今日は「敬老の日」、しかし私は親孝行もせず、仕事に忙殺され……。若い者には煽られるし、疲れきって反省もしていない始末でした。
という本日は――
■Sonny Clark Quintets (Blue Note / 東芝)
日本でのソニー・クラークは人気ピアニストとして屈指の存在ですが、その決定版は、ご存じ「Cool Struttin' (Blue Note)」でしょう。これぞファンキーハードバップの聖典として、何時までも聴き飽きない名盤だと思います。
そしてそこに未発表の演奏があったなら!? という夢が叶った大事件のアルバムが、これです。オリジナルデザインを巧みに活かしたジャケットの稚気も最高ですねっ♪ ちなみに発売は我が国優先だったようです。
ただし結論から言えば、その「続・Cool Struttin'」はA面の2曲だけでした。しかしB面に収められた別なメンツによる3曲が、これまた素晴らしく、まるっきり「新・Cool Struttin'」とも言うべき、プログラムピクチャー王道のような仕様が実に楽しいところです――
★1958年1月5日録音 /「Cool Struttin'」未発表演奏
A-1 Royal Flush
A-2 Lover
メンバーは今更の説明は不要かと思いますが、アート・ファーマー(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds) という不滅の5人組♪ やっばり、この名前にはワクワクさせられますねぇ~。
肝心の演奏は、まずド頭の「Royal Flush」からして翳りを帯びた「ソニクラ節」のテーマメロディが嬉しいところ♪ 実はこれ、このセッションから2年後の1960年3月に録音・制作されたソニー・クラークが畢生のピアノトリオ盤「Sonny Clark Trio (Time)」では、「Nica」というタイトルで親しまれていた名曲ですから、それがこのメンツで! というだけでたまりませんねっ♪ 調子の良いフィリー・ジョーのドラミングに煽られて青春の情熱を滾らせるジャッキー・マクリーン、柔らかなソフトファンキーで歌心を優先させたアート・ファーマー、もちろんソニー・クラークはちょいとネクラなアドリブメロディで、控え目ながらファンキーな「節」を聞かせてくれます。どっしり構えたポール・チェンバースも地味に良いですねっ♪
そして続く「Lover」は急速テンポで演じられる事が多いスタンダード曲ですが、ここではテーマにちょっとしたお遊びアレンジも楽しい名演になっています。もちろんアドリブパートは猛烈な4ビート大会で、ジャッキー・マクリーンが些かトンパチに突進すれば、アート・ファーマーも流麗なフレーズの連続技で勝負! リズム隊の躍動感も流石だと思います。これがハードバップですねぇ~~♪ しかし肝心のソニー・クラークが本格的なアドリブを聞かせてくれないのは減点です。まあその分、フィリー・ジョーが豪快なドラムソロを披露しているのですが……。
★1957年12月8日録音 / 未発表セッション
B-1 Minor Meeting
B-2 Eastern Incident
B-3 Little Sonny
冒頭で「新・Cool Struttin'」なんて書きましたが、実はこちらの方が約1か月前に録られていたセッションで、もちろんオクラ入りしていた音源です。
メンバーはクリフ・ジョーダン(ts)、ケニー・バレル(g)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、ピート・ラロッカ(ds) という、こちらもなかなかの曲者揃い♪
まず何と言っても「Minor Meeting」でしょうねぇ、前述した「Sonny Clark Trio (Time)」ではトリオでの演奏として決定版が残されていますが、ここでのソニー・クラークも実にたまらない「ソニクラ」節の大洪水♪ ファンキーなマイナーメロディが存分に楽しめます。また続くケニー・パレルが、そのアドリブへの入り方が奇跡の一瞬という感じで、本当にゾクゾクさせられます。クリフ・ジョーダンも好演ですし、ソニー・クラークは再度のアドリブパートまで演じるという大サービス♪
続く「Eastern Incident」はタイトルどおりというか、些か勘違いな中華メロディが??? もちろんアドリブパートは典型的なハードパップなんですが……。そういうモヤモヤをブッ飛ばすのがオーラスの「Little Sonny」で、ケニー・バレルの熱演を筆頭に、アップテンポの爽快さにシビレます。本領発揮のクリフ・ジョーダン、そしてファンキーに突っ走るソニー・クラークという出来栄えからして、これの続篇も期待したのですが……。
ということで、なかなかジャズ者の琴線を刺激するアルバムです。やっぱり名演名盤の未発表物は強いということでしょうね。既に述べたようなジャケットの魅力というか、洒落になっていないデザインもキッチュじゃないでしょうか。
現在では収録音源の全てがCD化されていますが、やはりこのアナログ盤ジャケットの魅力は絶大で、こういうブツを作ってしまった日本のレコード会社の遊び心と商売魂には敬服するしかありません。
世の中、様々な「偽装」がまかり通っている昨今、しかしこれは大歓迎なのでした。
たまに中古屋で見かけるんですが、その強気な値付けでレジに運ぶ気になれません。
オリジナル(?)は「SONNY CLARK QUINTETS」(1592)ですね。
紙ジャケCDで持っていますが、プレイヤーが無いので聴けません(涙)。
B面の3曲は個人的に溜息もののクラーク盤なんです。
このメンツ、演目そしてモノラルミックス…言うこと無しなんです。
毎度、コメント感謝です。
このアナログ盤、東芝から出たんですが、今はそんな高値になっているのですか!? 告白すれば、私は当時、中古でゲットしたものです。定番の「帯」もありませんでしたね。それが普通の中古というか♪ 値段も千円台でした。
CDは初期版の「Cool Struttin'」にA面の2曲が追加されていましたですね。多分、そこが初CD化でしょうか。
それにしてもオリジナルブルーノートのラインナップに型番まで決まっていたとは、知りませんでした。内容からして、当然でしょうね。
あと、CDプレイヤーを持たずにアナログ一筋というのは、潔くて流石だと思います!
なんと書いたらよいのでしょうか…粘るっていうか、でも格好良い大人のナンバーだと思いました。
改めて、私は単純にスイング系ばかり聴いていたんだなと自覚させられました。
新鮮でした。
「Cool Struttin'」が一番格好良いと思いましたが、個人的には「Little Sonny」の方が好きです。
サイケおやじ様の書かれていた「奇跡の一瞬」のところはゾクゾクしました。これはサイケおやじ様の解説を読んでいたから感じられたのであって、私だけが一人で聴いても解らなかっただろうなぁ…と感じます。
改めて味わい深い文章に感謝です。
お仕事お忙しいのですね。
お身体いとわれて下さいね。
名前入れ忘れてました。
すみません…
コメントありがとうございます。
そうです、ソニー・クラークの粘りのピアノタッチ、それとちょいと外れたような音程の妙、それがファンキーなんですよねっ♪ ちょっと私の稚拙な文章では伝えられないもどかし、聴いて感じることが、音楽の喜びだと思います。
喜怒哀楽、それが前向きな生き方、素直になるって難しいですが、音楽を聴いて楽しむことも、そのひとつでしょうね。本当にそう思います。