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「株屋はヤバイ」という訳(その2)    文科系

2016年11月15日 12時27分33秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
「株屋はヤバイ」という訳ーー国際金融暴力の手口(その2)


3 デリバティブ、金融派生商品

 次に、種々の金融派生商品の発明、売買というやり方がある。デリバティブという近ごろよく聞く言葉がこれだ。その大元の原理だけに触れておきたい。
 消費者ローンでも住宅ローンでも、借用証書がある。これは、借りた方が貸した方に出す証明書。これを債券として出すのが社債や国債。一定利子が付くのは同じだが、こちらはお金同様の意味を持ち、売買も可能なもの。
 そしてさて、この社債などと同じ考え方で、種々のローンの貸し主が借用証書(債権)を証券化したものが金融派生商品の元である。いわば、「誰か、貸し主を代わってくれ」ということ。焦げ付きなどの危険が高い借金から出来た高リスク債券とか、低リスク債券でも元のローン返済が急に怪しげになったりしたら、利子を高くしなければ売れない。低リスク商品は、まー貯金しているようなものだ。ここからの最大問題は、このこと。高リスク商品は当然売りにくいのだが、首尾良くどんどん売れていくようにできれば、儲けが凄いことになる。そこで、ハーバード大学院の数学科主席卒業というような優秀な頭脳が、高リスク商品を大々的に売れるようにする手をあれこれと考え出していくことになる。

4 サブプライムローン組込証券

 この証券化商品というのはまた、色々に分割して組み合わせることができる。これは、1銘柄の株を買うのではなく、投資信託を買うようなものと言えばよいだろう。とにかく、様々な負債を組み合わせるのだが、そこに高リスク債券を巧みに切り分けてもぐり込ませていく。貯金ゼロの低所得者に売りつけた住宅ローンからできたサブプライム・ローンの債券でも、これに安全な債券を組み合わせれば信用が「保証された」証券ができあがるという理屈だ。「高リスク貸し金を分散することによって、お金が貸せなかった貧乏な人にも貸し出せるようにしたことにより家を持って頂けたという、夢のような商品!」なのである。リーマンショックの前のサブプライム・バブル期には、これが爆発的に売れた。ネズミ講同様大いに売れている間は自転車操業的資金繰りに困るどころか、大いに儲けも上がったのである。「偽の信用がどんどん膨らんでいった」のだが、その急成長中に偽だとは誰も振る舞っていないから問題なのである。

5 CDS

 こんなサブプライム・ローン債権組込証券に格付け会社が破綻直前までトリプルAの信用が付いていた。それにはこんな保険商品も懸けられていて、これが大宣伝されたことが関わっている。クレディット・デフォルト・スワップ(CDS)と呼ばれた保険商品である。
『企業ばかりではない。国家もそうである。ギリシャの金融危機が深刻化したのはギリシャ国債の空売りに加えて、新契約の裸のCDSの掛け金がどんどん上がってギリシャ政府が発行する新国債の利子率が急騰したためである。ドイツなどはその裸のCDSの取引を禁じているのだが、そういう取引を歓迎する金融センターが世界中にたくさん残っている』(ドナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書 2012年6月第5版)  
 裸のCDSに、著者はこんな易しい比喩的説明を付ける。
『保険法だったら、隣の家に黙ってその家に火災保険をかけることは禁じられている。全く当然だ。放火罪奨励はとんでもないことだからである。しかし社債のCDSの場合、国によっては、そのとんでもないことがまかり通る』
 こうして、この「裸のCDS」ゆえに、こんなことが無数に起こった。火災保険が掛けられた家の持ち主でない人々が、この家を燃やして保険金を貰うに等しい行動を密かに始めるのだ。そのために、安い掛け金の同じ家の別番号CDS保険を無数に買い集め始めるのと同様の行動とか。ちなみに、これが家でなくて社債の保険であるならば、間違いなくその会社を潰していくことになる。安い掛け率の保険が買い占められたら、新たな社債を発行しようにも利子率が高くないと誰もこれを買ってくれない。よってこの会社はもう、会社存続のための新たな借金もできなくなる理屈である。
このCDSを、有名な投資家ジョージ・ソロスが「大量破壊兵器」と語って、こんな紹介をしている。
『ゼネラル・モータースなどの倒産を考えよ。その社債の持ち主の多くにとって、GMの再編より、倒産した場合の儲けの方が大きかった。人の生命がかかった保険の持ち主に、同時にその人を打ちのめす免許を持たせるようなものだ』(前掲書)
「(会社再建よりも)打ちのめした方が儲かる」CDSの実際が、投資銀行リーマン・ブラザースの倒産でも示された。倒産時のリーマン社債発行残高は1559億ドル。その社債へのCDS発行銀行の債務総額は4000億ドル。社債を実際に持っている者の保険というよりも、単なるギャンブルとしての保険が2・5倍だったのだ。リーマンが潰れることにお金をかけたギャンブラーというだけの人々の保険額が、実際のその社債全額分の保険の150%も多かったのである。

(終わり)
コメント (2)
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