最相 葉月「星新一 1001話をつくった人 (2007/3)
『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』をはじめとする文庫はいまも広く読み継がれ、ネット社会の出現や臓器移植の問題性などを予見したことでも注目される作家・星新一。本書はその生涯と実像に迫るノンフィクション大作です。---「波」2007年4月号
著者はあの「絶対音感」の著者.2005年には新潮文庫から「あのころの未来―星新一の預言」を出版している.
学生時代からの星新一ファンなので - この本で見ると最初のショートショート集「人造美人」が大学一年の時だ - 大枚をはたいてこのハードカバーを購入.なかほどに荒俣宏の星新一を賞賛する談話 (ある種の芥川龍之介) が載っているが,当時はそういう受け取り方だった.
この本によれば,高校時代に夢中になっても,大人になると全部忘れてしまうのがふつうらしい.ぼくの場合「さまよう犬」「午後の恐竜」などよく覚えている.タイトルは忘れていてストーリーは覚えているというのもけっこうある.
著者の星新一への思いが詰まった本.この思い入れが時として煩わしく感じられるときさえある.星新一の感情を一切廃した,ぽきぽきとした文章と対照的.
昭和26年の父・星一の死後,その経営する製薬業を引き継いだものの,不良債務の山・多額の税金未納・社員の老齢化・設備の老朽・経営不振を前に,何もできないまま,悪夢のような数年間を過ごすあたり,痛々しい.また1001作のショートショートを仕上げた後の余生もやはり痛々しい.
最後まで文学賞にこだわったあたりは,ぼくにとっては意外な一面.
真鍋博,和田誠にもふれているが,雑誌・PR誌に載ったときのイラストが単行本化・文庫化されるとなくなってしまうのはつまらないことだ.
この本に関しては,装丁,とくにカバーを取り去った後の装丁が良い.
『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』をはじめとする文庫はいまも広く読み継がれ、ネット社会の出現や臓器移植の問題性などを予見したことでも注目される作家・星新一。本書はその生涯と実像に迫るノンフィクション大作です。---「波」2007年4月号
著者はあの「絶対音感」の著者.2005年には新潮文庫から「あのころの未来―星新一の預言」を出版している.
学生時代からの星新一ファンなので - この本で見ると最初のショートショート集「人造美人」が大学一年の時だ - 大枚をはたいてこのハードカバーを購入.なかほどに荒俣宏の星新一を賞賛する談話 (ある種の芥川龍之介) が載っているが,当時はそういう受け取り方だった.
この本によれば,高校時代に夢中になっても,大人になると全部忘れてしまうのがふつうらしい.ぼくの場合「さまよう犬」「午後の恐竜」などよく覚えている.タイトルは忘れていてストーリーは覚えているというのもけっこうある.
著者の星新一への思いが詰まった本.この思い入れが時として煩わしく感じられるときさえある.星新一の感情を一切廃した,ぽきぽきとした文章と対照的.
昭和26年の父・星一の死後,その経営する製薬業を引き継いだものの,不良債務の山・多額の税金未納・社員の老齢化・設備の老朽・経営不振を前に,何もできないまま,悪夢のような数年間を過ごすあたり,痛々しい.また1001作のショートショートを仕上げた後の余生もやはり痛々しい.
最後まで文学賞にこだわったあたりは,ぼくにとっては意外な一面.
真鍋博,和田誠にもふれているが,雑誌・PR誌に載ったときのイラストが単行本化・文庫化されるとなくなってしまうのはつまらないことだ.
この本に関しては,装丁,とくにカバーを取り去った後の装丁が良い.