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憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

南野拓実は、リバプールにぴったりはまる  文科系

2019年12月16日 07時45分16秒 | スポーツ
 南野拓実はリバプールにぴったり合うと考える。クロップが今でもこう語る好みの「日本人選手」、香川真司と同タイプだからだ。クロップは長くドイツに居て、そこに多い長谷部、岡崎など、日本選手をよく観察していたのだろう。ゴールコムの記事からの転載。

『ドルトムント時代に指導した香川真司について問われた同指揮官は「彼のことは大好きだ。最高で、スマート。シンジとの仕事は大好きだったし、最高の経験だった」と話し、日本人選手の特徴について自身の見解を示した。
「なぜかって?シンジに会うまで日本人選手のことについてほとんど知らなかった。私たちは彼の映像を見て、そして契約したんだ。確信はなかったが、最初のトレーニングの後の控え室で、コーチみんなで“オーマイゴッド!スーパープレーヤーを獲得した”と言いながら抱き合ったよ」
「日本人選手の姿勢は素晴らしく、スマートだ。いつも本当に良いテクニックを持っていて、運動量も素晴らしく、本当にダイナミックで、ナイスガイだ。今でも彼のキャリアを追っている。最高の経験だった」』


 その上で南野は香川よりもこんな点で強い。トップ下でこそ凄い力を発揮するとクロップが観ていた香川と比べて、攻撃的位置ならどこでもできること。前からのプレスが香川よりも上手くて、そのためにも走れることは、リバプール選手の最大要件だと思う。そして、香川よりも常に見えている視野がさらに広いことは、サイドチェンジなども多いこのチームでは、大事な能力になるはずだ。

 ただ、リバプールは今や世界1の強豪チームで、マネ、サラー、フェルミーノという前3人は不動のメンバー。当面南野が上手く行っても、この3人いずれかの第1リザーブということになる。そこを同じイングランドにいてリバプールをよく知っている吉田麻也はこう語る。

『久々の日本人選手のビッグクラブ行き。(この世界1のチームに行ってゲームに出られるかどうか)大変な冒険になるが、これは、行くでしょう!』
 この場合の「久々の・・・」とは、香川が当時の世界有数にして功成り名遂げた名監督ファーガソン(最後の年)に請われてマンチェスター・ユナイテッドへ行ったときのことを指している。香川はその年、このマンUで優勝した。その後のボンクラ監督に干されたのが彼の不遇とマンU凋落との始まりであった。
 南野はやってくれるだろう。現地専門家からはこんな声も上がっている。
『(今までは)「誰よりも、替えの利かない選手」と言われていたフェルミーニョの代役にぴったりはまる』
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リバプール・南野拓実は決定したと考える  文科系

2019年12月14日 07時45分15秒 | スポーツ
 今朝7時、スポーツ報知がこう報じた。

『 【リバプール(英国)13日=森昌利】イングランド1部リバプールのユルゲン・クロップ監督(52)が13日、オーストリア1部ザルツブルクの日本代表MF南野拓実(24)の獲得が近づいていることを示唆した。14日のワトフォード戦の前日会見を行い、南野について「現時点では何も言えないが、非常にいい選手だと思う」と言及。さらに日本メディアに対し「たぶん、これからしょっちゅう顔を合わせることになるだろうね」と話し、獲得をにおわせた。英メディアによると、移籍金は725万ポンド(約10億4000万円)に設定され、すでに基本合意。ザルツブルクの公式ツイッターでは、フロイントSDが「リバプールと話し合いを重ねていることを認めざるを得ない」と交渉の事実を明かした。
 またリバプールはクロップ監督と2024年まで契約を延長したと発表。昨季は欧州CLで優勝に導き、今季はリーグで15勝1分けと首位を独走している。』

 また、13日にはサッカー・ダイジェストがこう報じている。

『水面下で交渉は進んでいたようで、ザルツブルクのクリストフ・フロイントSDも「リバプールと話し合いをしているのは事実。我々の選手がかのようなクラブの関心を引いているのは光栄だ」と公の場で認めた。この発言を受けて英メディアは一斉に“ミナミノ”を報道。瞬く間に脚光を浴びる存在となったのである。
(中略)
 ザルツブルクとリバプールの間には、ここ数年で築き上げた太いパイプと厚い信頼関係がある。2016年夏にサディオ・マネを、18年夏(契約発表は17年夏)にはナビ・ケイタが移籍しており、その後ともに代えの利かない主軸に台頭。この実績がリバプールにとって「特大のアドバンテージになった」と説く。』

 これらのニュースで、この移籍は実現すると直感する。根拠は、こういうこと。
①リバプールにとって、クロップは今や、「お宝様」。この傾いた老舗チームを瞬く間にCL優勝に導いてくれた世界1の名監督というお宝様。その彼が『日本メディアに対し「たぶん、これからしょっちゅう顔を合わせることになるだろうね」と話し』ということだから。
②一方、日本の賢い選手なら、あるいは周囲に賢い人が居るならば、バルサやマドリーのスペインよりも、イングランドを選ぶ。
③さらに、このことも双方の強力な移籍動機として付け加わる。マネは、サラーと並び、彼よりも古参のリバプール得点王。そのマネとケイタが南野と同じくザルツブルグからリバプールに来たというのは、この両チームの戦略親和性が極めて強いということだろう。

 サー南野拓実。クロップも世界有数という評価で実力を認めていたクロップ好みの選手、香川真司がイングランドで長く果たしていく機会をファーガソンの後釜のボンクラ監督らによって奪われたその夢を、ついに日本選手が実現するのか! ちなみに、南野も香川と同じセレッソ大阪から育った選手だ。そのことも、クロップの頭の中にはあるに違いないのである。香川真司、岡崎慎司と同様に、「プレミア優勝!」。それも、彼らが果たせなかった何回かに渡って・・・。


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アメリカでは、こんな政治本質暴露も出るという話  文科系

2019年12月14日 07時04分32秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 アフガニスタン戦争はベトナム戦争を抜いて、アメリカここ百年の最長の戦争。先日亡くなられた中村哲さんがその人生を捧げられた土地でもある。アメリカはなぜあの辺境で長々と戦争を続けてきたか。それを巡って、アメリカの政権姿勢の歴史的暴露をこともあろうに、ワシントン・ポストがやった。この記事の作者はこの新聞をこう形容しているのだ。『戦争が大好きなことで悪名が高いワシントン・ポスト』。という内容のこの記事は、今のアメリカ政治というものをこれほど見事に暴き出した物も珍しく、かつ非常に面白いと、感嘆した次第。日本の政権は長い間、こういう米政権に動かされ、もしくは同調してきたわけである。
 
 いつものように「マスコミに載らない海外記事」のサイトから転載させていただく。明らかな訳の誤り、誤字脱字は、最小限のことだが、正させていただいた。

【  アフガニスタン・ペーパー暴露で最も重要なのは、それを公にするのがいかに困難だったかだ 2019年12月11日 ケイトリン・ジョンストン CaitlinJohnstone.com

 アメリカ干渉政策の歴史を全く研究をしたことのなかった人々にとっては衝撃的な暴露、アフガニスタン戦争に関して、アメリカ政府幹部が国民にウソをついていた明確な否定し難い証拠をワシントン・ポストが発表した。
 冗談抜きに、これは極めて良い、ニュース価値がある報道で、アフガニスタン・ペーパーを社会に認識させるという大変な仕事をした人々は全面的称賛に値する。アメリカ軍幹部の率直な発言は、そもそも始めから、これが誰も理解していない地域で始められた勝利がどのようなものなのか、誰も明確に説明さえできない勝てない戦争だったとはっきりと述べており、この戦争について政府から大衆が聞かされてきた、あらゆることと矛盾する極めて重要な情報だ。
 だがこの話題で現れた最重要な暴露はアフガニスタン・ペーパーそのものではない。

 アフガニスタン・ペーパー暴露で最も重要なのは、「ポストは、いかにしてアフガニスタン・ペーパーを掘り出したか」という題の別記事の、政府の秘密の爪から重要文書を引き出すために味わったワシントン・ポストの実に困難な時間の詳細説明だ。ワシントン・ポストは、最初アメリカ政府に拒絶された後、3年にわたり、2つの訴訟で補う必要があった情報公開要求により、ペーパーが究極的に、どのように入手されたか説明している。
 「アフガニスタン・ペーパーを入手するためのポストの取り組みは、ジャーナリストや、国民にとって、政府の公共情報を引き出すことが、どれほど困難であり得るかを例示している」とワシントン・ポストは報じている。「情報公開法の目的は、連邦機関を世間の厳しい目にさらすことだ。だが法の精神を阻止する決意が固い当局が、請求者が最終的に諦めることを期待して、何年もの間、要請を長引かせることが可能なのだ。」
 「2017年10月、フリン(マイケル・フリン。トランプ陣営の大統領選前からの幹部)・インタビュー資料を得るため、弁護士費用で何十万ドルも費用がかかる措置だが、ポストはワシントン連邦地方裁判所で監察官を告訴した」とワシントン・ポストが付け加えている。
 今ワシントン・ポストは、現在地球上で一番金持ちの人物としてランクされているジェフ・ベゾスが一人で所有している巨大営利マスコミだ。この記事を読んでおられる読者のどなたか、国の透明性法規に従わせるようアメリカ政府と何年も戦う何十万ドルもの資金と、人生をお持ちだろうか? 終始アメリカ帝国主義に反対している代替メディアのいずれかが、それだけの大支出をする余裕があるだろうか? 私はそうは思わない。

 政府の不透明な壁の背後から、こうした文書を引き出すため、ネオコンがはびこり、あらゆる機会にアメリカ干渉を促進する大量の実績を誇るマスコミ、ワシントン・ポストに、アメリカ納税者が頼らなければならないのは憂慮すべきことではあるまいか?

 結局は、ワシントン・ポスト自身が認めているように、ドナルド・トランプに一撃を加えるためにアフガニスタン・ペーパーを公表したのだ。ポストによれば、当時トランプ選挙運動の一員だったマイケル・フリンが、アフガニスタン復興特別査察官(SIGAR)事務所に、アフガニスタン戦争に関し、何らかの興味をそそる発言をしたという情報を得た後、文書を探して、2016年、これを始めたのだ。現在トランプがタリバンと、将来あり得る軍事撤退に関する交渉の最中なので、ワシントン・ポストは更にもっと多くの情報を要求する法廷闘争の完了を待つより、むしろ今、ペーパーを出版する決断をしたのだ。
 「トランプ政権がタリバンと交渉し、アフガニスタンに駐留しているアメリカ兵13,000人を撤退させるべきかどうか考えている中、「ポスト」は、最終決定を待つのではなく、国民に知らせるべく、今文書を公表する」とワシントン・ポストは報じている。
 これら文書を追求し発表するために、ワシントン・ポストが、巨大な富と資源を注いだのは、明らかに本質的に良いことだ。だが、もしそれらの書類がトランプ政権を困らせる機会を提出しなかったなら、ポストはそうしただろうか? 戦争が大好きなことで悪名が高いワシントン・ポストは、このような種類の情報を追求し、発表するためにその富や資源を使わないのだろう? おそらく一切合切。
 選挙で選ばれた、あるいは選ばれたわけではないアメリカ政府指導部がしている許しがたい物事を巡る不透明さの巨大な壁のおかげで、アフガニスタン・ペーパーが明らかにしたことより遥かに、遥かに悪い、一層遥かに不快な、我々が知らない、我々が知らないことさえ知らないものがあるだろうというのは、極めて確実な想定だ。もし我々がこの情報のほんの僅かでも知りたいと望む場合、戦争が大好きで支配体制を支持している億万長者の報道機関に、党派的な追求をしてほしいと祈らねばならないというのは、実に気掛かりなことではあるまいか?

 つまり、アフガニスタン・ペーパーは、我々が知らなかったことを明らかにしたわけではないのだ。アフガニスタン侵略は、9月11日のずっと前から既に計画があったのは周知のことで、侵略後、多くのウソがでっちあげられたことも何年も周知のことで、戦争がどれほどうまく行っているかについてウソをつかれていたのも長年周知のことだった。今回の暴露は、社会の動向に常に注意を払っている人なら誰でも既に知っていることを具体化し、衆目を引いたのだ。アメリカが率いる他の全ての軍事介入と同様、アフガニスタンについても我々はウソをつかれていたのだ。アメリカ政府は、何らかの大規模な未知の衝撃的暴露を食い止めようとして、ワシントン・ポストの情報公開要求に抵抗していたわけではない。政府は単により都合がよいということで、とにかく彼らに抵抗したのだ。
 ジュリアン・アサンジ(ウイキリークスの創設者。アメリカから国家犯罪者とされて、イギリスの刑務所にに居る。文科系注)は「情報の圧倒的多数が、国家安全保障ではなく、政治的安全保障のために機密扱いされている」と、かつて言っていたが、違法な拒否や、膨大な情報公開法要求の未処理分、正当化できない編集や、できる限り機密を維持するための逃げ道の利用によって、これが暗黙のうちにだがアメリカ政府によって確認されるのを我々は目にしている。あるツイッター・フォロワーが最近言ったように「情報公開法は政府活動を「日光」にさらすことを法的に必要なことだとするために1966年に制定された。53年後、政府は、いかにして法律を無力化し、またもや彼らの悪行を隠す方法を学んだのか。全てを機密扱いするのは一つの手段で、費用がかかる「訴訟」をもう一つ増やすのは、また別の手段だ。」
 ものごとは、こうあってはならない。自分たちの税金を使って、自分たちの名において何をしているかについて、政府に真実を話させるために、不道徳な金権政治マスコミ組織を当てにしなければならないなどということはあってはならない。自由な国なら、国民にはプライバシーが、政府には透明性があるはずだ。アメリカ中に張り込まれている帝国による監視と、政府の秘密が益々増大し、我々が得ているものはまさに正反対だ。】
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「小室圭と文在寅」が面白かった記事  文科系

2019年12月12日 10時01分25秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 米政治週刊誌ニューズウイーク日本語版をこの7月から購読しているが、最新号に非常に、重要な現代社会問題を扱って、力作として初めてというぐらいに勉強になった記事があった。「進撃のYAHOO」という、今号の約4分の1、14ページびっしりの記事である。この内容を最も短く要約すると、なによりもまず、ヤフーとLINEが経営統合をしたという機会を捉えて、「これは『ニュースの未来』にとって良いニュースなのか」という「批判」とも覚しき側面が目に付いた。これは明らかに、中小の新聞など伝統メディアを破壊してきたニュース・プラットホーム・GAFAの功罪が米国において大問題になっていることを問題意識として書かれた記事でもあるようだ。このアメリカにくらべたら、ヤフーが既存新聞社などとより共存する道を歩んでいるらしいことについて、何かあえて日本のあら探しをしているような記事とさえ僕には読めたものだ。と書いてくれば、この記事内容が社会にとっていかに重大な問題を報告しているか、お分かりいただけるだろう。社会にニュースというものを「流す」元となる「そのニュースを集める」のが誰で、どんな価値観や体制で集めるのかという重大問題を含んでいるのである。
 
 さて、この長い長い記事で僕にとって最も面白かったのがこれ、表題のことなのだ。この特集記事を主として書いたノンフィクションライター・石戸諭という人がヤフー本社に面談を申し込んで行われた応答が報告されていて、その中でなによりも、こんな「象徴的」な報告、言葉が目にとまったのである。
『配信メディア(担当者)の1人が言う。「(ヤフー本社の)18階の会議室でヤフーの担当者からデータの説明があるわけです。最近の読まれるキーワードは「小室圭」と「文在寅」です。文在寅と見出しに入れると3倍読まれます、とかね。淡々とデータが示されるんです。そこにあらがえるか。そんなデータがあれば、入れますよね』

 これは、ヤフーニュース画面のトップ中のトップ8つの記事に毎日どれを、どういう見出しで載せていくかという編集の選定、「価値判断力」に関わった質疑応答の一部として出てきたものである。

 ちなみに、1日5000本のニュースが本社に配信されて来て、その中から作った日々のニュースサイトに月間150億PVを誇る日本最大のニュースサイトがヤフーだから、どんな新聞よりも社会的影響力が大きく、NHKニュースに相当するほどの威力を持っているのだそうだ。よって、ライターも素人でさえなんとかしてヤフーニュースに取り上げられたがるし、プロも含めたここの常連さんなどは大いに自慢になるという日本社会にもなっているのだそうだ。そういうニュース選定の基準、価値判断として出てきた象徴、典型がこれ。「小室圭と文在寅」。
 確かに今の「日本」を言い当てているかも知れない。このブログにも「日韓問題」を載せるとアクセスが増えるわけだと、納得させられた。「編集局判断基準が、過去に示されたPVの数」。こういう世界、社会って、誰かに容易く動かされやすい社会にも思えたものだ。
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世界の格差・「株主利益の最大化経済」の仕組(4)  文科系

2019年12月11日 04時45分57秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
この本の第三部、最後の要約です。よろしく。


【 書評 ④各国、世界機関の金融改革を巡って  文科系 2016年10月19日 | 書評・番組・映画・演劇・美術展・講演など

 ドナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書2012年6月第5刷発行)の終章である第3章は、計4節に分かれている。「国際協調」、「適切な報酬制度」、「現状維持に終わる金融改革」、「金融化は不可逆的か」。これを、順不同で要約していきたい。
 サブプライムバブルが弾けた後のG20やそのサミットでどんな改革論議がなされ、対立があって、ほぼ元の木阿弥に戻ってしまったか。リーマン以降、ロンドンG20から、10年のソウルG20とそのサミットまで、世界の金融規制論議経過は省いて、書かれている改革の内容自身を観ていきたい。

 ロンドン大学政治経済学院の「金融制度の将来」には4つの目的がこう書かれているとあった。
①実体経済を攪乱しないように
②破綻金融の税金救済の問題
③そんな金融機関の報酬が高すぎる問題
④高報酬により人材が集まりすぎる問題。
 また、2010年11月のG20ソウル会議でもっと具体的に4つの討論がなされ、抽象的合意だけが成されたと言う。①銀行規制。②金融派生商品契約を市場登録すること。③格付け会社の公共性。④新技術、商品の社会的有用性。
 以上から何が問題になってきたかをお分かりいただけたと思うから、G20ソウル会議の4項目の順に討論内容などを観ていきたい。

 ①の銀行規制に、最も激しい抵抗があったと語られる。
また、現に力を持っているこの抵抗者たちは規制提案に対して「否」と言っていれば良いだけだから、楽な立場だとも。国家の「大きすぎて潰せない」とか「外貨を稼いでくれる」、よって「パナマもケイマンも見逃してくれるだろう」とかの態度を見越しているから、その力がまた絶大なのだとも。この期に及んでもなお、「規制のない自由競争こそ合理的である」という理論を、従来同様に根拠を示さずに押し通していると語られてあった。

 ②の「金融派生商品登録」問題についてもまた、難航している。
債権の持ち主以外もその債権に保険を掛けられるようになっている証券化の登録とか、それが特に為替が絡んでくると、世界の大銀行などがこぞって反対すると述べてあった。ここでも英米などの大国国家が金融に関わる国際競争力強化を望むから、規制を拒むのである。つまり、国家が「外国の国家、法人などからどんどん金を奪い取ってきて欲しい」と振る舞っているから換えられないと、酷く暴力的な世界なのである。

 ③格付け会社の公準化がまた至難だ。
その困難の元はこのようなものと語られる。アメリカ1国の格付け3私企業ランクに過ぎないものが、世界諸国家の経済・財政法制などの中に組み込まれているという問題だ。破綻直前までリーマンをAAAに格付けていたなどという言わばインチキの実績が多い私企業に過ぎないのに。ここで作者は「ワイヤード・オン」という英語を使っている。世界諸国家法制にムーディーズとかスタンダードとかの格付けランクがワイアーで縛り付けられているという意味である。
この点について、こんな大ニュースが同書中に紹介されてあったが、日本人には大変興味深いものだろう。
『大企業の社債、ギリシャの国債など、格下げされると「崖から落ちる」ほどの効果がありうるのだ。いつかトヨタが、人員整理をせず、利益見込みを下方修正した時、当時の奥田碩会長は、格付けを下げたムーディーズに対してひどく怒ったことは理解できる』(P189)
 関連してここで、つい昨日の新聞に載っていたことを僕がご紹介したいのだが、こんな記事があった。先ず見出しは、『国際秩序の多極化強調BRICS首脳「ゴア宣言」』。その「ポイント」解説にこんな文章が紹介されていた。
『独自のBRICS格付け機関を設けることを検討する』
 15日からブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ五カ国の会議がインドのゴアで開かれていて、そこでの出来事なのである。ついでに、日本でこういう記事はまず大きくは見えないようになっているということも付け加えておきたい。なお、この会議宣言4つのポイントすべてにおいて「国連」が強調されていたということも何か象徴的なことと僕には思われた。国連を利用はするが無視することも多いアメリカと、国連を強調するBRICSと。
 とこのように、国連や、G7などではなくG20やにおいてアメリカ以外の発言力が強くなっていかなければ、金融規制は進まないということなのである。

 最後に、「④新技術、商品の社会的有用性」について。
金融商品、新技術の世界展開を巡る正当性の議論なのである。「イノベーションとして、人類の進歩なのである」と推進派が強調するが、国家の命運を左右する為替(関連金融派生商品)だけでも1日4兆ドル(2010年)などという途方もない取引のほとんどが、世界的(投資)銀行同士のギャンブル場に供されているというような現状が、どうして「進歩」と言えるのか。これが著者の抑えた立場である。逆に、この現状を正当化するこういう論議も紹介されてあった。
『「金作り=悪、物作り=善」というような考え方が、そもそも誤っているのだ』

 金融が物作りを「攪乱」したり、現代世界人類に必要な新たな物作りへの長期的大々投資を事実上妨げているとするならば、それは悪だろう。関連して、世界的大銀行は、中小国家の資金まで奪っていくという「罪」を史上数々犯してきたのである。そして、世界の主人公である普通の人人の生活、職業というものは、物(作り)とともにしか存在しない。


 この本の紹介はこれで終わります。ただし、この著作中に集められた膨大な数値などは今後の討論で折に触れて適宜ご紹介していくつもりです。「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」という書名をどうかご記憶下さい。

(終わり) 】
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ケインズの労働時間短縮  文科系

2019年12月10日 09時37分49秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 以下は、「新自由主義経済は誤っていた! 2019年12月05日」につけたコメントです。重要なものなので、改めてエントリーとします。


【 重要な解説  2019-12-05 12:41:26

 エントリー中この部分は、普通に読んだら全く信じられないもの。解説が要りますね。
『「長期的に見れば、1930年代にケインズが予言したとおりに、週20~25時間労働にならざるをえないだろう」』

 「現実の学問」であるはずの経済学の大権威ケインズが1930年代にこう語っていた?貧困が多すぎる現在では誰も信じないでしょう。が、ケインズが生きていたら逆にこう言うはずだ。
「よく調べてみたが、この世界が信じられない、どうしてこれぐらいの労働時間短縮ができないのか。現実目標にできるはずだ」


 現在世界は豊かなのです。が、それぞれの国、民族に死活にして可能な、手段が入手できない。アフリカやアフガニスタンでは、水が必要だが、誰も援助してくれないからアフガンで中村哲さんがやってきた。ここに水を要るだけ与えたら、膨大な有効需要が生み出せる(ちなみに、ここアフガンで18年も戦争を続けているアメリカは、この国の困窮地域に水を与えるどころかヘロインの栽培、売買を勧めてきた。GIAがそれをやっていると、そんな文献もありました。「マスコミに載らない海外記事」サイトの12月9日分を参照)。南米、南欧、アジアなどの中進国には、もっともっと社会的インフラが必要だ。が、資金をリーマンショック、通貨危機、金融危機などでむしり取られたからできない。金がある国、人々がここの社会資本に投資したら膨大な有効需要が生まれます。

 このように、世界で必要な資金を必要なところに出して有効需要を作ることによって初めて、先進国経済も回りやすくなる。こういう考え方を、日本人で世界的な経済学者森嶋通夫は「政治的イノベーション」と呼んだかと思います。つまり、需給の好循環を世界に作るということ。この民主的な循環は、国連がイニシアティブを取らねばできません。

 金融資本主義は、国連を無視、敵視するなども含めて、この逆の道を歩んできた。各国、地域に必要な金を奪い取って、自らが膨らんだだけ? GAFAの金を今や、投資する場所もないのだ。それで、通貨の空売り、短期資金転がしなどやることによって、世界、地域をもっと貧しくして、自らが太るだけ?】
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世界の格差・「株主利益の最大化経済」の仕組(3)  文科系

2019年12月10日 09時02分14秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書、2011年10月初版)を要約している。その第二部は、金融化が社会、政治、教育、そして学者たちをどう変えたかという内容。これがまた4節に分けられていて、各表題はこうだ。
①社会を変える金融化
②金融化の普遍性、必然性?(疑問符が付いている事に注意 文科系)
③学者の反省と開き直り
④「危機を無駄にするな」(括弧が付いている事に注意 文科系)。

 なお、ここまで書いてきたことを最も的確に表現すれば、こういうことになる。
「株主資本主義とは、戦前の不在地主のようなもの」
 その会社どころか、その地域や国とさえ全く関係ない人が、その会社の利益をほとんど持って行くということだ。当期利益どころか、財産を売り払ってつり上げた株価の差益までも持って行く事も多いのである。



(1) さて、第1節では、格差、不安の増大、最優秀人材が金融にだけ行く弊害、人間関係の歪みの四つに分けて論じられる。
・「格差」では、06年のゴールドマン・トレイダーら50人のボーナスが、一人最低17億円だったという例を28日のここで紹介した。こういう強食の背後には、無数の弱肉がいると解説を付けて。(この点については、28日拙稿を参照願いたい)
・「不安の増大」では、こんな例が良かろう。日本の国民年金掛け金未納者が38%にのぼること。日本で新たに導入された確定拠出年金が、10年3月末の110万人調査で63%が元本割れとなっている発表された。これらの人々の老後はどうなるのだろうか?
・人材の金融集中では、2010年8月の日経新聞広告を上げている。
『野村、「外資流」報酬で新卒40人採用へ 競争率16倍 専門職で実績連動 11年春、初任給54万円』
 マスメディアのライターからも、大学人やフリーライターとかジャーナリストらがどんどん減って、金融アナリストが急増している。
・人間関係の歪みでは、情報の非対称性(情報量に大差がある2者ということ)を利用して起こる諸結果から、「人をみたら泥棒と思え」と言う世の移り変わりが説かれている。

(2)「金融化の普遍性と必然性?」の要は、金融に特化する先進国に不当な世界的優位性を与えているということである。そこから、西欧がアメリカを追いかけ、今日本がつづき始めた、と。ただし、主要国の家計に占める株と証券との割合は05年でこうなっている。アメリカ46・6%の6・7%、ドイツ23・7%の9・7%、フランス28・0%の1・4%に対して日本15・0%の4・0%である。
 この程度でもう100年に一度のリーマンが起こって莫大な公金を注ぎ込まざるを得なかったとあっては、これで儲けるしかないアメリカがいくら頑張っていても金融立国はもう駄目だという文脈と言える。上記4国の証券%合計は21・8%となるが、1980年のこれは合計34・9%となっていた。4国で割れば、この25年で8・7%から5・5%へと家計における証券保有率は大幅に低減したという事になる。ただこれは家計に占める率であって、世界から金融業者に掻き集められた金はカジノばかりに膨大に投入されているということである。

(3)「学者の反省と開き直り」は省略させて頂く。作者自身も嘲笑的になりそうになる筆を押さえつつ書いているようだし。

「金融危機を無駄にするな」に括弧が付いているのは、掛け声だけという意味である。アメリカの妨害でちっとも進まないからだ。
(なお、この件については、拙稿「スティグリッツ国連報告」の序文紹介でも書いたとおりである)
 リーマンショックが起こって、「100年に1度の危機」と叫ばれた08年秋のころはアメリカも大人しかったようで、金融安定への不協和音はゼロだったとのこと(ただ、この「危機」の長期的根本的意味が一般には3割も理解できていたかどうか、僕はそう思う。)ところが、国際機構をきちんとして罰則を入れるようなものには全くできなかった。決まった事は、G7よりもG20サミットが重視され始めて、保護主義を排し、経済刺激策を取ろうという程度だった。IMFとこれによる規制との強化とについて、新興国と西欧とがかなり主張して端緒についたはずだったが、その後はほとんど何も進まなかった。
 ここで作者は、世界政府、国際制度作りの歴史などの話を起こすことになる。特定分野の国際協力機関は20世紀初めの国際連盟やILO設立よりも前に12もできていたと述べて、「万国郵便連合」などの例を挙げる。
 同じ理屈を語って日本人に大変興味深いのは、日本の戦国時代統一の例が語られている下りだろう。
『日本が16世紀の終わりに一つの国になったのは、信長、秀吉、家康の武力による統合と、幕府という統治制度の意識的な創出が決定的だった』(P132)
 アジア通貨危機やギリシャ危機は、大国金融が中小国から金を奪い取る金融戦争、通貨戦争の時代を示している。そんな金融力戦争はもう止めるべく、戦国時代の戦争を止めさせた徳川幕府のように、金融戦争に世界的規制を掛けるべきだという理屈を語っているのである。IMF(国際通貨基金)のイニシアティブ強化以外に道はないということである。


 金融の国際制度とこれによる執行力ある万国金融規制についてさらに、前大戦中から準備されたケインズの国際通貨、バンコール構想も解説される。が、これはドル中心にしようとのアメリカの終戦直後の実績と強力との前に脆くも崩れ去ったということだ。ドルが基軸通貨になったいきさつ説明なのである。
 以降アメリカは自国生産量より4~5%多く消費でき、日本や中国はその分消費できない国になったということである。それぞれ膨らんだドルを米国に投資する事になってしまった。その意味では、中国銀行総裁、周小川が09年に「ケインズ案に帰るべし、新機軸通貨、本物の国際通貨の創設を!」と叫び始めた意味は大きい。中国は今や8000億ドルの米国債を抱え、不安で仕方ないのであろう(この8000億は現在では1兆2500億ほどになっている。文科系)。中国のこの不安は同時に、アメリカにとっても大変な不安になる。「もし中国が米国債を大量に売り始めたら。国家、家計とも大赤字の借金大国の『半基軸通貨』ドルは大暴落していくのではないか」と。周小川中国銀行総裁が「本物の国際通貨の創設を!」と叫ぶのは、そんな背景もあるのである。
 なお、これは私見の言わば感想だが、アメリカが中東重視から西太平洋重視へと世界戦略を大転換させたのは、以上の背景があると観ている。中国に絶えず圧力を掛けていなければ気が休まらないのだろう。

(第4回目、最終回に続く)
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世界の格差・「株主利益の最大化経済」の仕組(2)  文科系

2019年12月09日 08時27分50秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
中公新書、ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(2011年10月初版)の要約を3回ほどに分けて行いたい。同書が以下の3部に別れているのに合わせて。「金融化現象とは何か」、「これにより、社会、政治、教育などがどう変わるか」、「各国、国際機関による、これの弊害是正、金融改革の試み」である。今回はその第一部の要約とする。

 ただこの本、非常に難解である。最大の特長が21世紀日本経済(ある過渡期)の最新・最大テーマということなのだが、なんせ、日本語の達人と言っても外国人が書いた日本語。やはりどこか違うと言わざるを得ない。時に省略、時に冗長と、言葉の選択が普通の日本語とは違う。これに研究対象の難しさも加わったこの難物を、順不同、勝手に要約していく。それも、この続き第二回目はいつになるのやらという、お断りをも付して。

 第一部の目次はこうなっている。①金融化ということ、②資本市場の規模拡大、③実体経済の付加価値の配分、④証券文化の勃興、と。


 金融化について、ある人の要約が紹介される。『国際国内経済で、金融業者、企業の役割や、一般人の金融志向が増していく過程』。この「増していく」の中身は、こういうもの。社会の総所得における金融業者の取り分が増えたこと。貯蓄と企業との関係で金融業者の仲介活動が急増したこと。株主資本主義。政府がこの動向を国際競争力強化の観点から促進してきたこと。

 米企業利益のうち金融利益の割合が、1950年代までは9・5%であったものが急増して、02年には41%と示される。その後非金融業の巻き返しがあってやや減少期があったものの、2010年度第一四半期はまた36%まで来たとあった。サブプライムバブルの膨張・破裂なんのそのということだろう。

 次は、こうなった仕組みとして、金融派生商品の膨張のこと。
 著者は先ず、シカゴ豚肉赤味の先物市場投資額を、急増例として示す。初めの投資総額はその豚肉生産総費用にもみたぬものであったが、これが、生産費用とは無関係に爆発的急増を示すことになる。1966年の先物契約数が8000だったものが、2005年に200万を超えるようになったと。そして、これも含んだ金融派生商品全体のその後の急増ぶりがこう説明される。2004年に197兆ドルだった国際決済銀行残高調査による派生商品店頭売り総額が、2007年には516兆ドルになっていると。この期間こそ、08年に弾けることになったサブプライム・バブルの急膨張期なのである。同じ時期の現物経済世界取引総額とのこんな比較もあった。同じ2007年4月の1日平均金融派生商品契約総額が3・2兆ドルだが、これは世界のこの月の1日実体経済貿易総額(320億ドル)の実に100倍であると。

 これほど多額の金融派生商品の売買は、証券化という技術が生み出したものだ。
 証券化の走りは売買可能な社債だが、『住宅ローンや、消費者金融の証券化、様々な方法で負債を束ね「パッケージ」にして、低リスク・高リスクのトラッシュ(薄片)に多様に切り分けて売る証券や・・』というように進化していった。リスクが大きいほど儲かるときの見返りが大きいという形容が付いた例えばサブプライム債券組込み証券(の暴落)こそ、リーマン破綻の原因になった当の「パッケージ」の一つである。
 そんな金融派生商品の典型、別の一つに、これに掛ける保険、クレディット・デフォルト・スワップ(CDS)という代物がある。この性格について、有名な投資家ジョージ・ソロスが「大量破壊兵器」と語っているとして、こう紹介される。
『ゼネラル・モータースなどの倒産を考えよ。その社債の持ち主の多くにとって、GMの再編より、倒産した場合の儲けの方が大きかった。人の生命がかかった保険の持ち主に、同時にその人を打ちのめす免許を持たせるようなものだ』
 まさに「(会社再建よりも)打ちのめした方が儲かる」というCDSの実際が、投資銀行リーマン・ブラザースの倒産でも、見事に示された。倒産時のリーマン社債発行残高は1,559億ドルだったにもかかわらず、その社債へのCDS発行銀行の債務総額は4,000億ドルだったのである。社債を実際に持っている者の保険と言うよりも、単なるギャンブルとしての約束事だけの保険のほうが2・5も大きかったということになる。約束事だけへの保険ならば、競輪競馬に賭けるようなもので、無限に広がっていく理屈になる。

 こうして、こういうギャンブル市場がどんどん膨張していった。政府も国際競争力強化と銘打って証券文化を大いに奨励した事も預かって。各国年金基金の自由参入、確定拠出年金・・・。これらにともなって、機関投資家の上場企業株式所有シェアがどんどん増えていく。1960年アメリカで12%であったこのシェアが、90年には45%、05年61%と。そして、彼らの発言力、利益こそ企業の全てとなっていった。
「経営者資本主義から投資家資本主義へ」
そういう、大転換が英米圏で起こり、日本はこれを後追いしていると語られる。

 この大転換の目に見えた中身は語るまでもないだろう。企業から「金融市場への支払い」が、その「利益+減価償却」費用とされたキャッシュ・フロー全体に占める割合の急増。アメリカを例に取ると、1960年代前半がこの平均20%、70年代は30%、1984年以降は特に加速して1990年には75%に至ったとあった。
 彼らの忠実な番犬になりえた社長は彼らの「仲間」として莫大なボーナスをもらうが、「企業の社会的責任。特に従業員とその家族、地域への・・」などという考えの持ち主は、遺物になったのである。こうして、米(番犬)経営者の年収は、一般社員の何倍になったか。1980年には20~30倍であったものが、最近では彼の年金掛け金分を含んで475倍平均になっている。その内訳で最も多いのは、年当初の経営者契約の達成に関わるボーナス分である。全米の企業経営者がこうして、番犬ならぬ馬車馬と化したわけだ。

「証券文化」という表現には、以上全てが含意されてあるということだ。企業文化、社長論・労働者論、その「社会的責任」論、「地域貢献」論、「政治家とは」、「政府とは・・?」 「教育、大学とは、学者とは・・?」、そして、マスコミの風潮・・・。


(二部、三部に続く。ただし、ぱらぱらと。つまり、それぞれの間がかなり空くと思います)
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世界の格差・「株主利益の最大化経済」の仕組(1)  文科系

2019年12月08日 20時07分24秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 本年8月20日の新聞にこんな見出しの記事が出て、こんな書き出しになっていた。
『株主最優先を米経済界転換』!? 
『米主要企業の経営者団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は19日、株主の利益を最優先する従来の方針を見直し、従業員や顧客、地域社会など全ての利害関係者の利益を尊重する新たな行動指針を発表した。これまで米経済界は「株主利益の最大化」を標榜してきたが、大きな転換点となる』
 この記事の意味が分かる人なら、こう読んだことだろう。誠実な転換表明であるならば約半世紀ぶりの大転換だが、まー様子を見よう。なお、この新聞記事を紹介したエントリーが、ここの8月21日にありますから、ご参照ください。
 
 ところで、この半世紀世界経済の中心用語「株主利益の最大化」方針とはなにか。短期投資も含めた投資というその性格からくる秘密主義もあって一応全貌が分かっている人もほとんど居ない。これが、現在世界諸国家、諸国民の隅々にまで行き渡った超格差の源なのに。日本で言えば、国民一人当たり購買力平価GDPがこの25年で世界4位から31位に落ちたその原因も、実はこの仕組にただ流されてしまった政治にあるのであって、日本の貧困化、未婚率急増問題などなどの遠因もここにあるとも言えるのだ。

 以上につき、今後4回にわたってある本の内容要約をしていく。これは、戦後の1950年にイギリスから東大に留学してきて、以来去年亡くなるまで大の親日家であり続けた老政経学者ロナルド・ドーアによる、大好きな日本に警告を発した遺書のような著作だ。これを要約した旧稿の第1回目は、いわば「世界経済の金融化」の輪郭、その全体像の大づかみに当たるもの。

旧稿を順序を変えているので読みにくい部分もあるが、そこは読み飛ばしていただきたい。この順序の方がよりわかりやすくなると考えたということで、ご了承を。
 


【 米大企業社長たちはこうして「金融の馬車馬」に  文科系 2016年09月28日

 以下は、24日エントリー、ある本の抜粋である。ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書、2011年10月第一刷発行)。今後ここで、3部構成のこの本にあわせて、②、③と要約していく予定だ。この本の内容は、僕が10年ここで新たに勉強し直しては原稿を書き続けてきて、たどり着いた現代世界の諸不幸の大元の解説と言える。
 この本に展開されていることは、日本人にはなかなか書けないもの。ここに描かれた動きが日本で目に見えるようになったのは最近の事であるし、この最新の動きは、英米経済の動きと比較研究してはっきりと見えてくるというもの。作者は、イギリス経済学の伝統を学び継いだ上で、日本江戸期教育の研究目的で東大に留学され、以来熱心な日本ウォッチャーを続けられたというお方。しかも、この本自身も自分の日本語で書かれているようだ。訳者名が付いていないからである。
 以下は、その第一回目の要約のそのまた抜粋である。世界経済がこのようになったからこそ、今の世界の諸不幸が生じていると、そういう結論、大元解明のつもりである。

『米企業利益のうち金融利益の割合が、1950年代までは9・5%であったものが急増して、02年には41%と示される』

『機関投資家の上場企業株式所有シェアがどんどん増えていく。1960年アメリカで12%であったこのシェアが、90年には45%、05年61%と。そして、彼らの発言力、利益こそ企業の全てとなっていった』

『企業から「金融市場への支払い」が、その「利益+減価償却」費用とされたキャッシュ・フロー全体に占める割合の急増。アメリカを例に取ると、1960年代前半がこの平均20%、70年代は30%、1984年以降は特に加速して1990年には75%に至ったとあった』

『彼らの忠実な番犬になりえた社長は彼らの「仲間」として莫大なボーナスをもらうが、「企業の社会的責任。特に従業員とその家族、地域への・・」などという考えの持ち主は、遺物になったのである。こうして、米(番犬)経営者の年収は、一般社員の何倍になったか。1980年には平均20~30倍であったものが、最近では彼の年金掛け金分を含めば475倍になっている。その内訳の大部分は、年当初の経営者契約の達成に関わるボーナス分である。全米の企業経営者がこうして、番犬ならぬ馬車馬と化したわけだ』

『「証券文化」という表現には、以上全てが含意されてあるということだ。企業文化、社長論・労働者論、その「社会的責任」論、「地域貢献」論、「政治家とは」、「政府とは・・?」 「教育、大学とは、学者とは・・?」、そして、マスコミの風潮・・・』

 最後のこれは、24日には書いてない事。以下のような数字は日本人には到底信じられないもののはずだ。この本の73ページから抜粋した、アメリカ資本主義の象徴数字と言える。
『2006年のように、ゴールドマン・サックスというアメリカの証券会社がトップクラスの従業員50人に、最低2,000万ドル(当時のレートで17億円くらい。〈この記述周辺事情や、最低と書いてあるしなどから、1人当たりのボーナスの最低ということ 文科系〉)のボーナスを払ったというニュースがロンドンに伝われば、それはシティ(ロンドン金融街)のボーナスを押し上げる効果があったのである』 
 これだけの強食がいれば、無数の弱肉が世界に生まれる理屈である。2006年とは、08年のリーマンショックを当ブログでも予言していた史上最大のバブル、サブプライム住宅証券組込証券が頂点に達していたウォール街絶頂の時だった。この結果は、失った家から借金まみれの上に放り出された無数の人々の群であった。しかもこの動きはアメリカのみに留まらず、イタリア、スペイン、ポルトガル等々にも、そこの失業者の大群発生にも波及していくのである。こんな所業を放置しておいて、どうして世界の景気が良くなるなんぞと言えるのだろうか。
コメント (11) 】


 なお、明日以降3回の目次はこうなっている。①経済の金融化現象とは何か、②政治、社会、教育も「金融化」、③各国、世界機関の金融改革
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生涯未婚者の数  文科系

2019年12月08日 09時09分02秒 | 国内政治・経済・社会問題
 直近の「生涯未婚率」関連で、過去ログを再掲します。一緒にして考えてみたいので。


【 「日本は終わった国」という数字  文科系 2019年10月12日 | 国内政治・時事問題

 内容としては知っていた知識でここにも書いてきたことだが、こんな数字を突きつけられると、改めてつくづく標記のことを思う。その原因についても、ここで書き続けてきたことにあると、改めて分かったもの。購買力換算の国民一人あたりGDPが、この20年ちょっとで世界4位から31位に落ちたということが、国民生活、その人生にとって以下のようにこんな悲劇的数字をもたらしている。

『国立社会保障・人口問題研究所によると、生涯未婚率(五十歳までに一度も結婚したことのない人の割合)は2015年に男性23・4%、女性14・1%と急増している。30年には日本男性の三人に一人、女性の五人に一人が結婚しない社会になる可能性が高いという

 これは昨日の中日新聞コラム「紙つぶて」に担当者が書いた数字だ。この文章の題名は「結婚困難社会」。筆者は「しんきん経済研究所理事長」俵山初雄氏。結婚には魅力を感じてはいてもできない理由があって,そのことがこう書かれていた。『経済力のある男性と出会う機会がない』。それにしても今でももう、男の四人に一人、女の七人に一人が50歳までに一度も結婚できていないわけだ。

 このままでは日本の人口は減っていくばかりだ。「日本すげー!」ならぬ「日本ひでぇー」である。誰がこんな国にしたのか! どうにかして、直せないのか。直す道はあると言いたい。なにしろ、社会の生産力はこの30年取ってみても、ほんとうに飛躍的に伸びているのだから。それが十分に発揮されて、世界の多くの人々に回っていないだけなのだ、と。そうする道とは、例えば、昨日書いたエントリ-「米大統領選、ウォーレンは卓見」の中の、ウオーレンの公約などがそうだ。「金融規制」やGAFA規制を中心としたあの公約は、従来のアメリカ大統領候補の公約とは本質的に違うものだと言いたい。世界の「99・9%と0・1%」の問題をこそ取り扱っている。

 ここ30年の世界を「自然成長的」にこのようにした金融グローバリゼーションについて、アメリカでこういう「根本的」反省が始まったのだから、日本でも同じことが始まるのを心から期待したい。ちなみに、アメリカの大企業経営者団体が最近「株主資本主義は誤りだったから、改善していく」という声明を出したが、これが本心ならばすぐに金融規制が始まると言うことになるはずだ。ウォーレンの公約とこの声明とが同根のものであって欲しいと、そんな可能性さえ期待しているのだが、はて?】
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内閣府の笑える「少子化分析」  文科系

2019年12月08日 08時51分00秒 | 国内政治・経済・社会問題
 日本の出生数が1970年代から減少に歯止めがかからず、2019年度が「近年日本史上最少」になることが確定したのだそうだ。近年日本史上というのは、統計を取り始めたこの130年でということだ。日本政府はこの対策に努めてきたのだが、その理由は急速な少子化が社会保障などに困難を来すようになるからと説明されてきた。今年も内閣府のその原因分析を発表して曰く。「未婚化、晩婚化が原因」なのだそうだ。
 こんなきれいな言葉だけ? そこで、こう問いたい。
「では、その未婚化、晩婚化の原因は何か?」と。

 これに関わると観られるこんな数字を政府は同時に発表している。50歳まで一度も結婚したことがない人の割合「生涯未婚率」が、この25年間で男は20%、女は10%上昇したのだそうだ。現在25歳の人々が生まれた時から今にかけて結婚しない男性が5人に1人も、女性が10人に1人も増えたのでは、確かに子どもは少なくなる理屈だ。が、なぜ男の方が女に比べて、こんなに生涯未婚者が多くなったのか。これを分析しなければ、まともな少子化分析とは言えないだろう。それは、容易に想像はつく。経済力で、選んでもらえない男が増えているからではないか。この25年と言えば、日本の国民一人当たり購買力平価GDPが、世界順位一桁代前半から31位に落ちたちょうどその期間に当たるのだから。自分が育った父の収入、家計など思いもよらぬほど貧しくなった日本で、さらに低収入の男性は結婚対象にされにくいと見るのが極めて自然な分析になるはずだ。

 晩婚化、未婚化は、この国をこんなに貧しくした政治の責任であると考える。特に安倍長期政権は最長政権と言うだけに、失敗した「三本の矢」、「インフレターゲット2%目標」など、その責任は大きい。失敗続きで延ばし延ばしにしてきた2%目標はいつの間にか語らなくなっているのだし。それだけではなく、この「3本の矢政治」の結末として、GPIFの去年第4四半期には15兆円の損失を出している上に、現在の株価等官製バブルには同様の損失を出す空売り暴落の近未来さえ待っている始末。そもそも、世界31位まで落ちた国民一人当たり購買力平価GDPを、安倍長期政権は一体どう弁明するのか。それもなしに「少子化対策」などと語っても、何の「やる気」も見えないのである。
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経済学老大家の現状批判  文科系

2019年12月07日 10時25分46秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 グローバル経済批判が続いてきたから、ここでまた一つ老経済学大家の過去ログを追加。


【 紹介「反骨の経済学者」 文科系 2016年01月31日 | 国際経済問題

 本日中日新聞6面に素敵な記事があった。近ごろ見当たらなくなった経済学史の伝統を踏まえた大学者の晩年の事を書いている。そのままご紹介したい。著作権の侵害になるのだろうが、そこはまーこの新聞の熱烈愛読者ということと、こんな論調を世に広げるためという姿勢とから、時には勘弁して頂いて・・・・。


『 反骨の経済学者  2016/1/31 朝刊

「不確実性の時代」「ゆたかな社会」の著書で知られるジョン・ケネス・ガルブレイス氏(一九〇八~二〇〇六年)。体制擁護の主流派経済学に背を向け、資本主義の病巣に警鐘を鳴らし続けた。反骨の経済学者を米国の自宅で取材したのは亡くなる三年前だった。
 既に94歳。ベッドで寝たきりだったが、批判精神は健在だった。当時、小泉政権が進めていた日本の構造改革を「社会的弱者の切り捨て」と断じ「社会全体が豊かになるよう物資や収入を実現できない人にもっと目を配るべきだ」と懸念を口にしていた。
 自ら二度の世界大戦を経験し、貧困や失業の解消こそ経済学の使命と考えるガルブレイス氏にとって焼け野原から復興を遂げた戦後日本は「まさに理想のモデルだった」。それだけにグローバル経済に乗り遅れまいと、欧米の競争社会を後追いする日本の姿に失望感を隠さなかった。
 あれから10年余り。格差社会がもたらす貧困は今や「自己責任」の名の下で放置され、社会の隅々にはびこる。「ノー・レフト・ビハインド(誰も取り残されるべきではない)」。そう言って取材を締めくくった老経済学者は今の日本をどう見ているだろうか。(社会部長・寺本政司)』

 今のような経済学主流が、長く続くわけがない。ノーベル賞学者・スティグリッツのように、世界金融資本を改めて批判し始めた人も居るのだし、口だけでは「給料を上げなければ、経済は悪循環だけだ」と、アベでさえが広言する時代になった。この悪循環って、何も一国だけのものではなく、世界的に需要不足・恐慌というな悪循環なのである。かの有名な竹中平蔵でさえも「トリクルダウンはない」と改めて広言し始めている。日銀が大銀行にマイナス金利なんて、こんな経済、続くわけがないではないか。こんな偽りの世界が30年以上も、良く続いてきたものだとしか思えないのである。

 もっとも30年程度の過渡期の時代と観れば、分からないことではないのかも知れない。それも、世界大金融資本の大暴力のなすがままに世界をただ委ねただけという意味で、とんでもない「自然成長?」の時代!
 そう言えば、今は世界大金融を非難するスティグリッツも、アジア通貨危機を初めはこう観ていた。アジアにタイを中心にバブルがあって、これが「自然に」弾けたもの、と。ちょっと後には、彼はこれをこう批判したものだ。「世界の石油と農業との独占資本の、意識的な仕業である」。】
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対米闘争の産物、国連の新自由主義経済批判文書  文科系

2019年12月06日 11時01分58秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 ここ何回か、主流経済学者らが認め始めた「グローバリゼーション経済の破綻」関係の情報をご紹介してきた。安倍政権も同時期に招待して教えを請うたことがあるポール・クルーグマンとジョセフ・スティグリッツという二人のノーベル経済学賞受賞者が新自由主義経済破綻を認めた声も上げて。ちなみに、クルーグマンはアベノミクスの生みの親とも言うべきお方である。安倍政権は、彼が進めたように財政出動でインフレターゲット、アベノミクスは失敗と認めたようで、その2%目標そのものを既に下ろしてしまった。
 他方のスティグリッツは、クルーグマンよりも遙かに早く新自由主義経済を根本から批判し始めていた。すでに、タイや韓国などアジア新興経済発展国をどん底に落とし込んで世界的に有効需要を消失させたアジア通貨危機の研究からこの反省は始まっていたが、以下に観る「国連スティグリッツ報告」(2009年発表)は新自由主義経済への根本的批判になっている。というのは、この報告があの「100年に一度(の大恐慌)」と言われたリーマンショックの国連総括書だからである。
 なお、この報告完成までに、アメリカ政府がどれだけの妨害をしてきたことか。以下の文中末尾にこんな表現が入っているが、これはそういう米政府の妨害行動に進呈した比喩的形容なのだ。
『私はマハトマ・ガンジーの生涯と教えからもインスピレーションを得た。彼は嘗てこう述べている。「最初彼らはあなたを無視する。次いで彼らはあなたをからかう。そして彼らはあなたと戦う。そしてあなたは勝利する。」』

 国連議長からこんなことを言われたアメリカ! これでは現在なお、アメリカが国連を敵視し続けるわけだ。そして、この米の以降全ての国連敵視言動のポイントにおいて、アメリカが世界の民主主義を敵に回していると言うことにならざるをえない。こうして、今のアメリカの国際行動はほとんど暴力的なものに堕落して行きつつあると観ることができる。


【 スティグリッツ国連報告・序文要約  文科系 2014年11月17日

 改めて表記のものの、まず序文を紹介するが、その紹介本文以前に、この報告周辺の概要をまず見ておきたい。

 この報告の正式名称は、2009年9月21日に出された「国連総会議長諮問に対する国際通貨金融システム改革についての専門家委員会報告ー最終版」と言う。委員会メンバーは20名で、米、独、仏や、南アフリカを除いたBRICS諸国代表など、日本からは榊原英資が参加し、総会議長特別代表も2名加わっている。当委員会委員長がノーベル経済学賞受賞者であり、クリントン政権の大統領経済諮問委員会委員長などを経て1997年~2000年に世界銀行の上級副総裁およびチーフエコノミストを勤めたジョセフ・スティグリッツであるところから、この文書が彼の名前を冠してこう呼ばれているのだろう。報告名称に付された「国際通貨金融システム改革」とは、報告前々年から前年にかけて世界を揺るがせたリーマンショックを受けていることは言うまでもない。

 報告全体は250ページを越える物で、冒頭に報告を出すよう当委員会に委嘱した当時の国連総会議長、ミゲル・デスコトの序文が付いている。今回は、これの抜粋をご紹介する。このデスコト議長は、14日拙稿で以下のように紹介した世界史的人物とも言える1933年生まれだ。
【 スティグリッツも勤めたコロンビア大学でジャーナリズム科修士の学位を取っているニカラグァの元外務大臣であるという。こんなすばらしい紹介が付いていたお人だ。
「1979年~90年、ニカラグア外務大臣として、内戦の平和解決に貢献。1984年、米国の軍事干渉を国際裁判所に提訴し、勝訴。2008年6月、国連ラテンアメリカ・カリブ諸国グループより全会一致で国連総会議長候補に選出。2008年9月~2009年9月、第63回国連総会議長」
 上のニカラグア内戦の歴史、状況とその終了、そこでデスコトが果たした(らしい)役割などについては、当ブログ拙稿『ニカラグア・アメリカ「対テロ戦争」の源流 2007年06月14日 | 国際政治・時事問題(国連・紛争など)』を参照されたい。この拙稿へは、右欄外の「バックナンバー・年月欄」で、07年6月クリックーーその6月カレンダーが出るから14日クリックによって、アクセスできる。】


 さて、この序文要約紹介を文章自身の抜粋形式で進めるが、最初の書き出しはこうなっている。

『2009年6月26日、驚くべきことが起こった。「国際金融経済危機とその開発への影響」についての幅広く意義深い声明を、192ヶ国で構成される国連がコンセンサス方式で採択したのである。分析と勧告は痛みの短期的軽減から深い構造変革まで、危機への対応策から世界金融経済構造の変革まで全域に及んだ。』

『6月の決議は2007年8月以降、大恐慌(1929年の。第二次世界大戦の原因になったもの。文科系注)以来最大の世界経済不況を記録した長きにわたる国内と地域の危機から集積した知的資本を引き出した』

『蓄積された経験は、彼らの今度の仕事は10年単位でなく100年単位で評価されるだろうということを示していた』

『彼らはこの最終報告「結論」に書いてあるように、活気づかせ大胆に考えるように支援してくれた。
「この危機は、経済に何かが起こった、何か、回避は勿論、予見さえできなかったことが起こったというような、単なる『百年に一度の事故』ではない。我々はその逆を考える。危機は人間がつくったものであると。これは民間セクターによる過ちと、誤って適用され失敗した公的政策の結果なのだ(第6章第1項)」』

『我々の世界経済は故障している。ここまではだれもが認めるところである。しかし、では正確に言うと、どこが故障していて修理する必要があるのか、ということになると大論争になってしまうのである』

『これらの危機は、この35年間世界に適用されてきた支配的な経済観によってしっかりと相互に関連づけられ、結びつけられていた』

『この点についての本報告の下記の部分は力強い。「過剰生産力と大量失業が同居する世界の中で、地球温暖化や貧困の撲滅という挑戦に応えて行くことを含めて、未達成の地球的課題が残されている。このような状況は受け入れ難い。(第1章第11項)」』

『本報告の基本的視点は、我々の複合危機は失敗或いは制度の失敗の結果ではなく、制度そのもの(組織と原則、歪められ損なわれた制度の仕組み)がこれら多くの失敗の原因だということにある』

『米国の代表は決議採択後の発言で、「国連は・・・ 今回の文書で述べられている多くの問題について、意味のある対話の方向を提起したりふさわしい場を提供したりする専門知識もマンデート(権限とか委ねられる力量とかの意味ー文科系)も持っていない、というのが我々の強い意見である」と述べた』

『私はマハトマ・ガンジーの生涯と教えからもインスピレーションを得た。彼は嘗てこう述べている。「最初彼らはあなたを無視する。次いで彼らはあなたをからかう。そして彼らはあなたと戦う。そしてあなたは勝利する。」』

『専門家委員会の報告と6月の決議文書は、我々の国連を通して真実のために戦い続けようという、招待状或いは勧告である』 】


 さて、今これを読み返すと、アメリカ経済界関係者自身が新自由主義経済への根本的反省を始めたという事態が、実に感慨深い。米経営者団体の「株主利益最大化方針は誤っていたから、今後こう正していく」との表明?? クルーグマンのこんな発言。
『アメリカの製造業を支えてきた中間層が経済・社会的な大変動に見舞われることに気付かなかった。中国との競争でアメリカの労働者が被る深刻な痛手を過小評価していた』
 ただし、このアメリカが黙って中国の後塵を拝することになっていくなどとは、誰も考えつかないはずだ。それで、世界は、どうなる? 日本はどうする??  
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世界最高手腕サッカー監督2人のこと  文科系

2019年12月05日 21時24分36秒 | スポーツ
 イングランドリーグのアーセナルが新監督を探していて、シメオネの名が上がっているそうだ。シメオネさえうんと言えば、アーセナルにとってこんな良い監督はちょっといないはず。

 このシメオネは、現世界で3本指に入る名監督と知る人は知っている。今世界監督順位を付ければこうなる。①ユルゲン・クロップ、②ジョゼップ・グァルディオラ、③ディエゴ・シメオネと。そして、もしアーセナルがシメオネを取ったら、このチームはたちどころにリバプール、マンチェスター・シティとプレミアリーグ優勝、チャンピオンズリーグ優勝を争うという、そんな力をシメオネは持っていると、僕は観てきた。強くなると言う意味で世界最先端の優れた戦略を考えて、これを指導する力があるというのはもちろん、監督としてのモチベーター能力がクロップと同様に高い人物と、観てきたからだ。モチベーター能力が高くないと、一つのチームを長く強いままにしておく力を保てないが、シメオネはこれをスペイン・アトレティコ・マドリーで長く示してきたという希有の人物である。

 なお世界最高手腕の監督談義として、もう一つ。名監督ではあったが、急速なサッカー変化に対してちょっと時代に遅れた感じがあったブレンダン・ロジャースが、ここに来て急台頭してきた。レスターを率いて、マンCを押さえた2位が凄い。この両チームでは、選手の力量が問題なくマンCが上だからである。
 このロジャースは、監督としてはモウリーニョの系統として育ったと聞いた覚えがあるが、ここに来て現代サッカー学び直しが上手く行ったのだと確信する。ただ、これは彼がまだ48歳だからできたこと。素晴らしい!
コメント (5)
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新自由主義経済は誤っていた!  文科系

2019年12月05日 11時31分37秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 以下の旧稿は、12月1日「米経済学者達の反省が深刻」に対応して再掲するものです。経済学者も経済ジャーナリストも全米経営者団体でさえ今や、「グローバリゼーション・新自由主義経済は誤っていた」と言いだしたのはなぜか。アベノミクスの生みの親同然のポール・クルーグマンは、こう語っているのだが。
『アメリカの製造業を支えてきた中間層が経済・社会的な大変動に見舞われることに気付かなかった。中国との競争でアメリカの労働者が被る深刻な痛手を過小評価していた、というのだ』
 もっとも、米主流経済学者らや全米経営者団体がこう語り出さなくとも、何よりもこの歴史的事実こそ、グローバリゼーションが誤っていたとの証明。トランプ・アメリカが事もあろうに保護貿易に走ったことが。新自由主義経済の本家が形振り構わず保護貿易に走って、数々の貿易障壁を設けるとは! そもそもこんな姿は、グローバリゼーションで自国が負け始めてからその誤りを認めるという醜すぎる醜態でしかないのだ。アメリカ経済は、中国に負けつづけるのか!


【 NHK・BSが、こんな番組!  文科系 2018年01月04日 | 書評・番組・映画・演劇・美術展・講演など

 3日の21~23時、こういう題名の放送があった。
『闇の力が目覚める時・・・成長無き時代を生きる世界の知性のシナリオ』


 この放送の結論は題名の通りで、資本主義自身が内部にこれを破壊する闇の力を育て、やがて自壊するだろうというもの。このことを、マルクスの思想でもあり、その後の経済学者シュンペーター、ケインズの言葉にもこうある通りにと再三にわたり紹介するという形で、解説していくというもの。
 もちろんこの結論を主として、現代世界の経済学者、哲学者らに、金融グローバリゼーションが現代の闇の力をここまで育ててきて、「この今の闇の力の行く末は、(新たな)創造か死か」という形でも語らせていく。
 最もよく出てきたのがフランスのダニエル・コーエン、そしてイギリスのスキディルスキー、ドイツのウルリケ・ヘルマン、さらにはアメリカのジョセフ・スティグリッツやチェコの二人に、加えてニューヨークのあるトレーダーまでが、それぞれ何度も何度も出てきたものだ。

 聞き終わって僕はこんなことを感じていた。僕がここに12年間展開してきた金融グローバリゼーション世界支配の現状批判論やその行く末論と、ほとんど同内容であると。この同内容は、言ってみれば必然なのだ。この番組の骨子となる歴史的経済理論が、マルクス、シュンペーター、ケインズらのそれであってみれば。なによりも、闇の力とその目覚めに関わる社会現象として、これらのことが上げられていたこと。

 金融によって雇用が奪われて給料、購買力がどんどん下がっていること。ポピュリズムというのは政治的(危機)用語であって、危機はむしろグローバリゼーションが作った格差、不平等にあること。1980年のちょっと前のレーガニズムとサッチャリズム政治以降、金融資本主義が「悪徳の栄え」のように育って来たこと。これを擁護すべくレーガンが唱えた「トリクルダウン」も、嘘だったこと。銀行と政府とが結託して全てを動かす「富が固定した」社会になったということ。
 ちなみに、最後の方でケインズのこういう予言をスキディルスキーに語らせていた所までが、ここで僕が述べてきたことと同じだった。いやそれ以上にキツイ表現とも言える。
「長期的に見れば、1930年代にケインズが予言したとおりに、週20~25時間労働にならざるをえないだろう」


 感想の最後である。金融資本主義の株売買を通じた世界企業支配の問題点について今のような隠蔽状態が続けられるわけが無く、やがては世界のマスコミが実態調査報道、報告などを次々と始めるに違いない。この支配の結果が、世界に溢れる失業者や不安定労働者の大群、大変な格差の問題などであってみれば、そうならないはずがないのである。NHK・BSのこの特集番組のような報道が、近く世界にどんどん増えていくはずだ。この点で同番組では、アメリカのお膝元、米大陸の大国ブラジルにおける世界有数の酷い格差が、大きく強調されていた。凄まじい格差とは、大金持ちも居るということであって、それと対照をなす超大規模なブラジルのあの貧民地域の酷さを思い浮かべられたい。

 その上で残る最後の問題、決戦の場は、その時にアメリカの国連「実質支配」もしくは「国連無視」が今のように持続できるかどうかだと、愚考していた。金融グローバリゼーションは各国では規制できないからである。むしろ、各国でこれを規制できないからこそ、世界金融による世界企業支配がここまで進んできたのではなかったか。国連でこの本格的規制論議が始まって、米英などがその金融専横を諦めてこれに従うしか、世界諸国民が普通に職業を確保していく道はないのだと思う。

 ちなみに、僕には、現在のアメリカ・トランプ体制は、こんな専横を世界に通してきた米国政治勢力による最後の抵抗のようにも見えたものである。

 このBS2時間番組は、普通なら再放送があるはずだ。ここの常連読者200名ほどの方々には、是非ご覧になることをお勧めしたい。ただし、どこかから待ったが掛かって、再放送が無くなるかも知れないなどとも、愚考していたものだ。
コメント (5) 】


 書き終わって今思う。アメリカの本音は、理論ではなく、むしろ、自然成長的経済実力で敗れたところから出てきたのだろうと。少々前までは、米金融でもって中国株式を買い占めることができるから、米金融の世界支配は可能と振る舞ってきた。どうやらこれが無理と認識したらしい。でも、キッシンジャーやネオコンのような政治屋は決して諦めないだろう。そこに現世界の明日、米中衝突という非常な難しさがあるのだ。
コメント (7)
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