Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

楽譜でわかる20世紀音楽

2024-07-11 20:37:34 | 読書
久保田慶一  (編集代表), 白石美雪, 井上郷子, 森垣桂一  (編者)「楽譜でわかる 20 世紀音楽」アルテスパブリッシング (2020/9).

全 14 章だが,イントロ的な第1章を除き,各章はそれぞれ以下のように作曲家 (あるいはその集団) に割り付けられている :
ドビュッシー,ストラヴィンスキー,バルトーク,ロシア・アヴァンギャルド,ガーシュウィン,シェーンベルク,パーチ,カウエルとケージ,ヴェーベルン,ヴァレーズ,ベルク,ストラヴィンスキー,ヒンデミット.
彼らの音楽を楽譜から読み解こう,という趣向.

タイトルには 20 世紀とあるが,初版発行は 21 世紀に入って 20 年も経ってからだ.でも,このラインアップはすでにクラシックな人たちだ.
ただしもとになったのは,2013 年 国立音大附属音楽研究所における 14 回のセミナー「楽譜を読むチカラ パート 2 - ドビュッシーからウェーベルンまで」である.

第6章に「ジャズのイディオムはどのように楽譜化されたか」.ぼくはジャズの楽譜に関連してリードシート,あるいはコードの成り立ちについて知りたいと思った.しかしリードシートには正当な楽譜としての市民権がないのだろうか ?

本書にあるのは小曽根真のガーシュウィンのシンフォニック・ジャズ解釈であり,それはもとのセミナーの趣旨,ドビュッシーからウェーベルンに忠実ではある.
多くの章では学術的 ? に作曲家が論じられている.しかしここで小曽根真はジャズ・プレイヤー個人の立場でラプソディ・イン・ブルーを論じて我が道を行っている.

セミナーのバルトークの回ではピアノ伴奏でラプソディ第1番が演奏された.他の回でもおそらくパワポで音楽が流されたことと思う.紙の本ではない,視て聴くセミナー記録がもっと普及して然るべきと思うが,なかなかそうはいかないようだ.

各章の終わりにはセミナー出席者と講師との質疑が収録されている.これが本文よりおもしろかったり...

「第1章 20 世紀音楽の楽譜を読む」によれば,J・ケージの「4分 33 秒」には6種類もの楽譜があるという.

編者のひとり・著者のひとりでもある白石氏は美大でも教えている.美大の学生は図形楽譜を楽しむが,音大の学生は図形楽譜を渡されても何も出来なかったという.
美大の学生は楽譜の読み方くらいは知っているが,はじめて楽譜を見たとき音楽が浮かぶわけではない.それは 16 トンも同じことだが,そうした条件でも本書はじゅうぶん楽しめた.

図書館で借用した.でも,蔵書にほしくなっている.
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