この拙稿は「ギリシャ財政危機と金融 2016年10月14日」の姉妹編に当たります。岩波新書、進藤榮一著「アジア力の世紀」からの引用です。今の国際金融の暗躍、政治との結びつき、その世界大諸影響の凄まじいまでの大きさを示しています。同書の202~203ページから引用します。
『 金融危機が海を越えて伝播する構造は、〇七年夏にフランス最大手銀行BNPパリバのローン凍結ショックが、米国サブプライム・ローン危機の発端となつて、〇八年九月のリーマン・ショックにつながったことにも象徴される。
BNPパリバは、傘下のファンドを通じて、米国金融機関の発行する低所得者向けサブプライム・ローンを大量に購入し、そのローンが支払不能に陥り、解約を凍結した。そのニュースが金融市場を駆け巡って市場は混乱し、〇八年九月一五日、全米四位の投資銀行リーマンプラザーズ社が破綻、金融危機が勃発した。のち、全米一位のゴールドマンサックス社と二位のモルガンスタンレー社は、銀行持ち株会社に業務転換し、五大投資銀行すべてが姿を消すことになる。
その間、欧州の金融機関が、米国製の証券化商品を大量に買い込んでいることが明らかになり、欧州金融機関の信認が揺らぎ始めたのだった。そして〇九年一〇月、ギリシャ政府の債務残高隠しの発覚をきっかけに、ユーロの信認が一挙に失われて、危機は欧州の大手金融機関に及んだ。
EUは〇三年、ユーロ加盟の条件として、財政赤字がGDP比三%以内、政府債務残高がGDP比六〇%以内にあることを定めていた。ギリシャは、ユーロ圏に加盟するために、紛飾決算まがいの手法を使って、財政赤字も累積債務も実態より低く報告していたことが判明した。その報告書に、ゴールドマンサックス社が関与していた。かつて八七年夏に始まるアジア通貨危機の陰で、米国のヘッジファンドが暗躍していたように、ギリシャ危機の背後に、米国のファンドと財務省が暗躍していると噂された。米国が金融危機回避のため、欧州に仕掛けた危機だとも、時に位置付けられる。
(中略)
米国発金融危機が、リーマン・ショックを経て欧州債務危機へと転形し拡大したのである。危機はギリシャからアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアへ波及した。メディアはそれら諸国の頭文字を取って、豚を連想させる「PIIGS(ビッグス)」と呼び、EUとユーロの脆弱さを侮蔑気味に指摘して、EUの分裂・解体を予測した。』
さて、以下の言及は文中のこの部分に関わります。
『ギリシャは、ユーロ圏に加盟するために、紛飾決算まがいの手法を使って、財政赤字も累積債務も実態より低く報告していたことが判明した。その報告書に、ゴールドマンサックス社が関与していた。・・・・・ギリシャ危機の背後に、米国のファンドと財務省が暗躍していると噂された。米国が金融危機回避のため、欧州に仕掛けた危機だとも、時に位置付けられる』
米国の「金融危機回避」のために欧州に仕掛けたギリシャの「粉飾決算まがいの手法」とは何か。デリバティブ、金融派生商品はまさにこの粉飾決算にこそ使いうる物。そのことを示した拙稿が当ブログに存在します。
〇七年一月二一日拙稿「日本財界が1週間に七五〇〇万ドルをパクられた話」がそれ。元モルガン・スタンレーのトレーダー、フランク・パートノイが実体験を書いた「フィアスコ」という本の内容紹介です。AAAの格付けが付いたデリバティブを売って時価計上で決算書に載せると、何割高かの粉飾決算ができることになっているという、そのことが書いてある興味深い本です。
「シンガポール発、英国ベアリングズ社のデリバティブ大穴によって損失を被ったのが日本大企業だと分かったときの喜び! 四月決算を控えて、デリバティブがさー無数に売れるぞ! 我々は今まで、死に物狂いに金が欲しい人々をこそ、最上の顧客にしてきた!」
世が不景気で荒れるほど、投資銀行の出番という訳なんです。
それにしても、このギリシャ危機をユーロ瓦解に結びつけようとして、これでさらにドイツマルクの空売りにまで折を見ては度々結びつけていくというゴールドマン、アメリカ財務省の大仕掛け! その凄まじさには身震いが出ます。そして著者はこの一〇〇年に1度のリーマンショックが、「一九二九年世界大恐慌から世界大戦へ」とならなかった今回の事情までを、こう説明している。「大欧州」と「新興国市場」がショックアブソーバーとして働いたからだ、と。世界の有効需要創出こそ争いを協調に転化する最大の鍵とは、正にケインズ経済学の焦点。現在世界のマクロ経済問題解決方向を深く考える最大のヒントがここにあると読むのは、この著者や僕だけではないはずです。
なおまた、こういう米国自らが作ったという事情もあるのに、いくつかの南欧諸国などを日米などが「PIIGS(ビッグス)」と呼ぶのを聞くと、何とも複雑な、嫌な気分になります。自らが貶めた人々を「ブタ」と嘲笑っている、この感覚! ここにこそ、世界の暗い現実の全てが存在しているようで・・・。
『 金融危機が海を越えて伝播する構造は、〇七年夏にフランス最大手銀行BNPパリバのローン凍結ショックが、米国サブプライム・ローン危機の発端となつて、〇八年九月のリーマン・ショックにつながったことにも象徴される。
BNPパリバは、傘下のファンドを通じて、米国金融機関の発行する低所得者向けサブプライム・ローンを大量に購入し、そのローンが支払不能に陥り、解約を凍結した。そのニュースが金融市場を駆け巡って市場は混乱し、〇八年九月一五日、全米四位の投資銀行リーマンプラザーズ社が破綻、金融危機が勃発した。のち、全米一位のゴールドマンサックス社と二位のモルガンスタンレー社は、銀行持ち株会社に業務転換し、五大投資銀行すべてが姿を消すことになる。
その間、欧州の金融機関が、米国製の証券化商品を大量に買い込んでいることが明らかになり、欧州金融機関の信認が揺らぎ始めたのだった。そして〇九年一〇月、ギリシャ政府の債務残高隠しの発覚をきっかけに、ユーロの信認が一挙に失われて、危機は欧州の大手金融機関に及んだ。
EUは〇三年、ユーロ加盟の条件として、財政赤字がGDP比三%以内、政府債務残高がGDP比六〇%以内にあることを定めていた。ギリシャは、ユーロ圏に加盟するために、紛飾決算まがいの手法を使って、財政赤字も累積債務も実態より低く報告していたことが判明した。その報告書に、ゴールドマンサックス社が関与していた。かつて八七年夏に始まるアジア通貨危機の陰で、米国のヘッジファンドが暗躍していたように、ギリシャ危機の背後に、米国のファンドと財務省が暗躍していると噂された。米国が金融危機回避のため、欧州に仕掛けた危機だとも、時に位置付けられる。
(中略)
米国発金融危機が、リーマン・ショックを経て欧州債務危機へと転形し拡大したのである。危機はギリシャからアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアへ波及した。メディアはそれら諸国の頭文字を取って、豚を連想させる「PIIGS(ビッグス)」と呼び、EUとユーロの脆弱さを侮蔑気味に指摘して、EUの分裂・解体を予測した。』
さて、以下の言及は文中のこの部分に関わります。
『ギリシャは、ユーロ圏に加盟するために、紛飾決算まがいの手法を使って、財政赤字も累積債務も実態より低く報告していたことが判明した。その報告書に、ゴールドマンサックス社が関与していた。・・・・・ギリシャ危機の背後に、米国のファンドと財務省が暗躍していると噂された。米国が金融危機回避のため、欧州に仕掛けた危機だとも、時に位置付けられる』
米国の「金融危機回避」のために欧州に仕掛けたギリシャの「粉飾決算まがいの手法」とは何か。デリバティブ、金融派生商品はまさにこの粉飾決算にこそ使いうる物。そのことを示した拙稿が当ブログに存在します。
〇七年一月二一日拙稿「日本財界が1週間に七五〇〇万ドルをパクられた話」がそれ。元モルガン・スタンレーのトレーダー、フランク・パートノイが実体験を書いた「フィアスコ」という本の内容紹介です。AAAの格付けが付いたデリバティブを売って時価計上で決算書に載せると、何割高かの粉飾決算ができることになっているという、そのことが書いてある興味深い本です。
「シンガポール発、英国ベアリングズ社のデリバティブ大穴によって損失を被ったのが日本大企業だと分かったときの喜び! 四月決算を控えて、デリバティブがさー無数に売れるぞ! 我々は今まで、死に物狂いに金が欲しい人々をこそ、最上の顧客にしてきた!」
世が不景気で荒れるほど、投資銀行の出番という訳なんです。
それにしても、このギリシャ危機をユーロ瓦解に結びつけようとして、これでさらにドイツマルクの空売りにまで折を見ては度々結びつけていくというゴールドマン、アメリカ財務省の大仕掛け! その凄まじさには身震いが出ます。そして著者はこの一〇〇年に1度のリーマンショックが、「一九二九年世界大恐慌から世界大戦へ」とならなかった今回の事情までを、こう説明している。「大欧州」と「新興国市場」がショックアブソーバーとして働いたからだ、と。世界の有効需要創出こそ争いを協調に転化する最大の鍵とは、正にケインズ経済学の焦点。現在世界のマクロ経済問題解決方向を深く考える最大のヒントがここにあると読むのは、この著者や僕だけではないはずです。
なおまた、こういう米国自らが作ったという事情もあるのに、いくつかの南欧諸国などを日米などが「PIIGS(ビッグス)」と呼ぶのを聞くと、何とも複雑な、嫌な気分になります。自らが貶めた人々を「ブタ」と嘲笑っている、この感覚! ここにこそ、世界の暗い現実の全てが存在しているようで・・・。