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スティグリッツ国連(経済改革)報告②  文科系 

2020年02月12日 10時09分20秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 「スティグリッツ国連報告」連載要約の再掲第二回目です。ジョセフ・スティグリッツは、アメリカのノーベル経済学賞学者。この国連文書は、彼を代表者とする委員会が当時の国連総会議長によって選ばれて、2008年に起こった「世界100年に一度の経済危機」・サブプライムバブル破裂・リーマンショックの総括を依頼されたもの。今やアメリカでも論議されはじめた「中産階級の没落」など「株主資本主義は誤っていた」との反省に関わって、その改革方向を10年も前に探求した国連文書です。
 ちなみに、当時アメリカはこの文書の作成経過全てに対して異議を唱え、妨害してきたものでした。5回ほどの連載になるだろう。なお、『 』は、報告文章抜粋を示している。
 
【 スティグリッツ国連報告・要約 2  文科系 2015年01月18日 | 国際経済問題

 前回に引き続いて『第1章はじめに』の『第1節 危機:その原因、影響、そして世界的な対応の必要性』の要約を続ける。以下この節の終わりまでのキーワードは、こんなところであろうか。

 まず、金融危機・(実態)経済危機・社会危機。危機からの回復をめざす短期的景気刺激策と、長期的構造変革。全ての国が参加したより良い地球のための国際経済システムというグローバルな観点。10数年前に起こった同じようなアジア通貨危機に対して国際機関が全く何も出来なかったということから、支配的経済理論の再評価と、より公平で安定した世界金融システムの必要。

 『ILOによれば、危機の影響に対抗する行動がすばやく行われない場合、2億人ほどの労働者が貧困に追いやられるという。いくつかの先進国では、何百万もの持ち家保有者が家を失い、職を失い、健康保険を失う脅威に直面している。経済の非保障と不安が高齢者の中に拡がっている。資産価格の暴落で、彼らが一生の間に蓄えた預金が消えてしまったのである。ILOの予測によれば2009年の失業者数は、2007年比で3千万増加すると見込まれている。そして引き続き状況に改善が見られない場合には、その数が6千万人近くに達することもあり得るという』
『先進国は事態に対処し、景気を刺激し、倒産しそうな金融機関を救済し、信用を供与し、社会保障を強めることのできる財政の弾力性を持っているが、多くの途上国は厳しい財政支出削減を行っており、危機の影響を相殺するための予算は開発目的の予算から振り替えられている。拡大する社会保障のために使用される資金は将来の経済成長を犠牲にして行われているとも言えるのである』
『国際的システムを将来の危機を回避するのにふさわしいものにして行くために、その構造変革に取り組むことは重要なことである。しかし、現在の危機から回復するための短期的施策をかなり実施しないと、これらを実現することはできない。これらの短期的手段は、できる限り、長期的構造改革の推進に資するように行われるべきである』
『先進国と発展途上国の繁栄は相互に依存している。変革プロセスに全ての国が参加することの重要性を認識し、真に民主的な対応を作り上げる以外に世界経済の安定性は回復できない』
『国際システムの変革が目指すものは、国際経済システムをより良い地球のために、より効率的に機能するものにして行くことである。例えば持続的で公平な経済成長としての雇用の創出、天然資源の責任ある利用、グリーンガス排気量の削減や、解決が急がれる関心事(食糧・金融危機そして世界各地での貧困への対処等)である』

『10年以上前、アジア金融危機の頃、再び大きな危機が起こるのを避けるためには世界金融の仕組みを急速に変革していく必要がある、と言う議論が盛んに行われた。しかし変革はほとんど実行されなかった。いや、今となっては、全くされなかったことが明らかになった。(中略) 目標は、将来の世界的危機を回避することである』

『グローバル化に伴い繰り返し発生する危機は、一国での問題がすぐに溢れだし他の国に問題を発生させ、国際金融システムの変革の必要性を示唆している。ますます相互依存的になってきている世界経済のニーズに対応できる国際金融機関が必要になっているのである。これらの危機の影響の大きな部分が貧しい人々と発展途上国に向けられていたという事実は、世界市場と非市場メカニズムに金融リスクを管理する上で問題があることを明らかにした』
(続く)】

 日米などに相対的貧困者が急増して来たときとは、中進国以下の国はその開発費までもむしり取られてきた時代だということが示されています。これは、先進国の世界有効需要がどんどん少なくなったということ。こうした世界経済の悪循環の中で、世界的金融だけが太ってきて、投資先がない金の金転がしバブルを形成しているということでしょう。

 

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