OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

スカッと熱くいきましょう

2005-12-20 17:47:29 | Weblog

ようやく天候が回復しつつあるのか、今日は比較的穏やかでした。しかし融けかかった雪は始末が悪く、除雪の手が回らない道路はシャーベット状態で、相変わらず車はノロノロと……。

こんな時こそ、スカッと楽しいジャズを聴きたいということで、本日は――

Pairing Off / Phil Woods (Prestige)

一応、フィル・ウッズ名義になっていますが、プレスティッジお得意のジャム・セッション盤か……? と思いきや、中身はきちんと企画にスジを通した面白いアルバムです。

それはタイトルどおり、フロントのトランペットとアルトサックスに名手を2人ずつ配し、そこでバトル物の趣向を盛り込んだからです。

参加メンバーはケニー・ドーハム(tp)、ドナルド・バード(tp)、フィル・ウッズ(as)、ジーン・クイル(as)、トミー・フラナガン(p)、ダグ・ワトキンス(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) というオールスターズで、録音は1956年6月15日とされています。

で、ジャズにおけるバトル物の面白さは、単なるアドリブの競い合いに加えて、わざわざ演奏スタイルが似ている者を対峙させるという趣向があるのです。

その意味で、フィル・ウッズとジーン・クイルは、共にチャーリー・パーカー直系のスタイルを白人らしくスマートに解釈したアドリブ・フレーズが持ち味でしたから、これ以外にもバトル物のアルバムを多数発表している人気コンピでした。

またケニー・ドーハムはモダンジャズ創成期から活躍する名手、それに対するドナルド・バードは当時メキメキと売り出していた新鋭という立場でしたが、共に歌心を大切にしていた黒人ハードバッパーでした。

ということで、このアルバムはその2人~4人の絡みと鬩ぎ合いにポイントを置いた作りになっています。

まず初っ端の「The Stanley stomper」はグルーヴィなフィル・ウッズのオリジナルで、先発はもちろんフィル・ウッズ♪ タメの利いたドライブ感満点のアドリブを披露すれば、続くドナルド・バードも粘っこいフレーズを積み重ねていきます。しかし続くジーン・クイルは最初から突っ込んだような激情を吐露、それにつられて、いつもは冷静なケニー・ドーハムがリズム隊にノセられてしまうのは臨場感があります。

演奏はこの後、ピアノとベースのソロを経て、いよいよお目当てのバトル・シーンへ突入! ウッズとクイル、バードとドーハムがそれぞれに4~8小節ずつ対決していきますが、ウッズとクイルはスタイルが酷似していますので、聴き手は集中力を要求されます。個人的にはウッズはドライブ感が強く、クイルはややギスギスした部分が持ち味かと、聞き分けています。

幸いにも、このアルバム裏にある原盤解説では、曲毎にソロ・オーダーが明記してありますので、楽しく鑑賞出来る配慮は嬉しいところです。

2曲目は仄かな哀愁漂うアップテンポの「Cool Aid」で、ウッズ→ドーハム→クイル→バードとフロント陣のソロが回され、バトルの部分もそのとおりの掛け合いが熱くさせてくれます。フィリー・ジョーの煽りたてるドラムスも見事です。

B面に入っては、まず「Pairing Off」がアルバム・タイトルになっただけあって強烈です。かなりアップテンポな演奏ですが、テーマ部分の即興パートが乱れそうで乱れないあたりはスリルがあります。

アドリブ・パートはドナルド・バードが先発で快調に飛ばせば、ジーン・クイルは最初から熱血スタイルをたっぷり披露します。続くケニー・ドーハムは落ち着いた中にも歌心を大切にしたフレーズがベテランの味♪ そして大トリに登場のフィル・ウッズは持ち味のドライブ感に満ちた猛烈なソロを展開するという、4者の持ち味が存分に発揮された名演は、ピアノ・ソロを挟んで激しく対峙していくので、完全に熱くなります。おまけに、そこにフィリー・ジョーのドラム・ブレイクまでもが割り込んでくるのですから、たまりません。

そして大団円の「Suddenly It's Sprin」は、一応、スタンダード曲ということになっていますが、これって、スタン・ゲッツ(ts) でお馴染みの人気曲「ディア・オールド・ストックホルム」に良く似ているのですから、演奏は哀愁という隠し味が効いています。

もちろんウッズ対クイル、バード対ドーハムのバトルを中心として展開されるアドリブ合戦は聴き応えがありますが、ここは素直に曲の雰囲気に浸りきった各人の名人芸に酔いしれて下さいませ♪

ちなみにホーン対決がメインではありますが、実は縁の下の力持ち的なリズム隊も素晴らしい出来で、特にフィリー・ジョーはクッションの効いたドラムミングで本領を発揮しています。

ということで、これはジャズ名盤のガイド本にも、あまり紹介されないアルバムではありますが、ジャズの楽しさに極まった作品だと思います。

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