制御できていない 汚染水問題猪瀬都知事が認識(2013.9.21 中日新聞)
東京都の猪瀬直樹知事は二十日の記者会見で、東京電力福島第一原発の汚染水漏れについて「今、必ずしもアンダーコントロールではない」と述べ、制御できていないとの認識を示した。
安倍晋三首相は二〇二〇年夏季五輪の東京開催を決めた国際オリンピック委員会(IOC)総会で「状況はコントロールされている」と演説した。
これに対し、猪瀬知事は「アンダーコントロールする、なるんだと(首相が)意思表明したことが大事。本当の解決にこれから向かわないといけない」と話した。
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これは詭弁と云っていい話ですね。安倍首相の「アンダーコントロール発言」が実態と違っているという指摘が各方面から出され、東電の山下和彦フェローも13日に福島県郡山市で開かれた民主党の原発問題の会合で「汚染水は制御下にない」と説明しています。猪瀬知事はプレゼンテーションに同席した責任から「安倍首相がウソをついたんではない」と弁護する必要を感じたのでしょう。
安倍首相は19日に福島第一原発の現場を視察しました。そこで初めて原発港湾の前に立って、自分が「汚染水が留まっている」と云った0.3平方kmがどの範囲かと東電関係者に尋ねている様子をテレビのニュースが伝えていました。20日の中日新聞によりますと、首相は視察後、記者団に汚染水問題の現状について「影響は港湾内の0.3平方kmの範囲内で完全にブロックされている」と従来の説明を繰り返したそうです。
きょう(21日)の朝日新聞の社説は「首相と汚染水 正しい現状認識で臨め」として「『コントロールする』『完全ブロックする』という目標と、『コントロールされている』『完全にブロックされている』という現状認識との混同を危惧している。どれほどの汚染水が地下のどこを通って海に出ているのか。推定しかできない現状は『コントロール』にほど遠い」と戒めています。
また安倍首相は視察の後、第一原発の敷地内にあって停止中の6号機と7号機の廃炉を「事故対処に集中するためにも廃炉を決定してもらいたい」と、東京電力の広瀬社長に要請。広瀬社長は「年内に判断する」と回答したそうですが、この廃炉要請についてきょうの毎日新聞社説は「パフォーマンスは無責任」と次のように指弾しています。「原発事故の実情を考えれば廃炉自体は当然のことだ。遅すぎる決断と言ってもいい。しかし、この時点で廃炉要請する意味については疑問が大きい。政府が今、緊急に取り組むべき課題は、汚染水対策や短期的な事故処理である。ところが今回の廃炉要請がどうプラスに働くのか、見えてこない。今回の廃炉要請は困難な現状から目をそらすためのパフォーマンスと疑わざるを得ない。」
安倍首相は原発事故に対して「国が前面に出て、私が責任者として対応する」と強調し、危機に敢然と立ち向かう指揮官を演出しようとしていますが、本当の指揮官は勇ましい決意を述べるのではなく、現状を在りのままに国民に示して、一緒になって解決を呼び掛けるべきなのです。
大西 五郎
東京都の猪瀬直樹知事は二十日の記者会見で、東京電力福島第一原発の汚染水漏れについて「今、必ずしもアンダーコントロールではない」と述べ、制御できていないとの認識を示した。
安倍晋三首相は二〇二〇年夏季五輪の東京開催を決めた国際オリンピック委員会(IOC)総会で「状況はコントロールされている」と演説した。
これに対し、猪瀬知事は「アンダーコントロールする、なるんだと(首相が)意思表明したことが大事。本当の解決にこれから向かわないといけない」と話した。
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これは詭弁と云っていい話ですね。安倍首相の「アンダーコントロール発言」が実態と違っているという指摘が各方面から出され、東電の山下和彦フェローも13日に福島県郡山市で開かれた民主党の原発問題の会合で「汚染水は制御下にない」と説明しています。猪瀬知事はプレゼンテーションに同席した責任から「安倍首相がウソをついたんではない」と弁護する必要を感じたのでしょう。
安倍首相は19日に福島第一原発の現場を視察しました。そこで初めて原発港湾の前に立って、自分が「汚染水が留まっている」と云った0.3平方kmがどの範囲かと東電関係者に尋ねている様子をテレビのニュースが伝えていました。20日の中日新聞によりますと、首相は視察後、記者団に汚染水問題の現状について「影響は港湾内の0.3平方kmの範囲内で完全にブロックされている」と従来の説明を繰り返したそうです。
きょう(21日)の朝日新聞の社説は「首相と汚染水 正しい現状認識で臨め」として「『コントロールする』『完全ブロックする』という目標と、『コントロールされている』『完全にブロックされている』という現状認識との混同を危惧している。どれほどの汚染水が地下のどこを通って海に出ているのか。推定しかできない現状は『コントロール』にほど遠い」と戒めています。
また安倍首相は視察の後、第一原発の敷地内にあって停止中の6号機と7号機の廃炉を「事故対処に集中するためにも廃炉を決定してもらいたい」と、東京電力の広瀬社長に要請。広瀬社長は「年内に判断する」と回答したそうですが、この廃炉要請についてきょうの毎日新聞社説は「パフォーマンスは無責任」と次のように指弾しています。「原発事故の実情を考えれば廃炉自体は当然のことだ。遅すぎる決断と言ってもいい。しかし、この時点で廃炉要請する意味については疑問が大きい。政府が今、緊急に取り組むべき課題は、汚染水対策や短期的な事故処理である。ところが今回の廃炉要請がどうプラスに働くのか、見えてこない。今回の廃炉要請は困難な現状から目をそらすためのパフォーマンスと疑わざるを得ない。」
安倍首相は原発事故に対して「国が前面に出て、私が責任者として対応する」と強調し、危機に敢然と立ち向かう指揮官を演出しようとしていますが、本当の指揮官は勇ましい決意を述べるのではなく、現状を在りのままに国民に示して、一緒になって解決を呼び掛けるべきなのです。
大西 五郎