【 スティグリッツ国連報告・要約 4 文科系 2015年01月23日 | 国際経済問題
今回は、『第1章はじめに』の『第2節 危機への多様な対応』の四つのセクションの最後である『いくつかの基本的原則』を抜粋、要約をする。
「いくつかの基本的原則」の最初は、解決のスピード、政府に外国からの新しい悪影響が及ばないようにする認識、保護主義を避けること等が強調されたうえで、各論が述べられていく。
『市場と政府との間のバランスを回復する』
危機の原因であった「行き過ぎた規制緩和」に対して、国家にそういう金融規制の役割と、国際的金融に対する国家共同行動とを回復、組織することが求められている。
『透明性と説明責任の拡大』
政府と中央銀行にこれが求められ、「納税者を大きなリスクにさら」すことがないようにと述べられる。
『長期的展望と矛盾しない短期的行動を』
『政府は自分たちの行動が外国に与える悪影響を通して、今日の危機を悪化させてはならない』
『いくつかの国では、「倒産させるには大きすぎる」金融機関が過大なリスクを引き受けすぎたことから発生した危機への対応として、銀行の合併を行った。これは、同じリスクを将来に向けて大きくして行くものである』
『配分への影響を評価する』
国内でも国際間でもこんな配分への警告が述べられている。『銀行救済とリストラは、所得と富の逆転した配分に特に重要な役割を果たした』。金利低下は退職者を犠牲にしているという例も強調されてあった。
次の三つほどを飛ばして『知の多様性』に触れてみよう。
四半世紀続いた規制緩和理論などは、『最良に評価しても、「疑問符付き」というところであった。近代経済学理論は市場原理主義の基礎となる多くのアイディアを疑問視してきた』との問題提起をし、米国に関わってこう結んでいく。
『「国は健全なマクロ経済政策と、透明性を含む強力なガバナンスと、そして良い機関を持たなければならない」というまやかしの標準政策は全く役に立たないこともまた、危機は明らかにした。ベスト・プラクティスのモデルであるとされることを辞退した国は深い欠陥のあるマクロ経済政策と機関を持ち、透明性においても大きな欠陥のある姿をさらした』
(次回、『第3節 発展途上国への影響』へと続く。これが、第1章紹介の最後となるものである)
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