さて、第3回から前回まで、70年代ポスト戦後世界以降の新自由主義的経済グローバル化の流れを観てきた。グローバリズムとはその思想のこと。実際に問題になるのは実体経済グローバル化の問題点であって、思想と実態は同じ物ではない。ちょうど市場主義と市場そのもののように。
ここ以降は表題の内容で、以下三つのことを紹介してみたい。つまり、こう進むつもりでいるということだ。①まず、ここまで観た世界経済経過の構造的まとめ。これは、過去の理論が格闘した問題提起をも借りつつ、今をまとめてみるということになろう。②次いで、100年に一度の大事件リーマンショックを通して、今この構造に世界でどんな論争が起こっているかということを観る。真っ向から対立するような論争だらけなのである。なお、こういう論争で次第に増えてきた意見、国連などで他方が譲歩してきた解決方向なども観ておきたい。そして最後に③、②も含めて具体的課題を全体的にできるだけ羅列しておき、終わりとしていきたい。すべていろんな該当本のつぎはぎのようなものだ。が、特に次の本は今ここでおすすめしたいと思う。
岩波ブックレット伊藤正直・東京大学大学院経済学研究科教授著「金融危機は再びやってくる 世界経済のメカニズム」。短いこの本が、題名のことについて重要な具体的事項をほとんど網羅していると、僕には思われた。僕が読んだ他の多くの本に書いてあることがほとんど入っているからだ。ただそれだけに、「広く浅く」ではなく「広く難しく」と言える。つまり、他の新書版2~3冊では到底すまないような広い事項に少ない分量で触れているから、説明が少なくなるということ。相当の予備知識がないと理解できない部分が多いということになる。ただ、金融危機の反省過程で国連レベルで起こっている論争とかその推移とかまでていねいに紹介されているのはとても公正なやり方でもあるし、自分でも考えを深め、まとめることも出来て、非常に有り難かった。この部分を紹介したくて上記②を書こうと思ったようなものである。
さて、①、現在の世界経済構造である。これを、過去のケインズやマルクスの経済構造把握理論との対比でどういうことになるのかについては、ここまで折に触れて観てきた。要は、新自由主義が、『需要側でなく供給側つまり資本の自由に任せるのが、官僚任せにも等しい、怪しげな「マル公」国家まかせに比べればまだ上手くいくのだ』というやり方である。だが、需要を重視したケインズなどに言わせれば当然こういうことになるだろう。現に有効需要がおおいに不足しているではないか。それで現物経済はどんどん小さくなり、そこでの利子率はどんどん下がってきて、失業者をいっぱい出しながらだぶついた資本はマネーゲームに明け暮れることになってしまったではないか。資本が膨大に余っているほどにこんな豊かな世界なのに非正規労働者が溢れ、死に物狂いで働かなければ正規職もつとまらない世界というのこそおかしなものだろう。このようにケインズを読むのが、今話題の本、NHK出版新書、高橋伸彰立命館大学教授著「ケインズはこう言った」などである。
基軸通貨ドルが変動相場制以降どんどん安くなって、世界がふらついているからマネーゲームが起こるのだが、いずれにしても、資本がモノ・実物経済から全く離れてしまったのは大問題である。この点は、金子勝とか浜矩子とかなんらか伝統を踏まえた経済学者のほとんどが指摘し、批判するところと思う。食料、水、エネルギー、地球環境など、人間はモノの中で生きるしかないのだから、確かにそうには違いないのだ。問題は、それらのモノがきちんと生産、確保されて、すべての人々に優しく行き渡る仕組みとして何が相応しいかということだろう。なのに食料は買い占められて世界のあちこちに反乱が起こるほどなのだし、中国の退耕還林政策は水問題で悪戦苦闘している有様だ。なお、金子勝のグリーンニューディール政策提起などなどのように、世界の実物経済の新分野で有効需要を切り開き、失業者などに普通の職を作っていくというように新たな道を開拓していくことに国家の命運をかけるべきだと語る論者も多い。少し前のオバマもそうだったし、イギリスの政治経済論者にもそういう人は多い。
また、先進国の失業、非正規労働者問題をこのように「弁護」する論議はある。
「ブリックス諸国など中進国のキャッチアップで、市場を奪われたのだ。そちらの生活が向上しているという側面を観ないといけない。ただこれも、キャッチアップが一応成し遂げられるまでの十年程度の延命策だろう。その後の世界は、有効需要不足問題から難問噴出となるだろう」(岩波ブックレット「グローバル資本主義と日本の選択」で武者陵司・武者リサーチ代表がこういう内容を語っている)
これに対して、もちろん「資本主義の命運がつきたのだ」と、新しく言い出した人も多い。上にも観た、NHK出版新書、高橋伸彰立命館大学教授著「ケインズはこう言った」のように。
ここ以降は表題の内容で、以下三つのことを紹介してみたい。つまり、こう進むつもりでいるということだ。①まず、ここまで観た世界経済経過の構造的まとめ。これは、過去の理論が格闘した問題提起をも借りつつ、今をまとめてみるということになろう。②次いで、100年に一度の大事件リーマンショックを通して、今この構造に世界でどんな論争が起こっているかということを観る。真っ向から対立するような論争だらけなのである。なお、こういう論争で次第に増えてきた意見、国連などで他方が譲歩してきた解決方向なども観ておきたい。そして最後に③、②も含めて具体的課題を全体的にできるだけ羅列しておき、終わりとしていきたい。すべていろんな該当本のつぎはぎのようなものだ。が、特に次の本は今ここでおすすめしたいと思う。
岩波ブックレット伊藤正直・東京大学大学院経済学研究科教授著「金融危機は再びやってくる 世界経済のメカニズム」。短いこの本が、題名のことについて重要な具体的事項をほとんど網羅していると、僕には思われた。僕が読んだ他の多くの本に書いてあることがほとんど入っているからだ。ただそれだけに、「広く浅く」ではなく「広く難しく」と言える。つまり、他の新書版2~3冊では到底すまないような広い事項に少ない分量で触れているから、説明が少なくなるということ。相当の予備知識がないと理解できない部分が多いということになる。ただ、金融危機の反省過程で国連レベルで起こっている論争とかその推移とかまでていねいに紹介されているのはとても公正なやり方でもあるし、自分でも考えを深め、まとめることも出来て、非常に有り難かった。この部分を紹介したくて上記②を書こうと思ったようなものである。
さて、①、現在の世界経済構造である。これを、過去のケインズやマルクスの経済構造把握理論との対比でどういうことになるのかについては、ここまで折に触れて観てきた。要は、新自由主義が、『需要側でなく供給側つまり資本の自由に任せるのが、官僚任せにも等しい、怪しげな「マル公」国家まかせに比べればまだ上手くいくのだ』というやり方である。だが、需要を重視したケインズなどに言わせれば当然こういうことになるだろう。現に有効需要がおおいに不足しているではないか。それで現物経済はどんどん小さくなり、そこでの利子率はどんどん下がってきて、失業者をいっぱい出しながらだぶついた資本はマネーゲームに明け暮れることになってしまったではないか。資本が膨大に余っているほどにこんな豊かな世界なのに非正規労働者が溢れ、死に物狂いで働かなければ正規職もつとまらない世界というのこそおかしなものだろう。このようにケインズを読むのが、今話題の本、NHK出版新書、高橋伸彰立命館大学教授著「ケインズはこう言った」などである。
基軸通貨ドルが変動相場制以降どんどん安くなって、世界がふらついているからマネーゲームが起こるのだが、いずれにしても、資本がモノ・実物経済から全く離れてしまったのは大問題である。この点は、金子勝とか浜矩子とかなんらか伝統を踏まえた経済学者のほとんどが指摘し、批判するところと思う。食料、水、エネルギー、地球環境など、人間はモノの中で生きるしかないのだから、確かにそうには違いないのだ。問題は、それらのモノがきちんと生産、確保されて、すべての人々に優しく行き渡る仕組みとして何が相応しいかということだろう。なのに食料は買い占められて世界のあちこちに反乱が起こるほどなのだし、中国の退耕還林政策は水問題で悪戦苦闘している有様だ。なお、金子勝のグリーンニューディール政策提起などなどのように、世界の実物経済の新分野で有効需要を切り開き、失業者などに普通の職を作っていくというように新たな道を開拓していくことに国家の命運をかけるべきだと語る論者も多い。少し前のオバマもそうだったし、イギリスの政治経済論者にもそういう人は多い。
また、先進国の失業、非正規労働者問題をこのように「弁護」する論議はある。
「ブリックス諸国など中進国のキャッチアップで、市場を奪われたのだ。そちらの生活が向上しているという側面を観ないといけない。ただこれも、キャッチアップが一応成し遂げられるまでの十年程度の延命策だろう。その後の世界は、有効需要不足問題から難問噴出となるだろう」(岩波ブックレット「グローバル資本主義と日本の選択」で武者陵司・武者リサーチ代表がこういう内容を語っている)
これに対して、もちろん「資本主義の命運がつきたのだ」と、新しく言い出した人も多い。上にも観た、NHK出版新書、高橋伸彰立命館大学教授著「ケインズはこう言った」のように。