こんな過大な予告をする羽目になったこと自体が、頭が悪くなったという証拠。僕に出来るはずはないのである。でも相変わらずというか、ますます、歴史の「土台」であり続けているはずの「経済史の今」ぐらいは長期間かけてぱらぱらと短くて拙い物でも描いてみようというように方針変更して、いろいろと読んできた。その中でとても興味深かった中間報告を一つ今日はやってみたい。
東洋経済新報社の「現代世界経済をとらえる Ver4」という本を手に取り、読んできた。娘が大学院時代に使った本であって、Ver4とはその03年版で、A5版びっしりの300頁近い本なのに明らかなロングセラー。娘に聞いたら全国の大学経済学部の教科書として版を重ねてきた本だという。全14章に執筆者14人、全国14の国公私立大学14校のそうそうたる(らしい)専門家がそれぞれを執筆している。新版が出ていないかとネット検索してみたら10年にVer5が出ていて、その目次を読んでみた。この5版が本屋から届くのは来週の中頃、それまでの繋ぎにこんな作業も余興となろうかと気づいた。2つの版の目次の比較である。この比較から最も分かることがこれだろう。03年から10年までの世界経済について、経済学者たちが最も激しい変化をどこに観ているか、と。10年足らずで世界の経済問題がこんなにも変わる時代に我々が生きているということなのだ。
世界で最も強い連中が適切な世界法がないのを良いことにその力に任せて世界中を蹂躙してきたという、その足跡なのだ。通貨危機を、メキシコ、アジア、ロシア、ブラジル、トルコ、アルゼンチンなどと世界中に次々と引き起こして各国経済(の無数の人々の生活)に一大悲劇を作ってきた。そのくせ、ケイマンとかバ-ジンとかに籍を置いて税金を払わない。その成長期においてさえ、こんなに儲けていたのにである。
『これらのヘッジ・ファンドは全米で約500億ドルの資産を保有しているものとみられ、年間40~50%の利潤(配当率)をかせいでいるものもある』(有斐閣「現代国際金融論」2001年第4版338頁)
それのみか、彼らを中心とした「闇金融」の実態さえつかむことができないのである。99人以下の出資者から集めた金の運用ならば、どこにも報告しなくて良いということらしい。かてて加えて、オフバランス取引というのがある。大銀行にさえ許された、貸借対照表に記載する必要がない取引のことだ。だからこそ田中宇氏が彼らを闇金融と呼んだのだが、その金融総額は今や67兆ドル、世界の金融総額の約半分だという。「大きくて潰せない」し「責任追及もないだろう」などとばかりに破裂すると分かっているバブルとその破裂とを重ねてきた。何度も何度も。その最後には。低所得家庭に半ば騙すようにして家を買わせ(格付け会社も含めて「肥大しすぎたという意味で偽の信用」を作り、初めは安い利子で、途中から突然高い利子に替わる仕組みである)、サブプライムバブル爆発以前にさえ、その家も取り上げた上に借金漬けにしてその人々の一生をめちゃめちゃにしてきた。その一方で、自分らは見事に勝ち逃げしている。そしてなによりも、それを規制する力はどこにも育ち始めているようには見えないのである。そんな無法の数々が次々と明るみに出され始めたこの10年だったと言えるのだろう。
人間がこれを制御しうる時代が果たしてくるのだろうかと、そんな悩ましい思いにとらわれる。これほどの暴力は、それに対する反抗の暴力とそれへの弾圧をしか呼ばないのであって、その末に世界は滅びるのではないか。北アフリカに起こった事態や、今ギリシャやイタリアで起こっている事態やはその前触れではないのかと、そんな思いにもとらわれている。
Ver4 Vet5
1章 アメリカ経済 グローバリゼーションをどうとらえるか
2章 中国経済 日本・中国・アジア
3章 EU経済 アメリカ経済
4章 IT革命と現代世界経済 ヨーロッパ経済
5章 国際貿易の構造と理論 国際貿易の構造と基礎理論
6章 多国籍企業とM&A・国際提携 多国籍企業と直接投資
7章 WTOと世界通商システム 金融グローバリゼーション
8章 国際収支の理論と現実 国際収支と国際投資ポジション
9章 金融グローバリゼーション グローバリゼーションとWTO
10章 現代の国際通貨体制 国際通貨体制
11章 開発と援助 低開発と貧困削減
12章 貧困・飢餓・ジェンダー 一次産品と資源・食糧問題
13章 地球環境と資源問題 国際環境政策
14章 国際政治経済学で解く現代世界経済 人の移動とグローバリゼーション
東洋経済新報社の「現代世界経済をとらえる Ver4」という本を手に取り、読んできた。娘が大学院時代に使った本であって、Ver4とはその03年版で、A5版びっしりの300頁近い本なのに明らかなロングセラー。娘に聞いたら全国の大学経済学部の教科書として版を重ねてきた本だという。全14章に執筆者14人、全国14の国公私立大学14校のそうそうたる(らしい)専門家がそれぞれを執筆している。新版が出ていないかとネット検索してみたら10年にVer5が出ていて、その目次を読んでみた。この5版が本屋から届くのは来週の中頃、それまでの繋ぎにこんな作業も余興となろうかと気づいた。2つの版の目次の比較である。この比較から最も分かることがこれだろう。03年から10年までの世界経済について、経済学者たちが最も激しい変化をどこに観ているか、と。10年足らずで世界の経済問題がこんなにも変わる時代に我々が生きているということなのだ。
世界で最も強い連中が適切な世界法がないのを良いことにその力に任せて世界中を蹂躙してきたという、その足跡なのだ。通貨危機を、メキシコ、アジア、ロシア、ブラジル、トルコ、アルゼンチンなどと世界中に次々と引き起こして各国経済(の無数の人々の生活)に一大悲劇を作ってきた。そのくせ、ケイマンとかバ-ジンとかに籍を置いて税金を払わない。その成長期においてさえ、こんなに儲けていたのにである。
『これらのヘッジ・ファンドは全米で約500億ドルの資産を保有しているものとみられ、年間40~50%の利潤(配当率)をかせいでいるものもある』(有斐閣「現代国際金融論」2001年第4版338頁)
それのみか、彼らを中心とした「闇金融」の実態さえつかむことができないのである。99人以下の出資者から集めた金の運用ならば、どこにも報告しなくて良いということらしい。かてて加えて、オフバランス取引というのがある。大銀行にさえ許された、貸借対照表に記載する必要がない取引のことだ。だからこそ田中宇氏が彼らを闇金融と呼んだのだが、その金融総額は今や67兆ドル、世界の金融総額の約半分だという。「大きくて潰せない」し「責任追及もないだろう」などとばかりに破裂すると分かっているバブルとその破裂とを重ねてきた。何度も何度も。その最後には。低所得家庭に半ば騙すようにして家を買わせ(格付け会社も含めて「肥大しすぎたという意味で偽の信用」を作り、初めは安い利子で、途中から突然高い利子に替わる仕組みである)、サブプライムバブル爆発以前にさえ、その家も取り上げた上に借金漬けにしてその人々の一生をめちゃめちゃにしてきた。その一方で、自分らは見事に勝ち逃げしている。そしてなによりも、それを規制する力はどこにも育ち始めているようには見えないのである。そんな無法の数々が次々と明るみに出され始めたこの10年だったと言えるのだろう。
人間がこれを制御しうる時代が果たしてくるのだろうかと、そんな悩ましい思いにとらわれる。これほどの暴力は、それに対する反抗の暴力とそれへの弾圧をしか呼ばないのであって、その末に世界は滅びるのではないか。北アフリカに起こった事態や、今ギリシャやイタリアで起こっている事態やはその前触れではないのかと、そんな思いにもとらわれている。
Ver4 Vet5
1章 アメリカ経済 グローバリゼーションをどうとらえるか
2章 中国経済 日本・中国・アジア
3章 EU経済 アメリカ経済
4章 IT革命と現代世界経済 ヨーロッパ経済
5章 国際貿易の構造と理論 国際貿易の構造と基礎理論
6章 多国籍企業とM&A・国際提携 多国籍企業と直接投資
7章 WTOと世界通商システム 金融グローバリゼーション
8章 国際収支の理論と現実 国際収支と国際投資ポジション
9章 金融グローバリゼーション グローバリゼーションとWTO
10章 現代の国際通貨体制 国際通貨体制
11章 開発と援助 低開発と貧困削減
12章 貧困・飢餓・ジェンダー 一次産品と資源・食糧問題
13章 地球環境と資源問題 国際環境政策
14章 国際政治経済学で解く現代世界経済 人の移動とグローバリゼーション