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書評 「米中金融戦争」  文科系

2020年11月09日 15時30分11秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など

 これは戸田裕大著で、この10月1日に扶桑社から出たばかりの本で、副題がこう付いている。『香港情勢と通貨覇権争いの行方』。なお、この著者は三井住友銀行で為替業務のボ-ドディーラーを務めた後、在中国グローバル企業450社などの為替リスク管理に関わるコンサルティング会社を開いたお方である。

 この本が説く中国の貿易・外交最重要事項が「人民元の国際化」であって、これをめぐる米中の攻防である。というのは、今のアメリカ経済が、ドル世界基軸通貨体制によって維持されているからだ。この2020年前半に世界中の銀行が保有する外貨の59%がドルだとか、国際決済の41%がドルでなされているとかによるアメリカの利益がいかに大きいものか。ドル基軸体制が、これによってドルが多く買われて高値になりその分米の物輸出が少なくなる不利益などよりも、はるかに大きい儲けになるからである。「物輸出で儲けなくとも、ドル基軸体制で儲ければ良い」という国がアメリカなのである。

 ところで、1980年代の日本急上昇に対してもアメリカが「失われた30年」に繋がる日本圧殺(1990年過ぎの不動産バブル破裂が、これのスタートだった)を成功させたが、あの時と今の中国とは全く違う。日本は金融自由化を受け入れたから(対米物輸出なども)大目に見られたが、中国は株売買に、外国資金の出国に許認可制をとるなど資本移動を制限することによって、金融自由化に歯止めが掛かっているのである。中国も(実は日本も)為替操作国であって、いずれも対ドル通貨安政策を採るため「ドル買い」を繰り返してきたことによって莫大なドルを保有しているが、管理変動相場制によって金融自由化をしていない中国に対しては「米金融に中国で自由に儲けさせないのはけしからん」と怒っているわけである。こうして、中国の資本移動制限は、日本の「失われた30年」などの歴史から大いに学んだものであり、他方、今の中国には当時の日本のように投資できる新たなマーケット先は存在していないのである。だからこそ、一帯一路も意味を持つわけだが、中央アジアなどの人口はそれほど大きくはない。                  
 
 この中国経済最大の要求、人民元国際化をめぐってこそ、香港が米中の争点にもなるのだ。その事情を本書はこう語っている。
『一つが中国内で取引される「オンショア人民元」、もう一つが中国外で取引される「オフショア人民元」です。オンショア人民元には資本移動の制限が存在する一方、オフショア人民元は資本移動の制限がありません。・・・・実際にオフショア人民元の75%の取引は香港で行われており・・・』(P115~6)

(続く)

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