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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

音楽の本の翻訳

2024-07-19 10:09:40 | 読書
若い頃は原著を輪読した.記憶に残っているのは V.D. Shafranov "Review of Plasma Physics" の英訳 (オリジナルはロシア語)・海賊版である.もっとも文章そのものはそっちのけで,式の導出にばかりエネルギーを注いだ.

定年してから,何か音楽書の翻訳でもと思って,まず手に取ったのが H. Helmholtz "On the Sensations of Tone".持っていたのは英訳本だったが,ドイツ語源本からの翻訳を企てている方がおられると聞いてやめた.
しかし英訳した A.J. Ellis による付録をぼくは高評価している.この部分が翻訳されていないのが残念だ.

それでは,と,手がけたのが Harry Partch "Genesis of a Music" だが,先日書いたようなわけで挫折した.

山本史郎 「翻訳の授業 東京大学最終講義」 朝日新書 (2020/6) の山本先生によれば,翻訳議論の対象となりうるのは「文学翻訳」である.理工学の解説・論文などの翻訳は「実用翻訳」であって,今後「実用翻訳」は AI に任せればよい.
Chat GPT で拙著「音律と音階の科学」の英訳を試みたときは,山本先生のおっしゃるとおりであると痛感した.Helmholtz の本も AI 実用翻訳でいけたのではないか?

Parch の本で ぼく 16 トンの興味は純正律のくだりであって,そこまでいけば翻訳はまぁサクサクと進んだと記憶している.この部分は実用翻訳の対象だったのだろう.第 1-2 章の翻訳には文学翻訳の素養が必要で,ぼくには難しかったということか.

Parch 翻訳が難航したときに,アメリカの大学で学位を取った友人に相談したことがある.やはり原文には辟易したらしく,彼の助言は「とにかくざっと日本語に直して,あとは原文なんか顧みずに,とにかく訳文の意味が通るように直してしまえ」であった.真偽のほどはあやしいが,与謝野晶子がとった源氏物語の現代語訳のやり方なんだそうだ.

この「ざっと日本語に直す」部分は ChatGPT にやらせ,後の手直しを人間がやれば,(一見ではなく) 一読それらしい翻訳が短時間でできるだろう.すでにこういう翻訳が行われているのかもしれない.

でも余生が短いのにそんなことで時間を潰すのは気が進まない.

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