Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

戦争とたたかう

2013-07-30 08:05:37 | 読書
水島 朝穂「戦争とたたかう――憲法学者・久田栄正のルソン戦体験」 岩波現代文庫 (2013/06).

内容(「BOOK」データベースより)*****
軍隊は人間性を否定し、人間改造を迫る装置だった…。過酷なフィリピンの戦場から奇跡的に生還し、戦後は日本国憲法の「平和的生存権」実現のために生きた久田栄正 (1915-1989) に、戦後世代の憲法研究者が徹底した資料探究に基づく質問を繰り返しながら記憶を掘り起こしていく。ダイナミックな手法が光る。証言と対話により時代背景を丁寧に織り交ぜ、戦場の実像が世代を超えて伝わることを示した感動の人間記録である。*****

「戦場」といっても戦ったわけではなく,飢えて逃げ回っただけ.フィリピンからは 8 割が生きて帰れなかった.
銃撃されながら,しかもマラリアとアメーバ赤痢で何ヶ月もジャングルを彷徨し,蛇や蛙を食べても蛭に血を吸い取られ...という事実を,イワナミの活字で読むと迫力が違う.

原爆を落とした米軍は非人道的というが,日本軍 (日本という国家は) は日本兵 (そして日本人全体) に対して,別な意味ではもっと非人道的だった.フィリピンでの山下奉文は自分では何も決められないサラリーマン大将で,そのくせ安全な壕の中で三食とウィスキーを確保し終戦時もまるまると太っていたと書かれている.
もう半年早く戦争を終わらせていたら,沖縄戦も原爆もなくて済み,あちこち合計すれば百万人台の生命を失わずに済んだ.戦争裁判は国際間の問題しか扱わないが,日本という国家の日本国民に対する責任はどうなのか.著者の久田先生は平和憲法に感激し.その後は憲法学者としてこうした問題をずっと真摯に考えられたようだ.#

現代の日本人は「理不尽な命令には従わなければ良いじゃないか」と言いそうだ.しかし周囲が命令に従うなかで,ひとりだけ叛旗を翻すことができるのだろうか.軍隊にはいじめが横行するが,それは昨今の学校でのいじめとはかなり共通した部分があることが,この本でも指摘されている.会社の衰退などにも敗戦と似た経緯が見られる.外国人から見ると日本人は権威に対して too obedient であるばかりか,権威のあるところに群れるように見えるらしい..

# 小学校しか出ていない奥村謙三は,戦争責任を天皇に帰し直裁に行動した.ニューギニアから帰還したが (千数百名のうち生き残ったのはわずか30数名だったと言う),1969 年の一般参賀で天皇をパチンコで狙うという事件を起こしたのだ.軍隊で刷り込まれた「忠君愛国」の裏返しである.奥崎-謙三「ヤマザキ、天皇を撃て-―“皇居パチンコ事件”陳述書-」三一書房(1972))を読んだときは,不気味な感動を覚えた.
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ライブ・ペインティング

2013-07-28 08:18:42 | 新音律
二週間も遡るが,7/15 日のNHK のクラシック倶楽部 - ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2013 - にマリウシュ・ヴィルチンスキ Mariusz Wilczyński によるライブ・ドローイング (線描なので,ペインティングでなくドローイング) が登場していた.
厳密には,あらかじめ製作したアニメーションと,真のライブ・ドローイングとの組み合わせ.後者の場合,画家が片手に絵筆,片手にテレビカメラを持ち,その画面が会場に投影された.
クラシック倶楽部だから現代音楽やジャズではなく,サンサーンスの組曲「動物の謝肉祭」.この選曲も当たりであった.ちなみに,この組曲中で好きなのはコントラバスによる「象」.



こちらは YouTube から取った,同じヴィルチンスキによる別なパフォーマンスの動画.動物の謝肉祭は音楽からドローイングへの一方通行だったが,こちらは逆に,ドローイングを視ながら演奏するというルートも開かれているようだ.

実はわれわれも H 大 J 研サマーコンサートでライブ・ペインティングを試みた.N 村の前衛風新曲のタイトルは「邪魔したよ,うつけ !」で,言われて初めて分かったのだが,ヤマシタヨウスケをもじったもの.演奏中は角度が悪く,ペインティングを視ることはできなかった...視る余裕もなかったと思うけれど.
壁と床にペンキが飛び散り,(小生はさぼったが,他の) バンドメンバーは後始末でオツカレだった. 

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空耳の森

2013-07-26 08:47:01 | 読書
七河 迦南 著 東京創元社 (2012/10).

ミステリ・フロンティアの1冊.この回文めいたペンネーム NANAKAWAKANAN は,男性? 女性?
... 気になって図書館で借用した.

文庫本と違って解説がない.男性? 女性? の疑問は未解決.

短編集かと思って読み進んだら,登場人物が同じものが2篇連続したり,忘れた頃に同じ人物が出てきたりして,最後にはひとつに繋がるという趣向.ちゃんと「解釈」し,各篇を年代順に並べたホームページもあった.

全編秀逸とはいかないし,最後のつじつま合わせも多少強引に思うが,楽しめた.
マイ・ベストは途中まで SF かと思わせた,離島に置き去りにされた幼い姉弟という設定の「アイランド」.
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音楽史を変えた五つの発明

2013-07-24 08:44:16 | 読書
ハワード グッドール, 松村 哲哉 訳,白水社 (2012/02) .

市立図書館で借用.原題のBig Bangs そのままの方が良いんじゃないかな.

TV 番組の書籍化とのことだが,エピソードで繋いだ音楽史の本という感じ.著者は作曲家で,随所にそれらしい見方が.

五つの発明とは,「記譜法」「オペラ」「平均律」「ピアノ」「録音技術」.
オペラについては,モンテベルディの名前を聞いたことがある程度だったので,新鮮だった.でもこの五つの中ではオペラが最も西洋音楽ローカルだ.
平均律の章には「偶然の産物」というタイトルがついているが,ほんとうに偶然の産物かどうかは疑問だ.平均律の普及におけるアコーディオンの役割は知らなかった.
録音に関しては,カラヤンを省いてでもストコフスキーを記述すべきではないかな.
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ストレート・ノー・チェイサー

2013-07-22 08:03:14 | ジャズ



Thelonius Monk Quintet featuring Sahib Shihab on alto sax, Milt Jackson on vibes, Al McKibbon on bass, and Art Blakey on drums.

大学ジャズ研のサマーコンサート.6 組の新入生バンドが登場したらしい.聴いた範囲でよく演奏されていたのが,Fly me to the moon と,この Straight, no chaser だった.
この動画のが最初の録音 (1951) らしい.モンクもミルト・ジャクソンもこの当時から死ぬまで同じスタイルを変えなかった.

この曲,同じテーマが次第に増殖していく.結局オクターブ 12 音のうち 11 音を使ってしまう.イオニアンのブルースとみると,使っていないのは IV#,3 全音だけである.フリジアンっぽくもある.こうした音の選び方に,ブルースのコード進行があってしまうのも不思議.かと思えば C jam blues みたいに,ふたつの音しか使わない曲にも合うあたりが,ブルースの懐の深さだろうか.

じつはこのサマコンで,12 音技法を意識した新曲を N 村バンドで演奏したのだが,不完全燃焼のまま終わってしまった.またリベンジしたい.

それはそれとして,Straight, no chaser のアドリブに 12 音技法で音列を変化させる方法を適当に取り入れたらどうだろう.
Wikipedia から抜粋すると,この技法には
- 移高 (実質的には移調とおなじ).
- 逆行 音列の始まりと終わりを逆にし、反対側から使用する.
- 反行 音列を上下を鏡に映したようにして使用する.
- 逆反行 反行の逆行.
がある.

iReal でブルースコードをバックに実験してみると,なかなか面白い.逆行は困難.逆反行は譜面を作らないと不可能.いずれにせよ これらを忠実に実行してもジャズにはならない,と言うのが,適当にやる言い訳になる.
リハーモナイズ ? という問題まで考えるときりがない.


chaser はウィスキーのストレートの後に飲む水のことだそうだが,水の代わりにビールを chaser と称して飲むアメリカ人がいた.


宣伝です : 私たちの新著
小方・高田・中川・山本 著
「視て聴くドレミ - フーリエ音楽学への招待」大阪大学出版会(2013/03).

も参考にして下さい.なお,この本を立ち読みのノリで視聴できるムービーを YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=I43aZi6otBY
にアップしました.
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コンボバンドに指揮者 ?

2013-07-20 09:09:11 | 新音律
エル・システマというのは,ベネズエラの音楽教育体系 らしい.
地元でこのエル・システマを紹介する ? コンサートがあった.第1部はベネズエラの若手音楽家による金管アンサンブル (曲によってはバイオリンとベースが参加).第2部にはこれに広大のオケ,さらに地元の合唱団とこどもたちのオケも参加した.とても楽しい催しだったが,演説が長かったのが難.

この第1部の開幕からの数曲では,6 人の奏者に対して指揮者 コンダクター が棒を振った.
指揮者は要らないんじゃないの... と思って聴いているうちに,ジャズのコンボに指揮者がいたらどうだろうと考えるに至った.

以下はエル・システマとは何の関係もありせん.

コンボジャズを聴いてからクラシックを聴くと,クラシックでは

- 音量のダイナミックレンジが大きい
- テンポが揺れる

という特徴があると気づく.ジャズでは奏者は旋律に関しては自由だが,音量もテンポもほとんど変わらない.こうしたパラメータは犠牲にされている.
たしかに,Modern Jazz Quartet などは音量・テンポをコントロールして演奏していたが,綿密な打ち合わせと練習の賜物だろう.
指揮者がいれば,かなり変わったジャズができるのではないか ? 大音量になったり小温良になったりする - だんだん早くなる・遅くなる - とつぜん曲が立ち止まる etc..

クラシックのオケの指揮者の権力は絶大だが,即興を重んじれば,ジャズの指揮者にあってはそれ以上.プレイヤーが指揮者に素直に従うかどうかは疑問.かえってプレイヤーと指揮者の相克が見もの.聴きものになるかもしれない.
バンドメンバーと指揮志望者が出てくれば,実験してみたいところ.

この動画は上記エル・システマのコンサートの第1部の演奏だが,この曲では指揮者もトランペットに持ち替えて演奏に参加してしまった.この文の趣旨には不適当だが記念にアップすることにした.


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「視て聴くドレミ - フーリエ音楽学への招待」大阪大学出版会(2013/03).

も参考にして下さい.なお,この本を立ち読みのノリで視聴できるムービーを YouTube
http://www.youtube.com/watch?v=I43aZi6otBY
にアップしました.
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「カーネギー・ホール」という映画

2013-07-18 08:39:33 | エトセト等


たぶん小学生の時に,クラシック好きだった父親に連れられて視た映画だが,かろうじて覚えている場面は,ルービンシュタインのこのパフォーマンスである.この YouTube では出だしから 48 秒あたり以降.

http://en.wikipedia.org/wiki/Carnegie_Hall_(film) によればこの映画には,1947 年当時のクラシック界のスターが文字通りキラ星のごとく並んでいたのだ.ハイフェッツなどはあまちゃんのアキちゃんよりはるかに長い台詞をしゃべっていた(http://www.youtube.com/watch?v=kFaq9kTlcaY),バイオリンの神様の肉声が聴けるのはこの映画くらいのものだろう.
半分映画俳優みたいなストコフスキーはもちろん (http://www.youtube.com/watch?v=mohRnauSkdY),ブルーノ・ワルター,フリッツ・ライナー等も顔を出したとのこと.歌手ではリリー・ポンス,ジャン・ピアス等.

ヤマハ銀座店で見かけたのだが,DVD は百円台と言う先入観の一桁上の価格だった.そのうちに YouTube に全編アップされるのを期待することにした.
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宇野浩二「芥川龍之介」

2013-07-16 07:54:50 | 読書


文芸春秋新社.昭和 28 年の初版を 450 円で購入.
当ブログに登場するのが,文庫本でなければ古書ばかりとお思いでしょうが,年金生活とはこんなものである.物価にスライドして年金が上がるとは思えないし,上がるとしてもそれ迄寿命が保証されるわけではない.安倍インフレ政策が恨めしい.

ところでこの本は,評伝というより,著者の芥川に関する思い出をだらだらと書き連ねたもの.著者の「あの.やさしかった,かなしかった,ことに友情の厚かった」芥川に対する思い入れには共鳴せざるを得ないし,そうすればすらすらと読める.ただし古書ゆえに紙が黄変していて (はじめから黄色かったのかもしれない) 活字とのコントラストが弱い.

冒頭近く,ふたりで遊女を買う場面がおもしろい.芥川は張型に熱い湯を入れ過ぎて失敗し,宇野は強壮剤を定量の3倍飲んで失敗する.大正時代は時代劇の舞台なのだ.
しかしその後 内容は次第に陰惨になって行く.

著者は芥川はネタがなければ書けないタイプと断じている.彼の小説は本歌取りであり,まず今昔物語等の古典を「本歌」とし,それに行き詰まると自分の生活そのものを本歌としたし見る.
芥川の気取った,用意周到な文章には反発しているが,晩年の病苦と生活苦のなかで力を振り絞って書いた作品群には心を打たれると言う.芥川の小説より,芥川と言う人間の方がずっとおもしろいのだそうだ.

芥川が自殺したとき,宇野は精神に異常を来たして入院していた.
宇野の精神病も芥川の自殺の引き金になったかも知れないと,(この本ではない) どこかで読んだような気がする.
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安野光雅 文学の絵本

2013-07-14 08:09:33 | お絵かき
筑摩書房 (1993/10)

地下街の古書市で 500 円.
筑摩書房刊 筑摩日本文学全集 全 60 巻のカバー絵集.このように 見開きの右側には作家の文章の一節があるが,左側の絵とは関係がないことも多い.巻末に数行ずつの安野画伯の絵に関する文章.

あとがきによれば,この書名は安野画伯の本意ではないらしい.



60 点もあると,流石に出来・不出来があるなあ.描くのに時間をかける・かけないと,出来・不出来は関係ないようだな ... というのはシロトの不遜な感想である.おもしろいことにこの全集に白井喬二が入っているのだが,どんな絵にするか苦労したらしい.結果は ?

石川啄木と寺田寅彦のふたりが肖像画ならぬ似顔絵で,とくに寺田寅彦が良いです.

http://www.chikumashobo.co.jp/special/nihonbungaku/ から入る「ちくま日本文学美術館」というページでは,このうち半分くらいが鑑賞出来る.
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iPhone 買い替え

2013-07-12 08:22:34 | エトセト等
iPhone 5S だか 6 だかが,出る出ないというタイミングだが,4 を 2 年以上使って電池が心細くなってきた.新モデルが出てもどうせ待たされるのだろう.おまけに SoftBank から,今なら7-8,000 円で古いのを下取りするというメールも来たので, 4 を5 に替えた.

薄くなり,画面が大きくなり,siri がおもしろい.

ところで SoftBank のお兄ちゃんはご親切にも, iPhone 4 処理はここより街の買い取り屋さんのご利用がお得ですよという.

帰ってウェブを漁ったら,わが町では SoftBank を超える買い取り額は期待できないことが分かった.16GB Black だと,Y 店で最高 5,500 円というところ.最高というのは,新品同様に美しく,付属品も全部そろっている状態の価格.
買い取り額の高い店は広島市の中心,紙屋町あたりに集中していて,J 店が最高 13,000 円,D 店が最高8,000 円,S 店が最高 8,000 円とウェブにうたっている.

通信買い取りも可だが,まだるこしいし,送料は売り主負担とのこと.そこで交通費をかけて J 店を訪問.電池が消耗している,筐体の角が少し摩耗している,説明書はあるがアップルのアップリケがない (家に置いてきた!),イヤフォンがない (壊れたのだ) などとケチをつけられ,買い取り金額は結局 9,400 円.これでも SoftBank を含め,他のどの店より高いので,手を打った.


J 子はシンプルスマホとやらに買い替えた.前の携帯の方が良かったとぶつくさ言っているが,想定の範囲.
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