「日本の地震学、改革の時」と題する東京大学・ロバート・ゲラー教授の発言がネットで話題になった.
2011年4月のNatureの記事まで遡ると
これが本文で,翻訳もご本人による.
ここにはリアリティチェックとして,5年前の予測がいかに当たらなかったかが地図で示されていた.
古い予測地図では日本政府に気の毒なので,ここには 2014 年 12 月版を
地震本部のホームページから転載した.
この最新地図によれば,ほとんど安全な地域だったはず.
先の Nature 記事の最後の部分だけ引用すると
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今こそ、地震予知が不可能であることを率直に国民に伝え、東海地震予知体制を廃止して、大震法を撤廃する時である。日本全土が地震の危険にさらされているのであって、現在の地震学では、特定の地域のリスクレベルを的確に評価することはできない。その代わりに、研究者は国民と政府に「想定外に備える」ことを勧告しなければならない。そして、研究者は知っていることと知らないことの両方を正確に客観的に知らせなければならない。地震学の将来の基礎研究は、物理学に根ざし、厳密に精査され、顔の見えない官僚によってではなく、日本の一流の科学者によって導かれなければならない。
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補足すると,大震法は「大規模地震対策特別措置法」のこと.この法律により,気象庁は常時観測を運用して「東海地震」が発生する前兆を検出しようとしている.しかしゲラー氏によれば「前兆」に科学的根拠はない.
ほとんどの国民は,地震予測地図の存在なんか意識していない.九州に観測体制はなかったし,作ろうともしなかったのだと思うが,たとえ体制があって,そこからの警報なしに地震が来たとしても諦めてしまうだろう.おめでたいという見方もできるが,政府なんか信用していないという見方もできる.
冒頭の地図はご破算となると,原発があろうとなかろうと,公平に地震は起こる.
地震のないところを選んで原発を作ってきたと思い込むのが危険!!
ゲラー先生はおもしろい.
4/23 追記
ただし上記 Nature の記事で,ゲラー先生は次のようにも書いておられる.
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もし、世界の地震活動度と東北地方の歴史記録が、地震の危険性を見積もるときに考慮されていれば、もちろん時間・震源・マグニチュードを特定するのは無理としても、3月11日の東北地震は一般には容易に「想定」できたはずである。とりわけ、1896年に起きた明治三陸津波はよく認知されており、かつ記録もなされているので、こうした地震への対策は、福島原子力発電所の設計段階で検討することは可能であったし、当然そうすべきであった。
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