自民、TBS取材拒否「国会報道の内容に問題」(2013.7.5 毎日新聞)
自民党は4日夜、TBSの報道内容が公平さを欠いているとして党幹部に対する取材や幹部の番組出演を当面、拒否すると発表した。6月の通常国会閉会に関する報道内容に問題があったとしている。参院選の選挙期間中に報道機関の取材を拒否するのは異例だ。
党総裁・幹事長室名の発表文によると、TBSの報道番組「NEWS23」は6月26日の放送で、国会会期末の与野党攻防の末に電気事業法改正案などが廃案となった経緯を報道した。番組には「廃案の責任が全て与党側あると視聴者に誤解させるような内容があった」と主張している。
TBS「残念」
TBS広報室は4日夜、「放送内容について、自民党から抗議を受けたことは残念です。引き続き、理解を得られるよう努力してまいります」とのコメントを発表した。
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報道機関はジャーナリズムの役割として、政冶の動向を監視し、必要なら批判を加えることが仕事です。自民党は「批判したことが怪しからん」と云っているわけです。
26日に国会が閉会し、発送電分離を含む電力システム改革を進める電気事業法改正案や生活保護法改正案、困窮者支援法案が審議未了で廃案となりました。これについて翌27日の新聞各紙は、「対決優先 法案置き去り」(朝日)、「与野党最後まで泥仕合 12法案・条約廃案」(毎日)、「首相問責可決、重要法案政局の犠牲」(読売)と重要法案が政局の犠牲で廃案になったと報じました。毎日新聞は、国会最終版での与野党対立は、参院第1党の民主党が、衆院小選挙区を「0増5減」する公職選挙法改正案の参院での採決を見送ったのが発端。反発した自民、公明両党は21日、平田参院議長への不信任案を提出し、首相ら政府側と与党は24、25両日の参院予算委員会を欠席した。これを今度は野党が「憲法違反」と談じ(首相・閣僚は国会が求めれば出席して質問に答えなければならない)、首相の問責決議案を提出。法案審議そっちのけで、与野党の駆け引きばかりがエスカレートしたと解説しました。
国会の運営については与野党ともに責任を負っていますが、とりわけ政権党により重い責任が問われます。ジャーナリズムの批判もそのことを前提として、政府・与党により厳しくなるのは
当然です。それを与党だけ批判するのは怪しからんと取材拒否するのは筋道を間違えています。
一方、TBSの対応も情けないと思います。自民党の取材拒否には、ジャーナリズムとして抗議すべきです。それなのに「理解を得られるよう努力する」というのでは、ジャーナリズムが政権党の軍門に下ることになります。毎日新聞には「政党は公の場で堂々と反論すればいい。出演拒否は免許事業の放送局には圧力と受け取られ、報道や表現の自由を萎縮させかねない。為政者のすることではない」という大石泰彦青山学院大学教授(メディア倫理)のコメントも紹介されていました。
大西 五郎