイントロからシビレたのですが、そのレイ・ブラウンのベースが実に味わい深いです。
テーマを地味にリードしてアドリブパートにバンドを導き、そこに到ってディック・バーグのシンバルが躍動し、テディ・エドワーズの熱いテナーサックスが入ってくる瞬間が至福です♪ 観客からも暖かい拍手があって当然という快感なのでした。
もちろんモンティ・アレキサンダーは山本剛の元ネタっぽい大名演! 粘っこくてグルーヴィなアドリブは最高としか言えません。それとドラマーのディック・バーグは無名ながら、実に痛快なドラミングを披露する現場主義の名手でしょうね。観客の手拍子も楽しさの証明だと思います。
肝心のミルト・ジャクソンは、もちろんブルースの鬼ですが、ここはリズム隊を聴くのが私の楽しみというわけです。
B-2 Tenderly
レイ・ブラウンが大きな見せ場のバラード演奏で、繊細なベースワークと卓越したテクニック、素晴らしいリズム感には圧倒されます。けっこう細かい音使いと忙しないフレーズの連なりでソロを演じていますが、決してイヤミではないと思います。
途中から入ってくるミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンは余裕の歌心♪ 伴奏のモンティ・アレキサンダーも抜群のセンスだと思います。
B-3 That's The Way It Is
アルバムタイトル曲はモンティ・アレキサンダーが書いた黒いブルース♪ グルーヴィな雰囲気が横溢したバンドの纏まりは最高で、まずはミルト・ジャクソンがお手本を示す名演です。
あぁ、このタメの効いたモダンジャズなブルースの世界こそ、このバンドの持ち味でしょうねぇ~、聴くほどにシビレがとまりません。テディ・エドワーズの思わせぶりも年期が入った節回し♪ ソフトな情感が粋を感じさせてくれます。
そしてモンティ・アレキサンダーが本音を吐露したところで、ミルト・ジャクソンがオーラスの大団円に相応しいメンバー紹介のアナウンス♪ ここは客席とステージが一体となった実に良い雰囲気に包まれてしまいますから、たまりませんねっ。これがジャズを聴く楽しみのひとつだと思います。
ということで、決して派手な演奏集ではないのですが、このジンワリとしたブルース&ソウル、モダンジャズの王道を行くハードバップでは人気盤じゃないでしょうか。リラックスした雰囲気が、とにかく最高です。ちなみにミルト・ジャクソンがこのバンドを組んだのは、MJQから夏休みを貰えたからだと、インタビューで語っていましたけれど、レイ・ブラウンも創成期MJQのバンドメンバーでしたから、阿吽の呼吸ってやつでしょうね♪
ただし録音が如何にも西海岸というか、特にミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンは何時もより軽めの音になっていますし、テディ・エドワーズのテナーサックスも音圧が足りない感じで、賛否両論でしょう。
しかし演奏には地味な良さがいっぱい♪ 気軽な風情のモダンジャズこそが、本物の証かもしれません。全くジャケ写どおりの雰囲気です。