OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

MJQの安心ライブ

2008-09-06 16:28:24 | Jazz

昨夜から緊急の仕事が入り、全く休めません……。これも仕事だ、人生だっ、と割り切って本日は――

European Concert Vol.1 / The Modern Jazz Quartet (Atlatic)

モダンジャズカルテット=MJQの人気と音楽性を確立したとされる初期アトランティック盤は、確かに密度の濃い演奏集でしたが、何故か録音がイマイチ……。しかもオリジナルであっても、レコードそのものの盤質が良くありませんでしたから、私なんか最初、なんでこれが歴史的名盤なのか? どうもピンッときませんでした。

ところが本日ご紹介のライブを聴いて、目からウロコ! 演奏の充実度は言わずもがな、その録音の良さには吃驚でした。まあ、それゆえに素晴らしい演奏を堪能し、MJQの魅力に開眼したようなわけでして……。

録音は1960年4月11~13日、ストックホルムでのライブから選りすぐったテイクが収録されているようですが、メンバーはお馴染み、ジョン・ルイス(p)、ミルト・ジャクソン(vib)、パーシー・ヒース(b)、コニー・ケイ(ds) という纏まりの良い4人組――

A-1 Django (1960年4月12日録音)
 MJQと言えば、これが出なければ収まらない代表曲ですから、ライブの幕開けにはジャストミート♪ まあ、実際のコンサートはどのようなプログラムだったのか不明ですが、ライブアルバム化するとしたら、これしかない編集だと思います。
 肝心の演奏は纏まりすぎて面白みが無いほどに完璧で、ステレオ盤では左にジョン・ルイスのピアノ、真中にドラムスとベース、右のジョン・ルイスのヴァイブラフォンが定位した基本的なミックスが潔く、前述したように、この時代としては音の良さが特筆ものです。

A-2 Bluesology (1960年4月12日録音)
 これもバンドにとっては十八番の演目で、スタジオレコーディングとしてはアルバム「Fontessa (Atlantic)」に収録された1956年のテイクが決定版とされていますが、音が悪く……。
 それがここでは音の良さに加えて奔放なミルト・ジャクソンのヴァイブラフォン、躍動的なベース&ドラムス、要所を締めるジョン・ルイスの存在感が綺麗に纏まった快演♪
 正直言えば、そのあたりにMJQ特有の限界も感じられますが、しかしそれが大きな魅力になっているのも、また事実だと思います。私は大好きです、この演奏♪

A-3 I Should Care (1960年4月12日録音)
 前曲のブルースに続いて、同じくミルト・ジャクソンが得意といするメロディラインを大切にしたアドリブが冴えまくる名演です。とにかく流麗なヴァイブラフォンの響きが素晴らしいですねぇ~~♪
 リズム隊も力強く、決して甘さに流れないところは流石だと思います。特にパーシー・ヒースの芸の細かさには驚嘆ですよ。
 
A-4 La Ronde (1960年4月12日録音)
 そのパーシー・ヒースが主役となったビバップの室内楽的解釈という、如何にもMJQな演奏です。しかしパーシー・ヒースは過激な姿勢というか、相当にツッコミの鋭い存在感を披露! このあたりはペースの音の魅力をしっかりとらえた録音の良さが光ります。

B-1 I Remember Clifford (1960年4月11日録音)
 このアルバムの目玉演奏というか、天才トランペッターに捧げられたモダンジャズ屈指の人気曲がMJQによって演じられるという、まさに嬉しいプレゼント♪
 もちろん演奏は素晴らしく、淡々とした中に深い悲しみが感じれ、数多あるこの名曲のジャズバージョンでは出色だと思います。特に音符を切り詰めたスタイルのジョン・ルイスが味わい深いところでしょう。
 このあたりは出来すぎというか、あらかじめ考え抜かれたアレンジと存在のアドリブという意地悪な気分にもさせられて、賛否両論かもしれません……。
 
B-2 Festival Sketch (1960年4月11日録音)
 人気盤「At Music Inn (Atlantic)」でも披露されていた代表曲ですが、ここでのバージョンはそれを凌駕する出来だと思います。とにかく流麗なミルト・ジャクソンが圧巻!
 安定したリズム隊にも躍動感が漲り、それでいて品格も漂うという、これがまさにMJQのイメージどおりなのでした。

B-3 Vandome (1960年4月13日録音)
 名盤「Pyramid (Atlantic)」に収録され、それはこの巡業直前という1月の録音でしたから、ここではピカピカの新曲として披露されたはずです。実際、前述のレコードも発売されていたか、ギリギリの時期でしょう。
 ですから何の挨拶もなく、前曲の拍手に追いかぶせるように演奏をスタートさせるバンドの勢いは、このクラシック~バロック趣味に彩られた名曲にジャズ的な興奮を加味することに成功しています。
 コニー・ケイのドラミングがシャープでグルーヴィ♪ 途中で誰かが、思わず「イェ~」と叫ぶのも良い雰囲気です。

B-4 Odos Against Tomorrow (1960年4月12日録音)
 こうして盛大なアンコールの拍手に迎えられ、じっくりと演奏されるのが、これも名曲の中の大名曲ですから、たまりません。ハードボイルドな哀愁、ジンワリと退廃した雰囲気から一転、躍動するモダンジャズの快楽性も鮮やかな展開には、グッと惹きつけられます♪
 もちろん最終パートは再び緩やかなテンポに戻り、素晴らしい余韻を残してコンサートは終了するのでした。

という構成も冴えまくりの傑作盤になっています。成熟して完成された演奏の密度も抜群です。ただしこうした出来すぎのところはスタジオ録音と変化無しというか、ジャズという瞬間芸、即興性という面からすれば問題あり? つまり安定感がありすぎて、スリルが無いという贅沢も言いたくなります。

しかし既に述べたように、このアルバムの録音は当時としては抜群に素晴らしく、それゆえに初期のベスト盤という趣が強く感じられます。

こうした特性は有終の美を飾った名盤「The Last Conccert (Atlantic)」にもあることですが、MJQ入門用としては最適なアルバムでしょう。ちなみに続篇「Vol.2」も同様に素晴らしく、合わせて聴けば、未だマンネリしていない全盛期の人気と実力が実感されると思います。

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