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ガス料金を梃子に米覇権くずす露  文科系

2022年04月03日 16時41分03秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 田中宇の国際ニュースに本日3日、「ルーブル化で資源国をドル離れに誘導するプーチン」という記事が載った。最も短く要約すれば、こうなる。
 アメリカのロシア制裁を梃子にして、逆に「ロシア産ガス料金ルーブル払い強要によって、ロシアは世界のドル基軸通貨体制を崩そうとしている。インドや中国、イランは大喜びだし、ロシア制裁に加わっている西欧は困り抜くだろう。日本がロシアから輸入しているのは液化ガスであって、これについてロシアはなぜか「ルーブル払い」を強要していない。

 日本のウクライナニュースがアメリカ系マスコミ種ばかりになっている馬鹿な情勢の中で、別系統ニュースは貴重です。田中宇のニュース種は反米系を多くした世界中のマスコミニュース。彼の予測は間違っていたと認めたことも多いですが、大きな構図にはそんな誤りはないと思います。何よりもアメリカの弱みをよく知っている。アメリカの弱み、これこそ日本人の盲点。30日エントリーの真田幸光教授らもここをこそ指摘していました。イラク戦争とリーマンショック以降のアメリカに昔の威光はありません。「金融グローバリゼーション経済は、株価だけ経済」の弱みを知っていないとこのことは分かりにくいですが。
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ルーブル化で資源国をドル離れに誘導するプーチン

4月2日が過ぎても、EUなど米国側の諸国は天然ガスの輸入代金をルーブル払いしたと報道されていない。ロシアが求めたルーブル払いは米国側に拒否されている。ロシアは今後おそらく数日内に、欧州へのガスの送付量を減らすだろう。ロシアが欧州にガスのルーブル払いを要求したのは言葉だけの脅しであり、欧州がルーブル払いを拒否してもロシアが欧州に送っていたガスを減らすことはないという推測が出回っているが、その見方は間違いだ。

この件でロシアが欧州へのガスを減らし、ロシアのガスに強く依存している欧州経済が大混乱に陥り、欧州が最終的にルーブル払いに応じると、それは世界的なエネルギー代金決済の非ドル化の流れを誘発し、ドルの基軸性と米国覇権の低下をもたらす。それが今回のルーブル化の狙いなので、プーチンは欧州へのガスの送付を必ず減らし、欧州に大混乱を引き起こす。プーチンの行為は脅しでなく、米国側とロシア側(非米側)の地政学的な果たし合い・覇権争奪戦なので、ロシアはその戦いに勝つために、これから必ずガス送付の削減や停止を挙行する。

ロシアは欧州へのガスの輸出を止めても困らない。石油ガス鉱物など資源全体が世界的に大きく値上がりしており、欧州へのガス送付の削減による収入減少は、他の資源の輸出収入の増加によって穴埋めされている。米国側はロシアの資源を買わなくなったが、中国やインドはどんどん買い増している。米国はインドに加圧してもロシアの石油を買うのをやめないので、インドの露石油輸入を「一定量まで」容認した。インドはロシアの兵器もどんどん買っている。米国から睨まれたら何もできなくなる他の同盟諸国が馬鹿を見ている。何だかんだでロシアの収入は増えている。対照的に、欧州はこれから深刻なガス不足に陥り、大混乱になる。

欧州は、ロシアからのガス送付が急減したら大混乱に陥るとわかっていたので、できればロシアのルーブル払いの要求に応じたかっただろう。しかし欧州の親分である米国が、それを許さなかった。ロシアが求めるガス代のルーブル化が実現すると、資源保有する世界中の非米諸国がロシアを真似て「ドルでなくうちの通貨で払え」と米国側に要求し始め、ドルの基軸性と米国覇権が低下してしまう。米国は、それを許すわけにいかないので、欧州に命じて、ガス代をルーブル払いを拒否させた。

しかし今後、ロシアからガスの送付を減らされた欧州はとても困窮し、最終的にガス代をルーブルで払う。それはイラン、イラク、サウジアラビアなど産油する非米諸国がロシアを見習って、米国側に石油ガス代金の決済をドルでなくイラン・リヤルなど自国通貨建てで払ってくれと求めることを誘発する。ロシアは最近、イランに対し、一緒に米国の経済制裁を迂回していこうと持ち掛けている。イランは大喜びだ。結局、ドルの基軸性と米国覇権の低下が引き起こされる。プーチンの策略が成功し、米国側が覇権を喪失する。

ロシアから欧州へのガス送付の削減がこれから長引くと、欧州の政治状況も転換していく。独仏など西欧諸国の市民がガス不足に非常に困らされ、欧州市民の心境は、輸出を止めたロシアを恨む状態から、事前準備せずにロシアを敵視してガス不足を引き起こした自国や米国の上層部を恨む状態に変質していく。それが続くと、やがて西欧諸国で反露・対米従属の既存の政権が選挙で転覆され、親露・対米自立の新政権に転換していく流れになる。すでにフランスでは親露反米のマリーヌ・ルペンの人気が上がっている。

▼日本はルーブル払いを免れている

一昨日に配信した記事に間違いがあった。私は、ロシアのサハリンから日本に輸出される液化天然ガス(LNG)も、4月1日から日本側が代金をルーブルで支払わないと売ってもらえなくなると思っていたが、それは間違っていた。ルーブル払いを義務づけられるのは非友好諸国(米欧日。米国側)がロシアから輸入する「気体状の天然ガス」(ガス田から気体のままパイプラインで輸出される天然ガス)だけが対象だ。プーチン大統領が3月31日に発した大統領令にそう書いてある。
(中略)

プーチンが決めた今回のガス代ルーブル払いの義務化は気体状のガスだけで、液化して液体状でロシアが輸出するLNGは含まれていない。日本はロシアから気体のガスを買っておらず、液体のLNGしか買ってないので、ルーブル払いを義務づけられていない。米国側で、気体のガスをロシアからパイプラインで輸入しているのは独仏EUなど欧州大陸諸国だけだ。EUは消費するガスの4割が、ロシアからパイプラインで送ってくる天然ガスで、ガスを止められたらとたんに経済が破綻する。プーチンはEUを狙い撃ちして困らせる策をとっている。

日本の政府や権威筋は、日本がプーチンによるルーブル払い義務化攻撃の対象にされていないことをよく知っている。それなのに日本政府は「ルーブル払いは全く認められない。断固拒否する」と怒ってみせる演技をやっている。日本政府は、日本がルーブル払い義務の対象になっていないので大混乱を免れて良かったと心底思っているが、その気持ちを全く表に出していない。表に出せない。

米国の覇権低下が続く中、いずれ米軍は日本から出ていき、日本は対米従属だけで生きていけなくなり、ロシアや中国との敵対を解消していかざるを得なくなる。日本政府は、こうした国際情勢の先行きを知っているので、本当はロシアと敵対したくない。今の日本は「素」の姿は、どこかの外国を敵視するほどの国際パワーを持っていない。素の日本は、反露でも反中でも反韓でもない。反露と反中は、米国が反露や反中だからやっている。反韓は、日韓が仲良くして安保協定を結んだりすると、そのぶん在日と在韓の米軍がいなくても良いことになり、日本も韓国も米軍撤退はダメだということで、相互に敵対(というより痴話喧嘩)を続ける策をとっている。

(以下略)

コメント (1)
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