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書評 「米中金融戦争」(3)  文科系

2020年11月12日 09時28分49秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など

 「米中金融戦争」の現在  

 

  2019年8月、アメリカは中国を「為替操作国」と指定した。1ドル7元というドル高元安を突破した翌週のことだったから、この時に米中貿易戦争が為替ルートにも及び、米中金融戦争に発展したと、著者は言う。そして、こんなことを付け加える。
『貿易はゼロサムゲームであり、不公平は許されないのですが、米国は自国通貨が基軸通貨であるため、各国からの投資を集め、結果として通貨価値が上昇し、自国通貨高となりやすい傾向があります。
 そのため、基軸通貨性の代償として、貿易では他国に負ける宿命にあると言えます。基軸通貨として通貨覇権を握ることで、世界中から大きな投資フローを呼び込みながら、一方で貿易面で中国や日本にも勝つ、という究極の「おいしいとこ獲り」は本来ありえないことなのですが、中国を「為替操作国」に認定したトランプ大統領は当然、その点には言及していません』(P175~6)

 ところが、この「為替操作国指定」をば、翌2020年1月に米国は解除している。このことに関わる事情を、著者はこう説明する。IMFを巻き込んで中国への厳しい各国世論を形成しようとしたのだが、上手く行かなかったのだと。
『これまで米国寄りの立場を鮮明にしてきたIMFが、米中為替対立において、米国になびかなかったのは衝撃でした。これに米国も、相当な危機感を覚えたはずです。・・・
 そして、ここに来てようやく、米国は対中政策を改めるしかないと結論づけました』(P182~3)
『これは一見すると不思議に思えるのですが、当然の帰結だと思っています。
 なぜかというと、米国は基軸通貨ゆえに常時ドル高に苦しんでいるため、できればドル安に誘導したい。中国は人民元安が資本流出を引き起こすことを恐れているし、人民元の国際化のためには人民元高でも良い。実のところ、米国も中国も、ドル安人民元高で、まったく問題ないのです。・・・
 このような力学が現在のドル人民元相場にかかっていることは、人民元を取引される方や、中国と取引のある企業は必ず押さえておいたほうがいいでしょう。
 まだまだ、人民元安が進むと考えていると痛い目を見る可能性が高いのです』(P184~5)

 

 こうして、近い見通しの原理を語ることになるのだが、こんなことが続いてくる。
・バイデンになっても対中強硬路線は変わらない。つまり、ドル安人民元高は続いても、元の国際化はあくまでも妨害する。
・ただし、トランプなら大きいドル安、バイデンなら小さいドル安。
・アメリカが香港へのドル供給をやめ、香港ドルの対米ドル安定策が崩れることを世界が恐れているが、米にとってこれは最終策である。各国のドル離れが進むからだ。
・中国は、第2の香港を模索しているが、これは時間がかかることである。
・とそうこうしているうちに、この7、8月で、香港ハンセン指数は下がり、上海総合指数は上がり、S&P500指数は微増。

 

 なお、こういう米中金融戦争時代における日本について、こんな記述をご紹介しておきたい。この点でも、日本という国はマルクス・ガブリエルが言うように「ソフトな全体主義国」なのである。

『日本ではおおむね自国の見方しか報じないので、反対サイドの認識や意見がまったく報道されない分、国内の情報はコントロールされているということを日頃から認識することが重要です。・・・・勝てるディーラーというのは、日銀やFRBなどの要人の発言や一挙手一投足をつぶさに確認し、そこから自分なりのシナリオを描いて投資を行うものです』(P178)

(終わり)

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