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「100年に1度の危機」とは何だったのか(2) 文科系

2016年11月27日 07時20分31秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 第1章 金融グローバリゼーションの生成と発展

 第1節 その生成

 まず、金融グローバリゼーションの誕生経過だが、「ポスト戦後社会」から始めよう。この名称による時代区分は歴史学に基づき、70年代半ばを境とする。岩波新書「日本近現代史10巻シリーズ」の第9「ポスト戦後社会」(09年刊)によれば、こういう特徴で始まるとか、逆にこういう特徴をポスト戦後とするということだ。
「世界秩序」は、冷戦からポスト冷戦へ。「国家体制」は、福祉国家から新自由主義へ。最後に「歴史的潮流」は、高度経済成長からグローバリゼーションへと。以下の拙稿を70年代から始めるのも、そういう歴史学的時代区分を意識してのことだ。さて、そう狙いを定めた上で、以降40年ほどの世界経済の流れを概観しよう。

 71年にいわゆるニクソンショックが起こった。金本位体制を崩して、世界的に変動相場制へと移行した措置である。直後には対円などでドルが世界的に値下がりし、他方、73年原油価格暴騰が起こる。その直後に、戦後世界経済理論を最も騒がせたスタグフレーションという経済現象が強調された。「景気の停滞下で物価上昇が続く」、「物価上昇と失業率の上昇とは併存しない」などという当時までの世界政治経済理論・ケインズ経済学では説明できない現象と言われたものだ。つまり、ケインズ的経済学、政策の破綻というわけである。ここから、「自由競争に任せるのが最も合理的だ」という新自由主義経済運営として、有名な英国サッチャリズムが79年に、米国レーガノミックスは81年に始まっている。今顧みれば、新自由主義経済その後の隆盛が08年にリーマンショックという形で100年に一度どころではない大破綻を来したその出発点がここにあったわけだ。

 80年代は、「アジアの時代」とかジャパンマネーの時代というのが定説である。79年の経済協力開発機構(OECD)レポートで初めてアジアが注目され、以下10国が新興工業国「NICS」と呼ばれた。韓国、台湾、香港、シンガポール、ブラジル、メキシコ、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、ユーゴスラビアである。80年代に入るとこのうち南欧や南米が落ちて、アジアNICSだけが急成長を続ける。上のアジア4国に続いて80年代後半からはタイ、マレーシア、インドネシアが仲間に入った。以上の80年代動向は同時に、アジア唯一の先進国・日本が「アメリカ」をも買いあさった「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代とも重なる。

 第2節 民間資金の世界席巻と通貨危機

 90年前後に起こった社会主義国崩壊から以降、民間資金が各国に流入して、猛威をふるい始める。これまでの開発途上国などへの資金流入は社会主義国と張り合うように公的資金が主だったが、90年代はそれが急逆転していく。それにともなって各国に通貨危機が連続して発生する。94年メキシコ、97年東アジア、98年ロシア、99年ブラジル、01年にはトルコとアルゼンチンなどだ。いずれの国も、短期資金の突然の流出で資本収支の赤字から困窮しつくすという特徴を示した。ちなみに98年世界決済銀行(BIS)の43カ国調査にこんな数字がある。市場為替取引高は1日平均1・5兆ドルで年間500兆ドル。95~6年の年間世界貿易高5兆ドルの100倍、もの凄い数字だ。マネーゲームとか「カネがモノから離れ始めた」と指摘され始めた。

 1970年代初頭の金本位制、固定相場制崩壊以降、小さなバブルとその破裂は無数に起こっている。IMF(国際通貨基金)の08年調査によればこのように。
『1970年から2007年までの38年間に、208カ国で通貨危機が、124カ国で銀行危機が、63カ国で国家債務危機が発生しています。金融危機は、先進国、新興工業国、開発途上国を問わず、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカを問わず起こっていたのです。これに対し、第二次大戦後1970年以前の時期には、国際金融危機や大規模な一国金融危機はほとんど発生していません』(12年刊 伊藤正直・東京大学大学院経済学研究科教授「金融危機は再びやってくる」)
 日本の銀行協会の会長さんが2011年にこんなことを語ったことがある。
「不景気で、どこに投資しても儲からないし、良い貸出先もない。だから必然、国債売買に走ることになる。今はこれで繋いでいくしかない状況である」。
 ギリシャなどの国家財政危機を作っているのは、普通の銀行なのである。こんな状況で円安・金融緩和に走っても実体経済や求人関連には悪影響しかなく、バブル形成に使われるだけなのだ。要は、それ以外の投資先そのものがないのである。

 また、08年のような史上かってなく大きなバブル崩壊について、必ず起こると予言もされてきた。マクロ経済学者からはもちろん、例えば、数学者である藤原正彦・お茶の水女子大学教授は「国家の品格」(06年4月第24刷)でこう予言していた。
『新聞等ではなぜかあまり騒がれておりませんが、このデリバティブ(金融派生商品と訳される)の残高が、国際決済銀行の発表によると2004年時点で1兆円の二万五千倍と言われています。二万五千兆円ですね。わずか三年前の残高の2・2倍です。ここ10年では25倍という恐るべき急増です。多分、京(きよう)だか京(けい)だか知りませんが、2京五千兆とでも言うのでしょう。(中略) 銀行やヘッジファンドはデリバティブの主役ですから、大規模デリバティブが一つでも破綻すると、その瞬間に資金の流れが止まり、連鎖的に決済不能に陥ります。(中略)いつ世界経済をメチャクチャにするのか、息をひそめて見守らねばならないものになっています。しかもなぜか、これに強力な規制を入れることも出来ない。そもそもマスコミはこれに触れることすら遠慮している』
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