朝日新聞2月7日に表題のコラムが紹介されてあった。ニューヨーク・タイムズ1月18日付け電子版に載った2000字を超える相当長いコラムニスト記事である。僕なりに学んできた今のアメリカについて「なるほど、さもあろう!」と読んだこの内容を、記事中に挙げられたいくつかの数字などから紹介してみたい。なお、以下の『 』は、記事そのものの文章である事を示している
① 『彼らのような労働者階級の男性と女性は、肌の色を問わず、薬物やアルコール、自殺といった「絶望死」で死ぬ人が増えている。米国の平均寿命がこの100年で初めて3年連続で短縮したのはそのためだ』
② 『貧しい黒人が多いフィラデルフィア北部で生まれた新生児の平均寿命は、4マイルしか離れていない、白人が多く住む市中心部の新生児より20年短い。これは一方の赤ちゃんが「弱い性格」だったからではない』
③ 『変わったのは、いい職を得る機会が減り、人的資本へ投資する公約が少なくなり、依存性のある薬物が蔓延し、取り残された人たちを中傷する無情な社会の声が高まった事だ』
さて、以上から記事の内容はほとんど推察できるだろう。このコラムニストがその著作などを通じて告発し続けてきた「絶望死」について、広く巻き起こった反論への反論なのである。『自業自得だ』『性格が弱いからだ』とか、『生存に適さない人たちがふるい落とされる自然淘汰だ』という『自己責任論』批判が多かった事に対して、実証的数字を挙げて反論したコラムなのである。『自然淘汰だ』などは、僕が当ブログで再三批判してきた『社会ダーウィニズム』の用語とそのものだなと、興味深かったもの。こういう「思想」でもって戦争を肯定する人々が日本にも多い事を考えれば、なるほど、いかにも嘘の理由から起こされたイラク戦争に熱狂し、トランプを支持する人も多い今のアメリカ人らしい、そう思うばかりだった。