Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

佐藤忠良自伝「つぶれた帽子」

2011-08-30 09:26:19 | 読書
中公文庫(2011/08)

1988年日本経済新聞社からの単行本の文庫化.グラビアを参照しながら本文を読んだ.

著者は今年亡くなった彫刻家.淡々とした筆致.

唯物史観的芸術論の文庫本のために留置場に入れられたり,シベリアに抑留されたり,たいへんだ.

留置場では自分の「忠良」という名前に閉口し,「自分の子供には絶対意味のある名前はつけまい」というこだわりになったとのこと.

「橇で死体を埋めに行く捕虜たち」というシベリアで描いたらしいスケッチがある.
実弟もシベリアに抑留され,香月泰男と同じ収容所だった.香月がシベリア・シリーズを作品としているのに比べ,帰国後そういうことはしていない.

中学の同窓,作家 船山馨との交友ほか,群馬の岩瀬さん,朝倉摂,桑沢洋子,...,いろんな人が登場する.
70歳を目前にしたパリで個展では,30歳の時に作った「母の顔」が評判になる.... 「人生の終盤に来て初心を教えられた感じ」.

世田谷美術館館長による解説には,いろんなエピソードが加えられている.

この絵本「おおきなかぶ」のイラストも佐藤忠良.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パール・S・バック 『つなみ』

2011-08-28 09:00:47 | 読書
つなみ―THE BIG WAVE,パール・S・バック著, 黒井 健 挿画,径書房 (2005/02).
作者は1938年ノーベル賞受賞.代表作は「大地」だろうが,「神の火を制御せよ 原爆をつくった人びと」という小説も書いている.

原作の出版は1947年.著者の指定により北斎と広重の版画が添えられていた.この訳本はトレヴィル1988年刊「大津波」の復刊.黒井 健の挿画がふんだんに入って,絵本のような仕上がり.翻訳者 (北面ジョーンズ和子、小林直子、 滝口安子、谷信代、弘中啓子) の名はあとがきにしかない.

Youtube に朗読の動画がある.この翻訳では,登場人物が西日本の方言を使っている.

原発がなかった時代の日本が,パール・バック女史によって美化されていて,ちょっと面映い.

日米合作で映画化されたが,日本では公開されなかったとのこと.出演は,早川雪舟,伊丹十三,ミッキー・カーティス,ジュディ・オング.日本人が英語をしゃべる映画だとしたら,観たくない.

図書館で借用.幸か不幸か,誰も借りていなかったらしく すごくきれい.
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ルイス・バラガン自邸

2011-08-26 08:35:47 | お絵かき


何年か前にワタリウム美術館で「ルイス・バラガン邸を訪ねる」というタイトルの展覧会があったとのことだが,中村好文「続・住宅巡礼」新潮社(2002) でも紹介されていた.
「自邸」というのは,建築家が自分のために建てた家のこと らしい.

写真をみて,例によってアクリル絵具で CD ケースの内側から書いたもの.
実際のバラカン邸とは左右が逆. この 写真では分からないが床は濃い緑.

この階段は怖いかも.


今月末締め切りの仕事をかかえているのだが,気が乗らないところにもってきて,また暑くなってきた.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

田島征三の大地

2011-08-24 09:06:39 | お絵かき


ふくやま美術館の特別展.

田島さんのメッセージが貼ってあって,「絵本は本になったものが作品であり,原画は印刷してしまえば絵本とはべつのもの.でもいっぽう,原画は原画で芸術作品と考えている」とのことである.

田島さんの絵は「ふるやのもり」のような,
一気に描く,ある意味で乱暴な絵という
イメージを持っていたが,
この,絵本「ふきまんぶく」のなかの一枚のように,
丁寧な絵も描くのだ,と感心した.
たしかに,この絵は絵本のストーリーを知らなくても,
独立した絵画として鑑賞できる.
でも,この誇張遠近法はやっぱり田島流かも.

会場には絵本が沢山置いてあって,「ふるやのもり」も「ふきまんぶく」も読了できた.

蕗という名のお嬢さんが産まれた一週間後に絵本「ふきまんぶく」が完成したのだそうだ.
ジャズ研で fukiman をメールアドレスにしていた方がおられた.教養高い彼女のこと,きっと このあたりから採られたのでしょう.


さて,田島さんの絵はどんどん変わっている.線画とか,木の実を使ったものもある.
それでも 田島征三は田島征三.
モードをやっても・電気楽器を使っても,マイルスはマイルス...と,同じだろうか,違うだろうか.


自己宣伝ですが,拙著・電子書籍「ドレミの科学」が,DL-MARKET, http://www.dlmarket.jp/product_info.php/cPath/799_800/page/1/products_id/145552
よりお求めただけます.ワンコイン 500 円です.

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

猫の二重唱

2011-08-22 07:33:57 | 新音律
ふくやま美術館「田島征三の大地」に行ったら,ロビーコンサートに遭遇した.

池田尚子(ソプラノ)、福永真弓(ソプラノ)、上杉智穂(ピアノ).聴く方は満席で,おばさん+おばあさん (出演者ゆかりの方が多い模様) 7 割,こども 1 割,おじいさん 1 割,その他 1 割.金子みすゞの童謡など.

なかで面白かったのが猫の二重唱.
オス猫とメス猫の二重唱とする解釈 ? もあるらしいが,この日は同性二匹がボール紙のお魚を取りっこするという演出だった.



Rossini cat duet と入れたら Youtube で多数ヒットした.この映像に比べると,今回はピアノ伴奏でこじんまりと演ったせいもあり,かわいらしい仕上がりだった.
ロッシーニ作曲ということになっていて,MC でもそう言っていたが,ほんとは違うらしい.

用意 ? のアンコールに移ろうというところで,客席のおじ(い?)さんから「荒城の月」のリクエスト.一瞬退かれたが,そこはプロ,一番だけだが そつなくこなしておられた.

この日出演された池田さんのリサイタルがあります. 9/9 1900 広島県民文化センターふくやま.


次は自己宣伝ですが,拙著・電子書籍「ドレミの科学」が,DL-MARKET, http://www.dlmarket.jp/product_info.php/cPath/799_800/page/1/products_id/145552
よりお求めただけます.ワンコイン 500 円です.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エラリー・クイーンのラジオドラマ

2011-08-20 06:59:05 | 読書
エラリー・クイーン 著, 飯城 勇三訳「死せる案山子の冒険―聴取者への挑戦〈2〉」 論創社(2009/3)

図書館でほとんど借り手がなかったらしく,しおり紐もきれい.

エラリー・クイーンといえば,いまでは「ローマ帽子の謎」以下の国名シリーズや「X の悲劇」「Y の悲劇」「Z の悲劇」だが,早川のミステリマガジンの前身が日本語版エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン (EQMM) だった.

この本は 30 分あるいは1時間のラジオドラマの脚本集で,放送されたのは1930年代末から40年代初頭.最初に登場人物の一覧表があって,このフォーマットが独特.読者ならときどきここを参照できるが,ラジオではそうはいくまい.

台詞を「アドリブで」との指定も散見.クイーン氏はさぼって,台詞を声優に任せているらしい.

7 割ほど進んだところで,読者への挑戦ならぬ「聴取者への挑戦」がある.もちろん脚本は当たらないように書いてある.

解説には,最初の「<生き残りクラブ>の冒険」のトリックは日本人には分かるないとあるが,今の若いアメリカ人にも分からないだろう.古くさい部分は逆に言えば懐かしいし,ミステリとしては全編楽しく読めた.ちなみに,タイトルはすべて「...の冒険」にこじつけられている.
巻末の訳者によるこの解説は,マニアには嬉しいものだろう.

聴取者への挑戦〈1〉も読もうか.

子供の頃.銭形平次のラジオを毎週欠かさず聴いた.一所懸命聴いていないと途中でわからなくなったことが,懐かしい.




宣伝ですが,拙著・電子書籍「ドレミの科学」が,DL-MARKET, http://www.dlmarket.jp/product_info.php/cPath/799_800/page/1/products_id/145552
よりお求めただけます.ワンコイン 500 円です.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おうちの中の小さいおうち

2011-08-18 06:09:41 | エトセト等

右の切妻はいかにも家らしく,いっぽう左は屋上付き近代建築.これらは実はふたりの子どもの遊び あるいは勉強スペース.
天窓もある!


もっと引くと見えてくる 手前左の箱の中は台所だが,はしごを上ったその屋上はお父さんのパソコンスペースになるはず.

建築を見るのは絵を見たり音楽を聴いたりするのと同様,おもしろい.
絶対 家を建てるはずがないわれわれだが,新築のたびに案内状を下さる建築工房があって,「おうちの中の小さいおうち(入野の家1」はそこの作品のひとつ.「おうちのなかのおうち」は施主さんのご要望だったとのこと.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セシウムを核変換 続き

2011-08-16 08:27:36 | 科学
パラジウムと重水素による核変換技術は学会で市民権を得ているとは言い難い.

セシウム (Cs) 137 は中性子断面積が小さいらしい.とすれば,まず物理屋が考えるCs137 の核変換は光核反応だろう.
光が化学反応を起こすように,高エネルギーの光すなわちガンマ線を使って核反応を起こし,放射能を持つ不安定核を安定核に変えてしまう作戦.



図の出典は
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/backend/siryo/back25/siryo73.htm

原子力委員会の古いホームページである.

電子加速器を用いてガンマ線を発生させる.図の「コンバータ」の部分には逆コンプトン散乱が使えそうだ.そして,半減期30年の Cs137 を半減期12.6日の Cs136 に変えて放っておけば,バリウム Ba になる.

しかし,ガンマ線の最適エネルギーや,反応確率のデータはまだそろっていないのではないかと思う.たぶんガンマ線のエネルギーは 10-20 MeV で,対電子生成 (ガンマ線が電子と陽電子の対をつくる反応) のほうがずっと起こりやすそう.



おとといのコメントにも書いたことだが,
原爆とか原子炉とか益体のないものをを作り出して放射性核種をばらまき,つぎにはその核種を安定核に変換すると言う...かくて,科学者のメシの種は尽きない というわけだが,ある種の悪循環とも思える.
まぁ 自分の人生を振り返ると,失敗してそのために仕事を殖やす,の連続だったようにも思うが...



宣伝ですが,拙著・電子書籍「ドレミの科学」が,DL-MARKET, http://www.dlmarket.jp/product_info.php/cPath/799_800/page/1/products_id/145552
よりお求めただけます.ワンコイン 500 円です.
コメント (7)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セシウムを核変換

2011-08-14 08:31:49 | 科学
セシウム137 (Cs137) が問題になっている.
除染といっても,別な場所に移すだけでは問題を転嫁するだけだ.別な核種に変える - 核変換 - のが本質的な解決で,その常識的な方法は加速器を用いてガンマ線を発生し,光核反応をおこすことだろう.

でも,こんな実験結果もある.


図のPd(パラジウム) CaO Pdの三層膜の,上側の Pd には Cs133 を付着させる.重水素ガスを上から下へと流すことを数日続けると Cs133 が Pr(プラセオジム)141 に変換するというのだ.グラフでご覧のように,Cs が減少するとともに,影もかたちもなかったPrが出現し,増加する.
ストロンチウム88 からモリブデン96 への変換も報告されている.
"Elemental Analysis of Pd Complexes: Effects of D2 Gas Permeation"
Yasuhiro Iwamura, Mitsuru Sakano and Takehiko Itoh
Jpn. J. Appl. Phys. 41 (2002) pp. 4642-4650

論文のタイトルには「核変換」の文字はない.Japanese Jpurnal of Applied Physics は応用物理学会の英文誌だが,この「錬金術」を極力センセーショナルに扱うまいとする編集委員会の意向が反映しているらしい.この実験は「常温核融合」に刺激されておこなわれたものと思うが,常温核融合の論文がこうしたれっきとした論文誌に掲載されることは滅多にないのだ.

論文より,著者が所属する三菱重工先進技術研究センターのホームページの記述
http://www.mhi.co.jp/atrc/project/pdtamakuso/index.html
のほうがずっと要領を得ている.
阪大,静岡大学,イタリアINFN (核物理研) で再現実験に成功したとのことである.

ただし,現在問題となっているのはCs137だが,この実験で扱われたのはCs133であった.メーカーの研究所のことだし,当然Cs137を用いた実験にも着手しているとは思うが...

この論文にはなぜ核変換が起きたか ? に関する考察はほとんどない.私個人としては,なぜ核のポテンシャル障壁を乗り越えて核変換が可能なのか,納得できない.
Mikio Fukuhara
New Approach to Cold Nuclear Transmutation Theory
Jpn. J. Appl. Phys. 46 (2007) pp. 3035-3038
では,核変換で質量数が 8 増えることに注目した理論が発表されている.

Cs137 -> Nd145 ???


広く薄くばらまかれた現状の Cs137 に対処するには,この方法が有効とは思えないが,あれこれやっているうちに何か美味しいことが生まれるかもしれない.

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

皆川博子「開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―」

2011-08-12 08:42:24 | 読書
早川書房 (2011/7)

ミステリ・マガジン連載の単行本化がいち早く図書館に入ったので,いち早く借出した.

「BOOK」データベースより
*****18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室から、あるはずのない屍体が発見された。四肢を切断された少年と顔を潰された男性。増える屍体に戸惑うダニエルと弟子たちに、治安判事は捜査協力を要請する。だが背後には、詩人志望の少年の辿った稀覯本をめぐる恐るべき運命が…解剖学が先端科学であると同時に偏見にも晒された時代。そんな時代の落とし子たちがときに可笑しくも哀しい不可能犯罪に挑む。*****

というわけで,「開かせて」は「解剖させて」の意味.

舞台は18世紀ロンドンだが,登場する外科医とその弟子たちの心情は至ってウエット.明治の日本を舞台にしてもしっくり来そうだ.

皆川小説の例に漏れず大部で,おどろおどろしい小説だろうという予感もあり,読む前に身構えてしまったが,CM のように「ときに可笑しくときに哀しい」場面もあって,440 ページだがすぐに読めてしまった.でも,皆川さんの「可笑しい」場面はどこか不器用.

以下はネタバレかも?
犬が死体の胃袋を食べてしまったり,その犬の胃袋からまた犯罪の証拠を回収したりする部分が良い.この犬がおかしい.
ハッピーエンドに近い終わりも意外だった.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

reading

/Users/ogataatsushi/Desktop/d291abed711d558e554bf7af66ee57d7.jpg