読売新聞の記事でこんなのがあったが、これはおかしい。正常な判断ではないと考える。
『【ニューヨーク=寺口亮一】ロシアのウクライナ侵攻を巡り、国連のアントニオ・グテレス事務総長は26日、モスクワのクレムリンでロシアのプーチン大統領と会談した。国連の発表によると、プーチン氏はウクライナ南東部マリウポリのアゾフスタリ製鉄所に避難している民間人の退避に、国連と赤十字国際委員会が関与することに同意した。
国連と露国防省がさらに協議を続けるという。ただ、民間人の安全な退避が実際に実現するのかどうかは不透明だ。
製鉄所の地下施設には約1000人の民間人が避難しているとされる。露国防省は25日、民間人の退避のため「人道回廊」を開設すると一方的に発表。これに対し、ウクライナ政府は安全性が確保されていないとして、国連や赤十字国際委員会が現場で立ち会うよう求めていた。』
ロシアのマリウポリ・アゾフスタリを巡る報道として「ロのアゾ降伏へ最後通告・アゾ拒否・攻撃せずまた次の最後通告」が何度繰り返されたことか。これを西欧側は「反撃が怖いから殲滅しない」と報道してきたが、どうして素直に「無意味な大量殺人はしない」との解釈も残さなかったのか。現に、アゾを包囲したまま攻撃せず、「人道回路」をロシアは提案し続けてきたではないか。それを西側は他方では「地面貫通爆弾を使って攻撃か」などとも観測・報知し続けてきたのではなかったか。今回の提案でも「ロシアが同意した」のではなく、ロシアから持ちかけた可能性さえあると僕は読んでいたから、ここの人道回廊に国連が介入すればよいとも考えていた。そしたら案の定というわけだ。そもそも、ウクライナが人間の盾を構えたのなら、そこにロシア人を多くして「楯の価値を高めた」かも知れないではないか。だからこそまた、ロシアが攻めなかったのではないか。と、そんなことさえも思った。
ロシアの三月のキーフ攻撃から撤退の報道でも、いまだに「ウクライナが奪還」となっているが、これは両国の協定で一つの合意があったからロシアが撤退したと報道されたのではなかったか? つまり「撤退地」を「奪還地」と書き換えている。これは、日本大本営発表の「撤退」を「転進」と同じやり口の匂いがする。
戦争とは何でもありの本当に怖いものだからこそ絶対悪なのだが、その双方の「一方を限りない悪で冷酷に描き、他方を限りない善として描く」のは大本営発表と同じで、地球に戦争の種になるような憎しみを増幅させること。ロ・ウ戦争の日本報道では、そんなことが多すぎる。アメリカのニュースを報道するだけなら、日本マスコミはアメリカの家来である。そして、報道を握るのは心を握るのと同じなのだから、日本人がアメリカの精神的家来になってしまう。
今の戦争のことを語っている日本人は、「嘘の理由で開戦され、関連死含めて50万人」のイラク戦争をも思い出すべきだ。でないと日本人の世界政治観・日本政治観が限りなく狂ってくる。ウ・ロ戦争でも、「アメリカがしかけた」側面は今やいろいろ明らかになってきたことでもあるし。だからこそ言いたい。イラクの米軍ヘリコプターが一般市民を機銃掃射しまくっていた映像が後に流れたが、これを流した人物は対米国家重大犯罪人として「生涯獄中」とされたことを、どれだけの日本人が知り、覚えているか。なのに今は、あー言う残虐記事がどんどん流れているのはどうしてなのか。アメリカは自分の戦争の残虐ニュースを隠すことを徹底し、敵の戦争は「残酷、冷酷」を徹底してきたのである。
最後だが、この戦争とアメリカの世界地政学・ドル世界(金融資本主義)体制とを結びつけて考える日本人はほとんどいないと思う。が、これが見えなければこの戦争の片面の本質が見えていないに等しいはずだ。それは、イラク戦争についても同じことなのだが、9日の拙ブログにおいて、真田幸光 愛知淑徳大学教授が現下の米世界地政学・ドル世界体制死守がこの戦争の片面の本質だとしっかり述べているのを紹介している。
今のドル(で)石油代を支払う世界体制があるからこそ、ドル世界通貨体制が守られ、GDPの4倍もの米国家累積赤字や、毎年打ち続いた大きな米貿易赤字やがあってもドルが下がらないという恩恵をアメリカは享受してきた。そのためにこそ、石油(天然ガス含む)=ドル体制を崩そうとする国はすべてアメリカの戦争相手にされてきたのである。フセイン・イラク、カダフィのリビアは滅ぼされ、ベネズエラ、イランも「悪の枢軸国」扱いされてきたはずだ。この4国の石油埋蔵量世界順位はそれぞれ、5位、9位、1位、4位で、ロシアが8位なのである。しかも今回のロシア侵攻は、西欧へのノルトストリーム2を完成させるやいなや起こったもの。つまり、アメリカによってロシアがウクライナに狩り出されたという仕組が存在し続け、このブログではここまでそれを説明してきたつもりである。