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「殺人は劇的に減った」と人類史学者ら   文科系

2016年11月02日 15時57分07秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
「人間史に戦争は無くならない」というのが誤った俗論であると、ここで何回も批判してきた。明治期の東大総長・加藤弘之の社会ダーウィニズムも既に誤りだとされたのに、入れ替わりここを訪れる右の方々が同様の俗論を未だにどんどん主張してくるからだ。
「動物は争う。人間も動物だから争う。国家社会もこれと同じで、戦争は無くならない」という俗論である。
 
 最近の週刊朝日に、東京大学薬学部教授にして脳研究家とある池谷裕二氏が、期せずして社会ダーウィニズム批判になる文章を書いている。その見事な文章を要約という形で、今回の反論としてみたい。
 今回彼が紹介しているのは、世界的科学雑誌「ネイチャー」に発表されたスペインのある博士らの論文である。

『博士らは哺乳類137科に属する全1024腫の生物について、400万件以上の個体の死因を調べました。これは哺乳類の80%の科をカバーしています』
『調査の結果、哺乳類が(同種の)仲間に殺される割合は0.3%でした。300匹のうち平均1匹が同種によって殺されていることになります。肉食獣は草食動物よりも凶暴性が高いのですが、その差はヒトに比べればごくわずかでした。ヒトの凶暴性はなんと2%と推測されたのです。ヒトは平均的な哺乳類よりも6倍も凶暴だったのです。これほど同種を殺し合うのは哺乳類としては異常なことです。
 ところが慎重に調べを勧めてみると、意外な真実が見えてきました。チンパンジーやオランウータン、もしくはその祖先でも同種殺害率は1.8%と高かったのです。つまり、異常な凶暴性は、高等な霊長類に広く共通した現象なのです』

 とここまでは、右の方々が大いに喜びそうな下り。が、ここからの250万年人類史の最近の下りこそ、この論文の真骨頂なのである。

『石器時代以降の全250万年の考古学的証拠を丹念に調べたところ、狩猟採集の時代の殺人はおおむね個人的な動機に基づく小規模な諍いが大半だったのです。ヒトが大規模な抗争を始めたのは、定住を始めた1万年前以降です』

 そして何よりも『現代社会では同種殺害率は0.01%と著しく低い』と展開され、その理由がこう述べられていきます。
『もちろん私たち人類は、自身に潜む異常な凶暴性を自覚しています。だからこそ、刑法や懲役という公的制度を設け、警察や裁判官という社会的監視者を置くことで、内なる衝動を自ら封じる努力をしてきました。国際的には国連やPKOがあります』

『ヒト本来の数値である2%に比べて200分の1、哺乳類の平均0.3%に比べても30分の1のレベルに収まっています。
 公的制度によって自他を抑圧する「社会力」は、ヒトをヒトたらしめる素です』

 さて、著者がこの社会力で今最も期待しているのが、『国際的には国連やPKOがあります』なのだろう。ここが僕と同じであってとても嬉しかった。また、長い人類史で20世紀になって初めて出来たこの国際平和組織、国連という「社会力」のことをほとんど語らないのが、右の方々の戦争論の最大特徴だとは、ここでも度々確認してきたことである。


 なお、以下は私見だが、以上の人類同族殺害史は、我々の一般的歴史認識にも一致している。
『大規模な抗争を始めたのは、定住を始めた1万年前以降です』とは、奴隷制度が始まった時代を最も古く観た場合に合致している。当時以降の富の源泉である奴隷狩り(戦争)が大々的に行われ始めたということなのだ。『現代社会では同種殺害率は0.01%と著しく低い』のが「社会力」の増進によるというのは、基本的人権思想や、20世紀になって生まれた国連など世界平和組織やの発展によるものである。
コメント (9)
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