![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/67/de/baa3a3c7ff9f8a5a267f2578caaf0634.jpg)
矢島 新著 PIE Books (2011/03)
これも図書館で借用したが,蔵書としてときどき眺めたくなった.
「序 日本の素朴絵,1 絵巻と絵本,2 大画面の中の素朴,3 庶民信仰の温もり,4 庶民のための素朴絵,5 知識人の素朴,6 工芸の素朴美」という構成.
素朴派というとルソー等を連想するが,著者は,日本の素朴絵はそれとは違うと言う.西欧の絵画は,細部まできっちりと描かないと気が済まない.それはルソーも例外ではない.こちらではほとんど余白の,一筆書きみたいな絵も珍重される.わび・さびと唱え,ひんまがった茶碗を「お宝」とする国民性がこうした素朴絵を産んだのだろう.
百聞は一見にしかず,図版からいくつかご覧に入れると,
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/70/43251c555e879918d5da2507c5cc3c9e.jpg)
江戸時代の大津絵.青面金剛図において,金剛の両脇に控える2匹の猿の内の1匹.紙に皺が寄って,そこがまた味を出している.青面金剛は庚申信仰の本尊だそうだ.
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0e/6c/4e9c07b9626e5714983a8a8dd52e4dce.jpg)
室町時代の浦島絵巻.「中からぱっとしろけむり たちまち太郎はおじいさん」の図だが,しろけむりが円弧を描いて太郎を直撃するのは,現代人のイメージとかけ離れている.
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/be/ace4ec88d98f2690befcb6cc6c5d8cd3.jpg)
室町時代の,平清盛による人口島造営をテーマとする築島物語絵巻のなかの,奇妙な建物.厳島神社の骨格を連想させる.いちばん手前の窓がシュールだ.
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/7c/4c010dbd88c5e7916668070fdd7fbc9e.jpg)
小野道風を描いた幟旗に登場する蛙達.小野さんは何度失敗しても柳に跳びつこうとする蛙を見て,努力することを学んだそうだが,蛙達の表情が小野さんの表情よりずっと哲学的だった.最初のお猿さんもそうだが,日本の絵では人間より動物の方が人間くさい.
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/8f/d822aef24cf9a1601a55a0ae3fb7a7b3.jpg)
「5 知識人の素朴」の一例で,与謝蕪村によるもの.文字は「学問は尻から抜けるほたるかな」.上手すぎ洗練されすぎで素朴とは言えないかも.
この本には「ゆるい」という形容詞が何度も出てくる.白穏,仙厓,乾山,蕪村なども,難しく考えずに,とりあえずは「ゆるかわ」ぶりを楽しめばいいということだろう.
これも図書館で借用したが,蔵書としてときどき眺めたくなった.
「序 日本の素朴絵,1 絵巻と絵本,2 大画面の中の素朴,3 庶民信仰の温もり,4 庶民のための素朴絵,5 知識人の素朴,6 工芸の素朴美」という構成.
素朴派というとルソー等を連想するが,著者は,日本の素朴絵はそれとは違うと言う.西欧の絵画は,細部まできっちりと描かないと気が済まない.それはルソーも例外ではない.こちらではほとんど余白の,一筆書きみたいな絵も珍重される.わび・さびと唱え,ひんまがった茶碗を「お宝」とする国民性がこうした素朴絵を産んだのだろう.
百聞は一見にしかず,図版からいくつかご覧に入れると,
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江戸時代の大津絵.青面金剛図において,金剛の両脇に控える2匹の猿の内の1匹.紙に皺が寄って,そこがまた味を出している.青面金剛は庚申信仰の本尊だそうだ.
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室町時代の浦島絵巻.「中からぱっとしろけむり たちまち太郎はおじいさん」の図だが,しろけむりが円弧を描いて太郎を直撃するのは,現代人のイメージとかけ離れている.
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室町時代の,平清盛による人口島造営をテーマとする築島物語絵巻のなかの,奇妙な建物.厳島神社の骨格を連想させる.いちばん手前の窓がシュールだ.
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小野道風を描いた幟旗に登場する蛙達.小野さんは何度失敗しても柳に跳びつこうとする蛙を見て,努力することを学んだそうだが,蛙達の表情が小野さんの表情よりずっと哲学的だった.最初のお猿さんもそうだが,日本の絵では人間より動物の方が人間くさい.
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「5 知識人の素朴」の一例で,与謝蕪村によるもの.文字は「学問は尻から抜けるほたるかな」.上手すぎ洗練されすぎで素朴とは言えないかも.
この本には「ゆるい」という形容詞が何度も出てくる.白穏,仙厓,乾山,蕪村なども,難しく考えずに,とりあえずは「ゆるかわ」ぶりを楽しめばいいということだろう.
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