条約違反の疑い 秘密保護法案 (朝日新聞への熊野勝之弁護士投書)
安倍政権は特定秘密保護法案に知る権利や取材の自由への配慮を盛り込んだが、「配慮」は権利の保障ではない。1979年、日本政府が批准した「市民的及び政治的権利に関する国際規約」を思い起こして頂きたい。全ての人が「あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由」(19条2項)を権利として保障する条約で、締約国は守る義務がある。条約は国内法より優先される。「配慮」を入れようとも依然として法案はこの条約に反するのだ。
法案では内閣が承認すれば30年を超えても秘密は開示されず、闇に葬られる。また、秘密の指定は行政機関の長が行うと定めるだけで、指定基準を法律で定めていない。
条約は締約国が権利を制限する場合、その制限は法律の尊重、国の安全などに必要とされるものに限るとしている。さらに「法律は、制限の実施にあたる者に対して自由裁量を与えるものであってはならない」「十分な指針を定めていなければならない」という解釈基準も示している。法案が成立し公務員やジャーナリスト、市民が逮捕・起訴されても、憲法31条(法の手続き保障)違反で無罪となる可能性がある。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この「市民的及び政治的権利に関する国際規約」は、1948年の世界人権宣言採択後から国連人権委員会で起草が進められ、1966年12月の国連本会議で採択されました。発効には35カ国の批准が必要とされていましたが、その要件を満たして1976年3月に発効したものです。投書にもあるように日本政府も1978年に批准しています。この規約は民族自決権を保障し、国家に対する人民の自由権(人権)を明確に述べており、国際自由権規約とも呼ばれています。
人民が国の政冶の方向を決めるための具体的権利として「知る権利」「自由に意見交換する権利」を保障するために、投書でも指摘しているように
「1.すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
2.すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
3.2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴なう。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課すことができる。
ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
(a)他の者の権利又は信用の尊重
(b)国の安全、公の秩序または公衆の健康若しくは道徳の保護(第19条)」という規定を設けています。
政府は「国の安全のために情報の秘匿が必要」と主張していますが、法案では「何が秘匿すべき情報かは各省庁の大臣が決める」となっており、法律によって具体的にどのような情報であるのかは定められていません。国民から法の実施にさまざまな疑問も出されています。
5日朝のNHKニュースは「与党側は7日に衆議院で審議に入り、今月中旬には参議院に送って成立させたいとしている」と伝えていました。政府・与党は数の力で強行突破しようとしていますが、自由権規約との関係も慎重に審議し、国民の疑問に応えなければなりません。
大西 五郎
安倍政権は特定秘密保護法案に知る権利や取材の自由への配慮を盛り込んだが、「配慮」は権利の保障ではない。1979年、日本政府が批准した「市民的及び政治的権利に関する国際規約」を思い起こして頂きたい。全ての人が「あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由」(19条2項)を権利として保障する条約で、締約国は守る義務がある。条約は国内法より優先される。「配慮」を入れようとも依然として法案はこの条約に反するのだ。
法案では内閣が承認すれば30年を超えても秘密は開示されず、闇に葬られる。また、秘密の指定は行政機関の長が行うと定めるだけで、指定基準を法律で定めていない。
条約は締約国が権利を制限する場合、その制限は法律の尊重、国の安全などに必要とされるものに限るとしている。さらに「法律は、制限の実施にあたる者に対して自由裁量を与えるものであってはならない」「十分な指針を定めていなければならない」という解釈基準も示している。法案が成立し公務員やジャーナリスト、市民が逮捕・起訴されても、憲法31条(法の手続き保障)違反で無罪となる可能性がある。
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この「市民的及び政治的権利に関する国際規約」は、1948年の世界人権宣言採択後から国連人権委員会で起草が進められ、1966年12月の国連本会議で採択されました。発効には35カ国の批准が必要とされていましたが、その要件を満たして1976年3月に発効したものです。投書にもあるように日本政府も1978年に批准しています。この規約は民族自決権を保障し、国家に対する人民の自由権(人権)を明確に述べており、国際自由権規約とも呼ばれています。
人民が国の政冶の方向を決めるための具体的権利として「知る権利」「自由に意見交換する権利」を保障するために、投書でも指摘しているように
「1.すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
2.すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
3.2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴なう。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課すことができる。
ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
(a)他の者の権利又は信用の尊重
(b)国の安全、公の秩序または公衆の健康若しくは道徳の保護(第19条)」という規定を設けています。
政府は「国の安全のために情報の秘匿が必要」と主張していますが、法案では「何が秘匿すべき情報かは各省庁の大臣が決める」となっており、法律によって具体的にどのような情報であるのかは定められていません。国民から法の実施にさまざまな疑問も出されています。
5日朝のNHKニュースは「与党側は7日に衆議院で審議に入り、今月中旬には参議院に送って成立させたいとしている」と伝えていました。政府・与党は数の力で強行突破しようとしていますが、自由権規約との関係も慎重に審議し、国民の疑問に応えなければなりません。
大西 五郎